子どもが泣いたり怒ったりすると、親はあわてるもの。でも、ネガティブな感情とのお付き合いは、子どもにとって大切な成長の課題なのです。
子どものネガティブな感情に、親がキチンと向き合えないと、子どもの心が歪んでしまう原因になります。
そこで今回の記事では、
【子どものネガティブな感情】
- よくある「親のいけない対応」
- 親にネガティブな感情を受け止めてもらえない子どもに起こること
- 子どもの心をまっすぐ育てるオススメの対応策
についてお話しします。
【子どものネガティブな感情】よくある「親のいけない対応」

子どもは2歳ごろから、それ以前には主に態度で示していた自分のネガティブ気分を、「悲しい/怖い/怒り」など、ことばで表現するようになります。
人の心にネガティブな感情が生じるのは、何らかの問題があるため、と私たちは本能で知っています。ですから、子どもがネガティブな気持ちを口にすると、親の心もざわつきます。
そのため、子どもが泣いたり怒ったりしていると大人は
「ほら、泣かないよ〜」
「怖くないからね〜」
「怒ることないでしょ」
などと、ことばをかけがち。
ところが、「子どもの気持ちを落ち着かせたい」と思うあまり、親がしばしば口にするこれらのセリフが、実は子どもを追い詰めてしまうのです。
子どものポジティブ/ネガティブ感情が親の心に与える影響

人と感情は切っても切れない関係にあります。心の中に湧き上がるポジティブな気持ちだけではなく、ネガティブな気持ちもまた、私たちの一部。
けれども、親の立場からしてみると、
子どものポジティブな感情(嬉しい・楽しいなど)
→ 親として理想の状態。「育児が成功している」安心感を得られる。
子どものネガティブな感情(悲しい・怒りなど)
→ 親の力量が問われる。「育児が失敗したのか」不安になる。
と、子どもの感情表現は親の子育て姿勢への評価に直結する大問題。
ですから、「泣かない/怖くない/怒らない」と、親が発するなぐさめのことばは、実は子どもではなく親自身に向けたもの。
でも、子どもが必要としているのは、「悲しい/怖い/腹が立つ」というネガティブな感情も含めて、ありのままの自分を受け止めてくれる親の存在なのです。
【子どものネガティブな感情】親に否定されると子どもに起きること

親にありのままの自分を愛してもらえることは、幸せで満足度の高い人生を歩むためのパスポート。
逆に、親に自分のネガティブ感情をキチンと受け止めてもらえない子どもたちは、失望のあまり次第にネガティブ感情を押し殺すようになります。
- 親をガッカリさせるのが怖くて、親が求める「いい子」の役を演じる子ども
- 自分の感情と付き合えないので、他人との関わり方がわからず、引きこもりになる子ども
は、その一例にすぎません。
ネガティブ感情を上手く浄化させる方法を、子どもはひとりで身につけることはできません。
ネガティブな気持ちは、活火山のマグマのようなものなので、蓋をしていても、いつの日か大噴火につながります。精神障害の発症や、社会を揺るがす大事件を起こすことの根本は、「親にありのままの自分を認めてもらえなかったこと」に起因する、と申し上げても過言ではありません。
【子どものネガティブな感情】心をまっすぐ育てるオススメ対応策

【子どものネガティブな感情への対応策】
- ひとまず、親の感情を鎮める
- 子どものネガティブな感情表現を、そのまま受け止める
- 感情を「ことば」に変換するお手伝いをする
- ネガティブ感情発生時の背景を子どもが話せるように促す
- ネガティブ感情の浄化の仕方を子どもに伝える
- 根本にある問題について親子で話し合う
【子どものネガティブな感情】ひとまず、親の感情を鎮める

ネガティブな気持ちに飲み込まれて、子どもが興奮している場合、親が冷静に対応することがなにより大切。
- 3秒かけて、深く息を吸い込む
- 3秒間、吸い込んだ息をそのまま止める
- 3秒間かけて、ゆっくりと息を吐き出す
例えば、上記のような呼吸法はどのような場面でも使えるので、まず親が自分の気持ちを鎮めるために、とても役立ちます。
【子どものネガティブな感情】子どもの表現を、そのまま受け止める
例:泣いている子どもに向かって
【子どものネガティブな感情】感情を「ことば」に変換するお手伝い
【子どものネガティブな感情】感情発生の背景を子どもが話せるように
【子どものネガティブな感情】解決方法を子どもに伝える
ネガティブ感情の浄化の仕方

アメリカのメリーランド大学カレッジパーク校が作成・発行しているEMOTION AND STRESS REGULATION MAGIC TOOL BOXというPDFでは、学校の先生が生徒のネガティブ感情に対応する手段のアレコレを、まとめてあります。
PDFで紹介されている内容で、自宅でも応用として使えるオススメのアイデアは、「感情グループの分別」です。
理想的な感情の状況:
緑:穏やか/学ぶ準備万端/幸せ/大丈夫 →【GOサイン】
感情が緑色のゾーンにある場合、子どもはお話をキチンと聞いて、課題に取り組んだり、他の人のお手伝いをすることもできます。
ネガティブな感情の状況:
青:泣く/疲れた/病気/退屈 →【休憩が必要】
感情が青いゾーンにある場合は、休憩が必要なサイン。リラックスのために楽しいことを考えたり、静かな作業で気分転換を図る。または自分の感情について話すことが大切です。
黄:ふざける/不満/興奮気味/動揺 →【ゆっくりとペースダウン】
感情が黄色ゾーンにあるときには、ゆっくりと気持ちを落ち着けることが大切。アンチストレスボールを握る、歩きに行く、大人と話す、3回深呼吸するなどの手段を使って、気持ちが鎮まるようにします。
赤:怒る/叫ぶ/暴れる →【ストップ】
感情が赤いゾーンにあるときには、心に澱んだネガティブ感情のマグマが噴火している状態。ストレスボールを握る、3回深呼吸、10まで数えるなどの手段で、まず気持ちを落ち着けることに専念。休憩はもちろんのこと、これまで押さえつけていた問題について話し合う必要があります。
感情はもちろん数えきれないほどありますが、子ども自身で心の中のモヤモヤがどの状態にあたるのか、見当をつけられるようになると、感情の浄化も上手くできるようになります。
特に学校など集団生活の場で、子どもが自分のネガティブな感情に向かい合うときに、具体的な対応策が身についていることは、利点です。
ことばによる感情の表現がスムーズにできるようになる前の段階では、ご家庭で「感情の種類と対応策」を紐づけて、親子でトレーニングするのもいいでしょう。
【子どものネガティブな感情】根本にある問題について親子で話し合う

子どもは<親子で注意を共有している時間>に、自分の心の中に渦巻くネガティブ感情について話すことが多い、というのが私の経験。
すぐにネガティブ感情がテーマにならない場合でも、子どもの様子がいつもとちょっと違うな、と気になったら周囲から邪魔が入らない親子の時間をあえて持つように、心がけてあげましょう。
わが家のケースでは、一緒にお菓子作りをしているときや、サイクリング途中のおやつタイムを利用することが多かったです。
「心にあるわだかまり」は、あっという間には解決しない問題かもしれません。でも、自然な形でネガティブな感情について親子で話し合うきっかけを親が整えてあげれば、子どもが自力で問題を乗り越えるための能力が鍛えられるようになります。
苦しむ子どもを見ると、親はすぐに手を差し伸べたくなるもの。でも、子どもが本当に必要としているのは、自立して人生を歩むためのサポートだということを、どうぞお忘れなく。