【音楽は心の栄養素】研究が実証!音楽が子どもの発達に与える好影響

天才を伸ばす育児

音楽って、不思議な存在です。

音楽は、生存に必要な「衣食住」には含まれないもの。

けれども「文字のない文化はあっても音楽のない文化はない」としばしば表現されるように、音楽と人間は切っても切れない関係にあります。

4〜6歳児の約12%が何らかの「楽器」のお稽古に通っていることから見ても、「音楽が子どもの発達に与える好ましい影響」を、子育て中の親御さんが意識していらっしゃる様子が伺えます。

ところがウェブ検索をしてみたところ、「音楽が子どもの発達にどのような好影響を与えるのか」について、具体的な検証結果を報告している情報は、意外にも少ないことに気がつきました。

そこで今回の記事では、

音楽が子どもの成長に与える好影響の具体例 〜ドイツの6年間に及ぶ長期研究検証の結果

について主要ポイントをまとめてご紹介します。

関連サイト:ベネッセ教育総合研究所 <第5回 幼児の生活アンケート>

【音楽が子どもの成長に与える好影響】ドイツの長期研究の概要

【音楽が子どもの成長に与える好影響】ドイツの長期研究の概要
  • 調査期間:1992〜1998年の6年間
  • 参加者:ドイツ・ベルリンの小学生(総計70人)
  • 調査方法:音楽の授業を集中プログラムで受けた子どもと、通常の音楽授業を受けた子どもたちのグループを比較
  • 集中プログラムのグループ=小学校で週1回の音楽の授業+楽器の習い事+アンサンブル演奏
  • 通常グループ=小学校で週1回の音楽の授業

【音楽が子どもの成長に与える好影響】ドイツの長期研究の最重要結果

【音楽が子どもの成長に与える好影響】ドイツの長期研究の最重要結果。アンサンブル演奏をする3人の子ども

6年間の長期研究で、音楽の集中プログラムを受けた小学生のグループは、通常の音楽の授業を受けた小学生のグループと比較すると・・・

  • 社会性と、相手の立場を思いやる能力に長けていた
  • 知能が向上
  • 音楽以外の科目(算数・ドイツ語・英語)でも、良い成績

という結果が報告されています。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】優れた社会性

【音楽が子どもの成長に与える好影響】優れた社会性。手を組む子どもたち

生徒たちの人間関係(「この生徒が好きだ」に対する答え)をソシオグラムで図評価したところ、音楽集中プログラムの生徒たちのクラスでは、「お互いに好感を持っている」生徒同士の割合が、クラスの90%以上を占めていたそうです。

対して通常授業のグループでは、「この生徒が好きだ」に対する否定的な答えが、全調査期間を通して音楽集中プログラムのグループより4倍多い状態。

上記の差について研究報告では、アンサンブル演奏により自分と他人が歩み寄り、互いの責任を果たす経験の積み重ねが社会性向上につながる要因である、と説明しています。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】知能が向上

【音楽が子どもの成長に与える好影響】知能が向上
引用元:VDHM magazin <Musik und ihre Wirkung> p.2の図をもとにサイト運営者が作成 

研究を開始した当初は、音楽集中プログラムと通常グループの知能テストの結果には、差が見られませんでした。

ところが、音楽集中プログラムをスタートしてから4年目に実施された知能テストでは、両グループのIQに顕著な差が現れたことが、上記のグラフィックからわかります(音楽集中プログラムグループのIQ平均値=111、通常授業グループのIQ平均値=105。統計学上有効な差)。

特に興味深いのは、家庭環境に恵まれていない、または認知能力を伸ばすサポートが家庭で積極的に行われていない子どもたちの場合、音楽集中プログラムに参加したことにより、IQテストの値がめざましく向上しているという結果。

長期研究の責任者、ハンス・ギュンター・バスティアン教授は、この結果を受け、どの家庭の子どもにも音楽と触れ合う機会を与えることの重要性を、社会政治の面から考慮すべきだと訴えています。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】音楽以外の科目でも優秀

【音楽が子どもの成長に与える好影響】音楽以外の科目でも優秀

音楽に携わる時間(放課後のレッスン/自宅での練習)が増える分、他の科目に使える時間が減るので、成績全体が落ちるのではないか? という点にも、研究は言及しています。

結論から言えば、音楽に取り組む時間が増えても、成績は落ちるどころかむしろ良くなっている、という結果が出ています。

音楽集中プログラムの生徒たちのグループは、全調査期間6年のうち、通常の授業を受けた生徒たちのグループよりも、算数・ドイツ語・英語でより優れた成績を収めていたそうです。

子どもの能力がIQ値だけに偏らず、バランスよく伸びるようにサポートすることは、天才児の子育てで大切な要素。興味のある方は、コチラ↓の記事もご覧ください。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】知能/成績が良くなる理由

【音楽が子どもの成長に与える好影響】知能/成績が良くなる理由

ではなぜ音楽との積極的な関わりが、知能と学業全般の向上につながるのでしょうか?

その理由は、

楽器を弾くことは、人間にとって最も複雑な作業のひとつであるから

だと、研究結果はまとめています。

楽器を演奏するためには、

  • 音符から得る抽象的な情報を理解する
  • 総体的な運動技能と繊細な動作を制御する
  • リズムやテンポ、音の強弱を調整しながらアウトプットする
  • 楽器の奏でる音に耳を傾けながら演奏を調整する

など一連の作業を同時に、かつ継続して行う必要があります。

よって、音楽演奏のプロセスにおいて、子どもは必然的に高いレベルでさまざまな知力を駆使することになり、その結果が学業成績と知能の向上をもたらすのであろう、という結論を研究責任者のバスティアン教授は提唱しています。

コチラ↓はわが家で実施した、子どもが音楽に親しむための環境作りの工夫に関する記事です。音楽教育の効果はあったと、親の立場で感じています。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】研究結果を現実に反映させる困難

【音楽が子どもの成長に与える好影響】研究結果を現実に反映させる困難

今回の記事で取り上げたドイツの長期研究では、小学校で通常行われる音楽の授業だけではなく、「楽器の習い事」を追加し、音楽に触れ合う時間を増やすことで、子どもの発達にめざましい効果があると判明している、というお話をしてきました。

でも、「音楽教育は子どもの発育に効果テキメン」という結果をいざ実際の教育現場に反映させるとなると、これがなかなか難しいのが現実。

子どもたちが平等に音楽/楽器と親しむ機会を得るためには、小学校の音楽プログラムを充実させるのが理想的です。

けれどもそのためには、音楽指導能力を備えた教諭陣が必要となるわけで、計画実現にはかなりの追加予算が必須となりますから、政策のサポートがなければ、実現は不可能でしょう。

【子どもと音楽の関係を育む環境】影響要因が偏っている問題

また、学校以外の場で子どもが音楽に触れ合う機会というのは、実は非常に偏った状態で、社会に存在しています。

【子どもと音楽の関係を育む環境】居住地の影響

【子どもと音楽の関係を育む環境】居住地の影響

子どもが音楽に出会えるきっかけがあるか。また、音楽に興味を示す子どもが、お稽古を受ける場があるのか。

これら2点は、子どもが生活する環境が都市部であるか、または地方であるかによって、かなり条件が異なります。

都市部に住んでいる場合には、コンサートなどの音楽イベントや音楽教室もふんだんにありますが、地方住まいだと音楽と出会い、関係を育むチャンスそのものが圧倒的に少ないですものね。

私事になりますが、生まれも育ちも東京の私。スイスに住むようになってから、「東京は音楽がらみのイベントが贅沢に溢れている街」だと、あらためて実感しました。

また、娘の同級生のケースでは、住まいが少し郊外なだけでも、音楽教室そのものがない、または子どもの習いたい楽器の先生が見つからないなど、苦心している話をよく耳にしました。

【子どもと音楽の関係を育む環境】家庭の影響

【子どもと音楽の関係を育む環境】家庭の影響

子どもが存分に音楽と触れ合う機会に恵まれるかどうかを左右する要因のトップは、音楽に対する親御さんの姿勢であることは、言うまでもありません。

親が・・・

  • 音楽に興味を持っているか
  • 音楽教育の大切さを理解しているか
  • 金銭面での援助が可能か(お稽古代/楽器の準備)

というポイントは、子どもが音楽に親しむうえで、最も影響力が強い条件です。

【音楽が子どもの成長に与える好影響】音楽教育平等化の必要性

【音楽が子どもの成長に与える好影響】音楽教育平等化の必要性

例えば私の住むスイスのベルンでは、州と市町村公認の音楽学校に子どもが通う場合、「幼稚園児〜満20歳まで(ただし学生の場合は、満25歳まで)」の生徒は、音楽学校の学費の一部を州と市町村が援助してくれる仕組みになっています。

学費の一部を地方自治体が援助する政策のねらいは、音楽教育の平等化です。

この援助政策のおかげで、親が負担する音楽学校の学費は、週1回40分の個人授業だと、年間約22万円(1650スイスフラン/2022年4月現在)。

ただし、両親の収入総額プラス資産の10%が年間約400万円(29900スイスフラン)以下の場合には、特別申請によって20〜50%の学費割引が認められています。

娘の母校は私立の一貫校だったせいか、生徒全員が何らかの楽器のお稽古に通っていました。私立校であっても、ママ友との会話では、「ウチは姉妹揃ってピアノのお稽古を選んだからホッとしたわ」という人や、「長女がチェロ、次女がピアノ、長男はドラムで、わが家はどーすりゃいいの」とグチる人(お気持ちが痛いほどわかる)がいたほど。

学校の指導方針が、音楽教育の重要性を訴えていたこともあり、なかには「子どもに仕方なくお稽古をさせているけど、本音は辞めさせたい」と保護者会でテーマにするご家庭もありました。

政策援助があるとはいえ、各家庭への負担は少なくありません。

学費への支援があるスイスですらこの状態ですから、音楽教育平等化への抜本的な政策が不足している日本では、千野哲太さん主宰のJAMCAが掲げるミッション、「音楽教育の平等化」「音楽活動の展開」「日本の魅力発信」をもとに、プロの音楽家の方たちが全国各地でコンサートを開催するという試みは、社会全体を動かす大きなうねり。

音楽に熱い想いを抱く演奏家たちの活動が、さらに大きな輪となり、日本の隅々まで音楽で満ち溢れる日がやってくることを祈っています♪

タイトルとURLをコピーしました