【飛び級制度のある学校が近くにない】失望よりも親の支援が大事なワケ

飛び級児成長記

「ウチの子はギフテッドの兆候があるのに、日本もしくは現在の居住地では、飛び級制度のある学校に通わせることができない。どうすればいいの…」と、お悩みの親御さんが、私のこの記事を目に留めてくださったのではと推察します。

スイスの小・中学校で飛び級教育を受けた娘を持つ私の体験では、お住まいの条件から実現不可能な飛び級制度にこだわりすぎるよりも、「才能あふれるお子さんの日常生活を、学校以外の時間でいかに充実した内容にするか」という点に注目していただきたいというのが、私の本音。

「自分の娘は飛び級制度を利用したくせに…」と、不愉快に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし娘と、彼女の友人たちの成長過程を回想してみますと、「飛び級制度を利用したけれど、『ギフテッドの生徒が本当に効果的な支援を受けたとは、言えない』と」と、娘本人・彼女の友人たち、そして親の立場だった私も思っているのが実情です。

少なくとも、私の周囲にいた「スイスで飛び級制度を利用した子どもたちが、失望の念を持って自分たちの学生生活を振り返っている」原因は、学校制度の変更だけでは変えることができない、社会に潜むギフテッド児への間違った思い込みや複雑な感情による影響があったと思われます。

「出る杭」がたたえられるアメリカとは違い、スイスは日本と似ている「普通からはみ出ることを毛嫌いする」という文化の土壌が、私がスイスで体験・見聞したギフテッドの成長期に関連していることは、否めません。

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のギャップは避けられない

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のギャップは避けられない

娘が通っていた小学校は、ギフテッド児の教育を指導方針のひとつに掲げていたこともあり、「子どもの個別な才能をいかに伸ばすか」という情熱と経験を持ち合わせた教諭陣が、揃っていました。

学校にはギフテッド専用のクラスはなく、必要であれば飛び級し、本人が必要とする特別支援を普通の授業枠を超えた形で提供する指導が行われていました。

そのような好条件に恵まれた環境でさえ、ギフテッド児の学校教育における理想と現実のギャップは、小さいとは言えないものでした。

特に、「上にはみ出る子よりも、平均レベルに引き上げるためのサポートが必要な生徒たちへの指導」の方が、重要視される傾向があるという印象を、私は受けました。

  • 平均レベルに到達するためのサポートを必要とする生徒たちの数が、ギフテッド児より多い
  • ギフテッド児は「できる子」たちなので、特別なサポートが必要な生徒だという教師の意識が欠落しやすい

といった背景の影響ではないかと推察します。

ですから、たとえ飛び級制度やギフテッド用の支援授業があっても、「学校」という組織の中で、あなたのお子さんのためにオーダーメイドしたかのような、理想通りの完璧なサポートを得るのは難しい、というのが実情だと思います。

わが家のがっかり体験は、コチラ↓の記事に綴りましたので、よろしければご覧ください。

私の体験には、スイス特有の学校現場の在り方も、当然ながら反映されているはずです。

スイスの教育現場における「上と下にはみ出る生徒への対応」に興味のある方はコチラ↓のリンクへ。

関連サイト:SWI swissinfo.ch <スイスで新学年スタート カルチャーショックを受ける外国人の親たち>(更新日2018/08/20)(閲覧日2022/06/28)

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のギャップ〜体験者の意見

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のギャップ〜体験者の意見

教育関係者やギフテッド児の親が望む「ギフテッド児への理想的な対応」と、私が母親の立場で直面した現実とのギャップを、以下にまとめてみました。

【理想】ギフテッド児の並外れた知的能力と学習テンポに沿った課題を学校側が提供する

例)

  • 満足のいく学校生活を過ごせるように、特別な学習プランのスケジュールを作成
  • バリエーションに富んだ課題を的確に提供
  • 特別プロジェクトの実現を支援
  • ギフテッド児の存在が、同級生たちの学習意欲向上に結びつくようなクラスの環境を整える
  • ギフテッド児に学び方・忍耐力・挫折への抵抗力が身に付くように指導する

【問題点】ギフテッド児への適切な個別課題を準備・指導するための
時間と労力をかける余裕が、学校側にはない

【現実】教室の中でギフテッド児の能力とテンポを尊重する指導にはムリが生じる

例)

  • ギフテッド児のための学習スケジュールを立てても、授業時間内での実現が困難
    →クラスの平均的な要求とは異なりすぎるため、次第におざなりになる
  • ギフテッド児への特別課題が内容的に似ているものばかりになり、単なる時間つぶしの道具になってしまう
    →退屈を嫌うギフテッド児のやる気がなくなる
  • サポートが必要な他の生徒の指導役に抜擢
    →ギフテッド児にお世話係の役が定着
  • 同級生の保護者から学校へプレッシャーがかかる(例:ギフテッド児を特別扱いしすぎ)
    →過半数を占める保護者の意見に学校側が押されてしまう

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のはざまで親ができること

【ギフテッド児の学校教育】理想と現実のはざまで親ができること

ここまで、まるで飛び級制度のアラ探しをしているかのような記述になってしまいましたが、私がお伝えしたいことは、自らの育児経験からわかった「飛び級制度だけでは解決不能なギフテッド育児のややこしさ」なのです。

たとえ飛び級制度という解決策があったとしても、学校だけでは受け皿になりきれないのが、ギフテッド児の抱える宿命。なにしろ、いつでもどこでもはみ出てしまうのが常なので(笑)。

ギフテッド児の学びへの欲求と、自己実現を満たす生活環境を作り上げるために、
親は具体的にどうすればいいのか?

この問いに対する答えは、

学校外の課外活動と、お子さんがご家庭で過ごす時間の充実を図ることにより、
ギフテッド児にとって理想に近い生活形態を親御さんが提供する

という内容がもっとも相応しいのでは、と私は考えています。

例えば、チェス・英会話・音楽・スポーツなどのクラブへ参加することは、学校とは違う友人の輪を広げるチャンス。

またご自宅ではお子さんが得意な分野の検定試験や大会に挑戦させてみることなどが、最適かと思われます。

ギフテッドのお子さんたちには、「どうにも止まらないほど熱中できるテーマ」が、きっとあるはず。

お子さんが夢中になっているテーマをさらに追求したり、新たな分野に興味を持たせたりという工夫を親御さんが図ることで、学校の授業だけでは満たされないギフテッド児の毎日が、充実したものになるはずです。

学校のカリキュラムという制限事項から離れた環境ですと、ギフテッド児に適したレベルとテンポの調整もたやすくできますし、熱中できることに打ち込む間に、知力以外の人生サバイバルに必要なスキルも自然に身に付くので、一石二鳥です。

飛び級制度のないものねだりより、親が実現できることを実行すべき

飛び級制度のないものねだりより、親が実現できることを実行すべき

お子さんが通っている学校から、ギフテッドに対する理解と協力を得ることはもちろん大切です。

しかし、教育システムから実現不可能なポイントに凝り固まるのではなく、「親の立場でわが子のために実現できること」に目を向けた方が、お子さんの成長過程に好影響を与えるはずです。

ギフテッド児は、そもそも数が少ない上に、それぞれの個性と、突出している才能の分野と特徴、すべてが異なりますから、「AをすればBという効果がある」定理を見つけ出すことが、研究面でも困難。

あなたのお子さんが必要とするものを見極めることができるのは、ご両親であるあなた方だけなのです。

必要なものを・必要なときに・必要なだけ与えて見守れるのは親だけ

必要なものを・必要なときに・必要なだけ与えて見守れるのは親だけ

子育ての悩みを取り上げるフォーラムなどで、「ギフテッドの傾向があるわが子を、ぜひ飛び級させたい」とか、「日本も海外のように飛び級制度を取り入れるべき」という意見を、私もしばしば目にしてきました。

私自身も、就学前の娘の様子から「おそらくギフテッドの彼女には、ギフテッド教育を重視している学校がピッタリ」と信じていたひとりなので、皆さんのお気持ちがとてもよくわかります。

けれども、現在では成人している娘の成長過程を振り返りますと、結局いちばん大切だったのは、飛び級制度の有無ではなく、「ギフテッド児が必要なものを・必要なときに・必要なだけ与えて見守る親の姿勢」ではないかと感じています。

今回の記事が、「ギフテッド育児に奮闘中。でも飛び級ができないから、どうしよう」とお悩みのご家庭にとって、少しでも役立つ情報であれば、幸いです。

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