【天才児の育て方】②丈夫な愛の絆を作る

子どもの頭を良くしたい親の宿題:②丈夫な愛の絆を作る 天才を伸ばす育児

可愛いわが子に親が贈る、人生で最高のプレゼント、それが親と子を結ぶ丈夫な「愛の絆」。

「愛の絆」は、子どもの「学びたい」という気持ちのスイッチをONにしてくれます。

それだけじゃありません。

「愛の絆」は人生の万能薬。子どもの心に抵抗力をつけ、成功に導く力の泉なので、まさにしあわせな人生を歩むための必需品なのです。

この記事の主題:愛の絆って、なに?

  • 心理学研究のバックグラウンド・定義・研究結果が示す学力と人生への効用
  • しっかりした愛の絆が頭の良い子をつくるしくみ
  • 丈夫な愛の絆を作るマジックは親の「繊細な対応」

【天才児の育て方】愛の絆って、なに? 心理学研究のバックグラウンド

愛の絆って、なに? 心理学研究のバックグラウンド

コトの発端は、第二次世界大戦後の1950年代にさかのぼります。

世界保健機関(WHO)の依頼で、孤児院などの施設で暮らす子どもたちの死亡率が高い理由を調査していたイギリスの児童精神科医Bowlbyは、「心と体の健全な発育には、衣食住の条件だけではなく『子どもと養育者の愛の絆』がカギとなる」と「愛の絆」がヒトの人生に与える影響力に、初めて焦点を当てたのです。

ヒトの進化論・精神分析・行動研究・認知科学の知識に基づき、「愛の絆」をテーマにしたBowlbyは、その後の研究で愛の絆が持つ影響力を具体的に計測することに注目。

愛の絆がヒトに与える影響を提唱するアタッチメント理論は、現在までに数多くの研究で検証され、Bowlbyの提唱が正しかったことを証明しています。

アタッチメント理論の定義:愛の絆の育ち方

定義:愛の絆の育ち方。親の指を掴む赤ちゃん

生まれたての赤ちゃんは、ひとりでは生きのびることができません。だから、泣く・抱きつく・後追いなどをすることで、自分のお世話をしてくれる人の気を引き、自分自身がサバイバルできるチャンスを高めようとする本能があります。

赤ちゃんは、自分の身近で世話をやいてくれる人と態度のキャッチボールをくり返しながら、「こういうときは、どうすればいいのかな?」と判断するための情報集めをしていきます。

体験を通じて集めた情報は、この世でのオリエンテーションのルールとして、心の奥底にある「人生のコンパス」に、セーブされていくのです。

人生のコンパスに情報をインプットする際、赤ちゃんが、「私のすることを見て・聞いて・感じて・反応してくれる誰かが私の近くにいて、お世話をしてくれている!」と、自分を包む愛と優しさをしっかりと感じることができれば、赤ちゃんの心に丈夫な「愛の絆」が育ちます。

赤ちゃんは、両親とだけではなく、自分のお世話をいつもしてくれる、安定してポジティブな相互関係を体験できる相手(人数は3〜4人まで)となら、丈夫な愛の絆を育むことができると、最新の研究で明らかになっています。

研究結果は語る:丈夫な愛の絆を持つ子は人生いいことずくめ

青空に色とりどりの風船

「ウチの子の頭を良くしてあげたい!」と子育てに奮闘中のママさん・パパさんにとっておそらくいちばん興味深い研究テーマ・愛の絆と学力の関係について、報告されている内容はコチラ↓。

丈夫な愛の絆と学力の関係:研究で報告されていること

実験をする小学生

児童期(幼稚園・小学校):

  • 学ぶことを楽しんでいる
  • 探究心が強い
  • 自信を持って課題に取り組む
  • やる気がある
  • 算数と読み書きで良い成績
  • 落ち着いた友人関係
  • リーダー役で人気者
  • 先生との関係が良い
頭の良さそうなティーンエイジャーが床に座っている

青少年期(中学・高校・大学):

  • 目的を決めて努力できる
  • 責任感がある
  • ストレス状況への対応がうまい
  • 楽観的
  • 人間関係が上手
  • 攻撃的な態度が少ない
  • 大学4年間の総合成績が良く、大学を退学・留年する率が低い

注目すべきなのは、ここでご紹介した研究の結果が、「縦断研究」により報告された内容であること。

縦断研究とは、医学研究、社会科学、生物学におけるの研究形式の一種で、同一の変数を短期間または長期間に亘って繰り返し観察する研究デザインである。観察研究の一種である事が多いが、縦断的無作為化試験として構成される事もある。

出典:「縦断研究」 フリー百科事典『ウィキペディア』(https://ja.wikipedia.org/)
最終更新日時:2021年6月22日 08:11 (UTC)
アクセス日時:2021年7月25日 19:40 (UTC)

例えば、愛の絆と学力に関する縦断研究では、検証にご協力いただく被験者の方の

  • 過去に起きたコト:定着している愛の絆のかたち(例:丈夫/丈夫でない)
  • 現在(1度目の測定時):学校での成績・態度など、研究者が調べて明らかにしたいコト
  • 未来(2度目以降の測定):1度目に測った研究の目的と同じコトを、同じ被験者で再び調査

というふうに、長期間にわたり、同一の被験者の方に対して研究で明らかにしたいコトをくりかえし測定するので、原因と結果(例:原因=愛の絆のかたち、結果=学力と態度)の関連を調べるための科学研究法としては、縦断研究は理想の形。

ただし、調査にかかる時間が長く、費用もかさむことから、研究の実現がむずかしい、というのが実状です。

そのような研究をめぐる状況で判明している、愛の絆がヒトの人生に与えるポジティブパワー。

愛の絆のパワーを検証する研究は、学力以外のテーマでも盛んに行われ、ヒトが成人してからの心身の健康への影響、さらに心の病が発症するかどうかの調整役の意味を持つ要因でもある、と臨床心理学の研究ではみなされています。

では、なぜ丈夫な愛の絆を持つ子どもの頭が良くなるのか、そのしくみについて、次のパートで説明していきますね。

【天才児の育て方】愛の絆が頭の良い子をつくるしくみ

両手で成功の文字を広げる画像。愛の絆が丈夫だと、成功するから。

私たちの心の中には、

  • 身近でお世話をしてくれる人と頑丈な愛の絆で結ばれたい
  • でも、知らないコトだらけの外の世界へ探検に出かけたい

というふたつの欲求が共存しています。

「愛の絆を求める心」と「探究心」というふたつの欲求はつながっていて、愛の絆のエネルギー充電が完了してから、学ぶ力の源・探究心のスイッチがオンになるしくみになっているのです。

【天才児の育て方】愛の絆と探検のサイクルのつながり

愛の絆が頭の良い子をつくるしくみ:愛の絆と探検の欲求のつながり

ここで、みなさんにイメージしていただきたいのは、ウルトラマン。

地球の平和を守るため、大活躍しているウルトラマンのキャラクター。でも、ひとつの戦いが終わったら、新しいエネルギーを蓄えて、次の戦闘に備える必要があります。

もしエネルギーがゼロのままで充電できなかったら、ウルトラマンは戦えないので、悪者退治に出かけることができません。

同様に、生まれ持った好奇心を満たすために冒険に出る子どもにとって、信頼できる誰かが手の届くところにいない外の世界は、まだ知らないこととの格闘。

だから、子どもはすぐに疲れます。
だって、世界にあるモノ・起きるコトはなにもかも、子どもにとっては新体験ですものね。

そして、まだ意味がわからないことに出会ってこわいとか、なぐさめてほしいという感情が起きたら、愛の絆で結ばれている人のもとに帰還して、愛情を再充電。エネルギーの充電が無事に終わると、次の探検に出発していくのです。

ですから、丈夫な愛の絆が心の中に育った子どもは、どんどん未知の世界へ探検に出かけ、新しいことを学び、吸収します。

探検が終わったら、やさしく自分を包んでくれる人のところに戻れば、ゆっくりと休養できることがわかっているので、子どもは全力で探検に取り組めるのです。

それとは逆に、自分のお世話をしてくれる人の深い愛情を確信できない子どもは、まず愛の絆を丈夫にすることに気を取られ、探検に行くことには気が回らない。

その結果、いつまで経っても探求のスイッチを押すことができないので、学ぶ力が伸びないのです。


以上のように、Bowlbyの提唱した愛の絆と探究心のつながり、そして満たされた愛の絆によって実現される探究心の追求は、心理学・教育学において「子どもの頭を良くする決め手」と、とらえられています。

また、神経学の見地からも、探究心は頭が良くなるカギだとみなされています。

子どもが、外の世界でドキドキする新体験からなにかを発見し、うれしくなるたびに、脳の中では神経核が、他の神経核とのつながりを増やし、やがて神経網を作り上げていきます。

この際、たくさん使う神経核のつながりは、幹線道路のように大きくなり、あまり使わないつながりはだんだんすたれていく、というしくみになっているため、神経網の基礎工事が活発に行われる幼少期の体験が、頭の良い子を作るベースになる、というのが神経学の見解です。

【天才児の育て方】丈夫な愛の絆を作るマジックは親の「繊細な対応」

丈夫な愛の絆を作るマジックは親の「繊細な対応」。魔法を使う手

では、具体的にどうすれば丈夫な愛の絆を作ることができるのか、みなさんにぜひ心がけていただきたい3つのポイントは、コチラです。

丈夫な愛の絆を作る方法:

  • 子どもの出すシグナルに気づく
  • シグナルを正しく解釈する
  • 子どもの出したシグナルに、すぐに反応する

【天才児の育て方】子どもの出すシグナルに気づく

子どもの出すシグナルに気づく

視線・表情・声など、子どもはいろいろなかたちでシグナルを出してくるので、まず注意深く子どもを観察。
そして、はっきりとわかる態度だけではなく、ちいさなサインにも気づいてあげられるように、心がけましょう。

【天才児の育て方】シグナルを正しく解釈する

シグナルを正しく解釈する

お腹がすいた・お尻が汚れて気持ち悪い・疲れた・こわいからなぐさめてほしいなど、子どもの要求はいろいろあります。

子どもがある一定の状況でとる態度をよく観察して、「いつ・どんなときに・どんな態度をとるのかな?」と考えてみましょう。するとだんだん、「私って、子どものシグナル予報士じゃない?」と思えるほど、子どもの態度が的確に読めるようになってきます。

「絶対、この子の要求が読めるようにならなきゃ!」なんてムキにはならないで。
天気予報が100%当たる予報士だって、いないでしょ?

大切なのは、親御さんが子どものすることに興味を示して、正しい意味をわかろうとしてあげることです。

【天才児の育て方】子どもの出したシグナルに、すぐ反応する

子どもの出したシグナルに、すぐ反応する

乳児の研究によれば、子どもがシグナルを発してから5〜8秒以内で反応を示してあげると、「私がしたこと、ママ/パパがわかってくれたんだ♪」と、子どもは自分自身の影響力を認識できるのでオススメだそうです。

でも、短距離競走のように、シグナルが出たからあわててダッシュ! なんてできない状況もありますよね。
出先ですぐにミルクの準備ができないとか、家事の真っ最中で手が離せないとか、そんなときにはまず声で応答して、シグナルが伝わっていることを子どもに伝えましょう。
そして、シグナルに対応できる状態になったら、すぐに行動に移せばOK。

急ぐことで、親御さんがキリキリしないようにしましょう。大人のキリキリは子どもにうつるので、悪循環の原因になります。

大事なのは、声かけだけで終わるのではなく、実際に子どもの要求に対応してあげることなので、その点は気をつけてくださいね。

ただし、子どもの表現に親がすぐさま反応して、すべての要求を満たしてあげるべきなのは、生後9ヶ月くらいまで。
なぜかというと、子どもは9ヶ月の頃から、嘘泣きをして親を操ることがあるので、そのくらいのお年頃になったら、親がルールを作って対応する必要が出てきます。l

まとめ【天才児の育て方】②丈夫な愛の絆を作る

赤いハートに聴診器

子どもの成長とともに、愛の絆が子どもと世話人を結ぶ実際の距離も、どんどん離れていきますが(特にマザコン/ファザコンじゃなければね)、幼い頃に形成された愛の絆のかたちは、そのままの状態で、私たちの「人生コンパス」に存在し続けます。

丈夫な愛の絆は、まさに人生の万能薬。

頭の良くなるスイッチを入れるだけではなく、しあわせな人生を歩むためのカギが、親子の間に育つしっかりとした愛の結びつきから生まれるのです。

親が子どもにプレゼントできる最高の贈り物・丈夫な愛の絆を、ぜひ育ててあげてくださいね。

【天才児の育て方】②丈夫な愛の絆

  • 丈夫な愛の絆は人生の万能薬:
    ①子どもの頭を良くする
    ②子どもを成功に導く
    ③人の心を一生守る
  • 子どもに対する親の繊細な態度が、丈夫な愛の絆をつくるヒケツ:
    ①子どもの出すシグナルに気づく
    ②シグナルを正しく解釈する
    ③シグナルにすぐ反応する

参考文献:

Cutrona, C. E., Cole, V., Colangelo, N., Assouline, S. G., & Russell, D. W. (1994). Perceived parental social support and academic achievement: an attachment theory perspective. Journal of personality and social psychology, 66(2), 369.

Harwardt-Heineck, E. & Ahnert, L. (2013). Bindungserfahrungen in Kindergarten und Schule in ihrer Wirkung auf die Schulbewährung.Zusammenfassende Ergebnisse aus der BSB-Studie. Zeitschrift für Pädagogik 59 (2013) 6, S. 817-825.

Kurland, R.M. & Siegel. H.I. (2020). Attachment and College Academic Success: A
Four-Year Longitudinal Study.
Open Journal of Social Sciences, 2020, 8, 45-55. 

Oerter, R. & Montada, L. (2002). Entwicklungspsychologie. Weinheim: Beltz.

Sroufe, L. A., Egeland, B., Carlson, E. A., & Collins, W. A. (2009). The development of the person: The Minnesota study of risk and adaptation from birth to adulthood. Guilford Press.

Stamm, M. (2013). Bildung braucht Bindung: Ein Fundament für das Vorschulalter. Bern: Swiss Institute for Educational Issues.

タイトルとURLをコピーしました