年齢別保育の幼稚園で、生まれて初めて同い年の子どもたちと自分の差を意識し、悩み始めた娘。
皆違うけど、ありのままでいて構わないことを説明するために、親子で朝顔の栽培をしたところ、娘は「自分らしさ」を自然に受け入れることができたようです。
年齢別保育の幼稚園で周りと違う自分に困惑したギフテッド娘

能ある鷹は爪を隠すと言いますが、天才児はあえてできないふりをすることで、まわりから突出しないように気をつける場合があると、ギフテッド研究では報告されています。
この研究結果は、ウチの娘にドンピシャでした。
年齢別保育の幼稚園で、生まれて初めて同い年の子どもたちと自分の差を意識し、悩み始めた娘。
優れた能力を好意的に受け止めてくれない大人と一緒のときには、あえて「できない・知らない」フリをしつつも、自分らしさを否定することで、娘には不満が募り始めます。
人は皆、違ってあたりまえ。そして誰もがありのままの自分でいて構わないことを説明するために、私が思いついたのが、親子でする朝顔の栽培でした。
ギフテッド娘が幼稚園時代に体験した天才児特有の問題

- 課題をこなすテンポが超速
- 完成した課題が上出来
- 時間を持て余して退屈
- 娘の質問に先生タジタジ
- 優れていること=生意気と誤解される
2歳のときからハサミを上手に使いこなしていた娘は、工作が大好き。
自分の作品完成後、他の園児から「キレイにできてるね。どうやったのか、教えて!」と質問された娘は、コツを説明しながらお友だちのお手伝いをするのですが、そんな娘に主任教諭は「他人のお手伝い禁止令」を出します。
ところが、週に2日勤務している幼稚園のサブ教諭は、子ども同士のお手伝いを推奨していたため、娘は混乱。
自分の退職日を待ち望み、子どもに興味を示さない主任教諭と、熱心で子どもに寄り添うサブ教諭の間に確執があったのは、保護者にも知れ渡っていた話。
そんな状況の中、「同じ幼稚園内で、先生によって違うルールが適用されるワケ」の説明を求めた娘は、主任教諭にとってさらに目の上のたんこぶ状態になってしまいます。
あまりにも時間を持て余した娘は、主任教諭に「別の課題もください」と頼みます。
しかし娘のお願いは無視され、戻ってきた返事は「時間が余らないように、もっとゆっくりしなさい」でした。
当然、私たちはふたりの教諭と状況改善の話し合いをしましたが、主任教諭は聞く耳持たず。
話し合い後、状況は悪化し、保身のためか娘は主任教諭が担当する週3日の授業では、超スローテンポで作業にあたり、課題がまったく仕上げられなくなってしまうのです。
幼稚園に入園するまで、娘が出会い、一緒に時を過ごした大人は皆、娘のずば抜けた才能を目にしても、誰ひとり批判などしませんでした。むしろ、皆さん積極的に才能を伸ばすサポートをしてくださった。
幼稚園主任教諭との体験は、娘にとって「天才児としての冷たい洗礼」のようなものでした。
【天才児への偏見】「自分らしさ」を受け入れることで対応

幼稚園を辞めさせる/転園する/そのまま通うという選択肢の中から、私たちが出した答えは、現状維持。
いちばんの理由は、娘が引き続き同じ幼稚園に通いたいと望んだため。そして、私が母校のつてで意見を求めた心理セラピスト数人から、「天才児にとって『普通』に当てはまらない自分自身を受け入れることは、大切な成長の課題。直面している問題は、再び違う状況で生じる可能性があるから、『自分らしさ』をポジティブに考えられるように支援をした方がいい」と助言されたためです。
「他人を変えることはできないが、自分の内面と行動を変えることで、状況は変えられる」という考えは、セラピーの基本。
そこで当時5歳だった娘が、周囲と異なる自分らしさを肯定できるシンボルとして、朝顔を育てることを私は思いつきました。
朝顔栽培が「自分らしさ」を受け入れるきっかけになった天才児

朝顔の育つ過程は子どもの成長に通じるものがある、と私が思った理由は、同じ植木鉢に種をまき、同じ量の水をあげ、同じ日照条件で育てても、朝顔が成長するテンポ・サイズ・咲く花の数や大きさが違うから。
種を選ぶところから一緒にスタートし、親子で毎日朝顔の成長を観察しました。毎日の水やりは、娘のお仕事。
一足早く伸びたつるを支えたり、後から発芽したのに大きな葉をつけた茎に驚いたりしながら、種の成長の仕方はどれひとつ同じではないけれど、どの茎にも花が咲く朝顔について、親子でさまざまな語り合いをしました。
朝顔の花が咲くころには、「みんな違うけど、みんなキレイだね」と、娘は「ありのままの自分らしさ」を受け入れることに納得し、気持ちが吹っ切れたように、私には感じられました。
朝顔栽培以降、主任教諭の日に仕上がらなかった課題は、サブ教諭の日に当日の課題と並行して片づける方法を思いついた娘は、楽しみながら困難を乗り越えていたようです。
ボーッとしている(ようでまわりの観察に勤しんでいた)日と、バババッと作業をするスイッチの切り替えが他の園児には面白かったらしく、そのことでよく話しかけられました。
娘にとって救いだったのは、
- 幼稚園のクラスメイトから人気絶大
- 掛け持ちしていた保育園で心地よい場と良い人間関係を確保
- スイミングクラブでも良好な人付き合い
- 両親に悩みを打ち明ける勇気と信頼関係があった
こと。
娘に既に先約があり、招待されたお誕生日パーティに参加できないときには、開催者が日時を変更するのが通例なほど、幼稚園では大人気(コチラは申し訳ない限り)。
娘本人は、「私は誰と遊んでも楽しいから、それでかな?」と人気の理由を分析していました。
また、保育園とスイミングクラブでも、保育士とコーチの方々の支援により、引き続き「自分らしさ」を伸ばす場が娘にはあったことも、感情面での支えとなりました。
それらの要素のおかげで、ネガティブな点にこだわらず、娘は前向きにいられたのかしら、と思います。
とはいえ、当時まだ5歳の娘が、よくくじけずに明るく幼稚園に通えたものだと、過去を振り返るだけで複雑な気持ちが湧き上がってきます。
天才児研究について調べ、社会からの偏見はあると知っていたものの、実際に娘が当事者として問題に直面していたときには、もう困惑・苦悩の日々でした。
朝顔栽培のメソッドは、私が直感から応用したものなので、他のお子さんに適用した場合、同じような効果があるかどうかはわかりません。でも、お子さんがもし似たような問題でお悩みのときには、試してみる価値があると思います。
天才児の成長過程は波瀾万丈。けれども、天才児のありのままの姿を受け止め、才能を伸ばすサポートをしてくれる親御さんがいれば、なんとかなります。
親が精神的に図太くなることが、天才児が伸びやかに成長するための秘訣かもしれません(笑)。
みなさまのお子さんの、健やかな成長を祈っています。
関連文献:
Webb, J. T., Gore, J. L., Amend, E. R., & DeVries, A. (2017). Hochbegabte Kinder: das große Handbuch für Eltern. Hogrefe.