愛の絆のはかりかた:種類と要因・子どもへの影響

心理学の豆知識:愛の絆のはかりかた・種類と要因・子どもへの影響 天才を伸ばす育児

私たちが幼いころ、自分の身近にいつもいる大人との間に結ぶ愛の絆のかたちは、心の奥底に「人生のコンパス」としてセーブされるので、生涯にわたって私たちの生き方に、大きく影響を及ぼします。

子どもの頭を良くしたい親の宿題:②丈夫な愛の絆を作る という記事では、親子を結ぶ理想の形である「丈夫な愛の絆」に焦点をおいて解説をしました。

Bowlbyが提唱したアタッチメント理論の「愛の絆」は、のちに発達心理学者のAinsworthが考案した「奇妙な状況テスト」により検証され、愛の絆には4種類のタイプがあると現在では認定されています。

今回の記事では、

  • 心理学の豆知識:愛の絆を検証する「奇妙な状況テスト」の構成
  • 愛の絆のタイプ別:奇妙な状況テストで子どもがとる態度
  • 愛の絆のかたち:親が子どもに与える影響の要因
  • 愛の絆のかたちが子どもに与える影響

の4点をテーマに取り上げます。

心理学の豆知識:愛の絆を検証する「奇妙な状況テスト」の構成

心理学の豆知識:愛の絆を検証する「奇妙な状況テスト」の構成

施設にいる子どもたちという臨床のケースから提唱されたBowlbyのアタッチメント理論を、一般の生活環境で応用するためにAinsworthが考案したのが「奇妙な状況テスト」です。

奇妙な状況テストの調査対象となるのは、12〜18ヶ月の子どもとその母親。
子どもにとっては「よくわからない、ストレスを感じる状況」で、どのような態度を子どもがとるのか、その反応を観察し、測定することで、親子間に定着している愛の絆のかたちを調べます。

奇妙な状況テストのながれ

奇妙な状況テストのながれ

片側からしか見えない鏡(ドラマで定番の、警察の取調室にあるアレです)で仕切られた部屋(おもちゃとイスが2脚ある)で、それぞれ3分ずつに区切られた8つのエピソードが展開されます。a

  1. 研究スタッフが母子を部屋に案内。スタッフは退室。
  2. 母親は部屋においてある雑誌を読み始め、子どもがおもちゃで遊ぶようにうながす。
  3. 知らない女性(案内したスタッフとは別人)が入室。
    女性はまず母親と言葉を交わし、その後で子どもに話しかける。
  4. 母親が、子どもになにも言わないまま、さりげなく退室。
    部屋に残った女性が子どもと遊び、必要ならなぐさめる。
  5. 母親が入室し、知らない女性は退室。
    母親が子どもに再びおもちゃで遊ぶようにうながす。
  6. 母親が子どもにはっきり別れを告げて部屋を去る。
    子どもがひとりで部屋に残る。
  7. 先ほどの知らない女性が再び入室。
    子どもの態度にあわせて、遊んだり、なぐさめたりする。
  8. 母親が入室し、知らない女性は退室。

愛の絆のタイプ別:奇妙な状況テストで子どもがとる態度

愛の絆のタイプ別:奇妙な状況テストで子どもがとる態度

愛の絆は以下の4タイプに分別されています。a

  • 丈夫
  • 不確かで避ける
  • 不確かで不安定
  • 統一せずバラバラ

丈夫な愛の絆

丈夫な愛の絆
  • 母親が一緒にいるあいだは、興味深く部屋の様子やおもちゃを調べる。
  • 母親が退室し、戻ってこないと周囲への探究心がなくなり、母親がいなくて悲しいことをはっきり表現。
  • 母親が部屋に戻ると喜びを表現。なぐさめてもらうとすぐに落ち着き、再び遊び始める。

不確かで避ける態度の愛の絆

不確かで避ける態度の愛の絆
  • あっという間に部屋を探索し、自分が母親から独立していることを強調。おもちゃに熱中。
  • 母親が退室しても、別れがつらいことをまったくおもてに出さない。
  • 母親とではなく、むしろ知らない女性とおもちゃで遊ぶ。
  • 母親が部屋に戻ってきても、無視。または近くに寄らないなど、拒否反応をはっきり示す。

不確かで不安定な愛の絆

不確かで不安定な愛の絆
  • 母親にしがみつくなど、極端な行動をとる。
  • 母親が退室するとすごく興奮し、泣いて後追い。
  • 母親が戻ってくると近寄るが、なぐさめは拒否するなど、つじつまの合わない態度をみせる。興奮状態が続き、なかなか落ちつかない。

統一せずバラバラな愛の絆

統一せずバラバラな愛の絆
  • 他の絆のタイプにみられる行動がごちゃまぜ。
  • テストの最中、突然動きを止めたままじっと固まる・ひとつの場所でぐるぐる歩きまわる・状況に合わない表情を作るなど、理解しがたい態度をとる。

愛の絆のかたち:親が子どもに与える影響の要因

愛の絆のかたち:親が子どもに与える影響の要因

愛の絆は、親と子どものコミュニケーションを映す鏡。

子どもの心に育つ愛の絆がどんなタイプになるのか、もっとも決定的な要因はなにかというと、

  • 丈夫な絆=親の繊細さ
  • 不確かで避ける絆=ストレス状況にいる子どもの要求(なぐさめ・近くにいたい・かまってほしい)を拒否
  • 不確かで不安定=自分の気分次第で対応
  • 統一せずバラバラ=家庭の深刻な問題

だとみなされています。a

愛の絆のかたち:子どもへの影響

愛の絆のかたち:子どもへの影響

「奇妙な状況テスト」で子どもがみせる態度は、その場限りのものではなく、子どもたちが日常の家庭生活で親と体験していることに関連している、と判明しています。b

愛の絆が丈夫な子ども

愛の絆が丈夫な子どものシンボルとして丈夫なロープでできているハート

丈夫な愛の絆を持つ子どもは、親がいつも頼りになる相手だと確信しているので思う存分、好奇心・探究心を発揮することができます。

また、絆が丈夫な子どもは知能だけではなく、実行力・社交性・挫折に対する抵抗力も育つので、幸せ度数の高い人生を歩みます。

愛の絆が不確かで避けるタイプの子ども

愛の絆が不確かで避けるタイプの子ども

親との絆が不確かで避けるタイプの子どもは、親の愛情を確信できないので、親への絶対的な信頼感が持てません。

親との体験から、自分の気持ちは相手に伝わらないと思いこんでいるので、他人とあまり交わらず、感情表現がうまくありません。

人とのつながりがないことを、本人は独立して生きている証だ、とポジティブにみる傾向があります。

愛の絆が不確かで不安定なタイプの子ども

愛の絆が不確かで不安定なタイプの子ども

親子間の絆が、不確かで不安定なタイプの子どもは、親の行動がまったく読めないうえに、なぜ自分に対する態度がクルクル変わるのか、その理由がわからないので、親をまったく信頼できません。

このタイプの子どもは、困難に直面しても、どうすれば的確に対処できるのかが自分ではわからないし、親に助けを求めることもできないので、引きこもりがち。

その反面、具体的に問題を解決する方法がわからないので、ちょっとしたことで不満を感じ、感情的な態度をとる傾向があります。

愛の絆が統一せずにバラバラのタイプの子ども

愛の絆が統一せずにバラバラのタイプの子どものシンボルとして真っ暗な空の下を続く道

このタイプに該当する子どもは、児童期から青少年期にかけて問題行動を起こす、または精神疾患を発症することが多いという研究結果が出ています。子どもと養育者の抱える深刻な問題を解決するために、プロフェッショナルの助けが必要です。

【まとめ】愛の絆のはかりかた:種類と要因・子どもへの影響

どんどん育つ新芽が3本

幼少期に身につけた愛の絆のかたちは、児童期・青少年期・そして成人してからも変わりにくい、ということが、20年間におよび同じ子どもたちの愛の絆の変化と発達を調査している研究の結果で、明らかになっています。b,c

ただし、まわりの環境の変化やネガティブな出来事に影響を受け、絆のかたちが変化することもあるのでd,e、成長する過程で特に心が揺らぎやすく、子どもが親から距離をおく青少年期に親子の愛の絆がこんがらがったり、途切れたりしないように、早い段階からコツコツと、丈夫な愛の絆を作り上げていきましょう。

大事なポイント:愛の絆のはかりかた・種類と要因・子どもへの影響

  • 「奇妙な状況テスト」で子どもがみせる態度は、家庭での親との体験を反映している
  • 愛の絆のかたちを決定づける親の要因:繊細さ・的確さ・気分でブレない・親が抱える問題
  • 幼いころに形成される愛の絆のかたちが、子どもの生き方に大きな影響を与える

参考文献:

a) Oerter, R. & Montada, L. (2002). Entwicklungspsychologie. Weinheim: Beltz.

b) Grossmann, K. E., Grossmann, K., & Waters, E. (Eds.). (2006). Attachment from infancy to adulthood: The major longitudinal studies. Guilford Press.

c) Waters, E., Merrick, S., Treboux, D., Crowell, J., & Albersheim, L. (2000). Attachment security in infancy and early adulthood: A twenty‐year longitudinal study. Child development, 71(3), 684-689.

d) Weinfield, N. S., Sroufe, L. A., & Egeland, B. (2000). Attachment from infancy to early adulthood in a high‐risk sample: Continuity, discontinuity, and their correlates. Child development, 71(3), 695-702.

e) Bakermans-Kranenburg, M. J., & van IJzendoorn, M. H. (2009). The first 10,000 Adult Attachment Interviews: Distributions of adult attachment representations in clinical and non-clinical groups. Attachment & human development, 11(3), 223-263.

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