【わが家のギフテッド児】5歳児での特徴/幼稚園で嵐の保護者面談

飛び級児成長記

まだ保育園に通いたい、という本人の希望を尊重し、あえて1年保育で入園した幼稚園で、娘は初めて同い年の子どもだけの集団生活を体験します。

保育園のおかげで、社会性スキルが鍛えられていた娘は、クラスの人気者でグループのリーダー的存在になります。

しかし、自分の能力があらゆる面で同年代の子どもとちがうことに気づいた娘は、周囲との同調を図るため、わざと他の子たちから大幅に遅れる行動も見せるようになりました。

娘の卓越した能力をサポートしてくれる私立小学校へのお受験を目前にした保護者面談で、娘の進路についてふたりの幼稚園教諭の意見が真っ向対決。親の私たちが予想もしていなかった討論が繰り広げられました。

【わが家のギフテッド児】5歳児での特徴①できないことに進んで挑戦

新しい目標に次々チャレンジする人

5歳当時の娘は、自分の知識や能力のレベルアップに挑む毎日を過ごしていました。

自分の知らないことに気づくと、すぐに図鑑や本でチェック。新たに得た知識から生まれた疑問を、さらに調べる…と大忙しで、娘が「わかったこと」を次々と報告・共有してくれたおかげで、私自身のさまざまな知識も増え続ける、とても楽しい日々でした。

自分がマスターしていることで満足せず、レベルアップを図る姿勢は、工作・パズル・ロープジャングルジムなど、あらゆる点で見受けられました。

特に3歳から通い始めたスイミングでは、先生から新しい課題をもらうと、完璧主義が顔をチラつかせるのです。

「今月の終わりまでに、○○ができるようになりましょう」という目標では飽き足らず、授業で習ったテクニックをいかに正確に習得し、使えるかというのが、娘が重視していたポイント。

冷静に自分の動きを判断し、満足のいかない点を改善するにはどうすればいいのか、努力を重ねていました。

娘が自分の到達レベルに納得のいかなかった週末には、「どうしてもチャレンジしたいから、室内プールに連れて行って」とせがんできたので、手がふやけるまで親子共々プールに浸かっていたこともありました。彼女自身が、「できなかったことが、少しできるようになった」と自分でOKサインを出すまで、必要な時間を与えるスタンスを、親は取るように心がけていました。

シンクロナイズドスイミングの女性選手ふたり

幼稚園卒園時には、海での遠泳もできるほど泳ぎが上手くなっていたのですが、生まれつき耳の管が細いため、何度も中耳炎を繰り返していた娘にとって、室内プールの環境は理想的ではありません。

そこで、スイミングクラブへの退会を申し出たところ、クラブの先生のおひとりが、シンクロナイズドスイミングのスイス代表のコーチ陣の方と判明します。

「実は小学校入学と同時に、娘さんをスイス代表養成グループにスカウトするつもりだった。お願いだから、考え直して」と懇願され、娘も私たちもビックリしました。

中耳炎にかかりやすいため、シンクロへの道は健康上の理由で考えられないと即座にお返事申し上げたところ、先生は本当に肩を落としていらっしゃいました。

「耳がウイークポイントなら、シンクロは無理。だけど、体の動きがすごく綺麗だから、クラシックバレエが向いていると思う」という、スイミングの先生のお別れの言葉通り、娘は以降、バレエに励むことになります。

【わが家のギフテッド児】5歳児での特徴②幼稚園で周囲とのズレを実感

周囲から目立つ存在(周囲は黒い影、目立つのは赤い人)

私たちの居住地、スイスのベルン州では幼稚園に通う期間(1年/2年制)を自由に選ぶことができました。

それまでお世話になっていた保育園では、0歳から就学前までのお子さんたちが、年齢の境目がなく同じグループに属する形態。あらゆる年齢のお友だちと仲良くできる保育園生活を、心からエンジョイしていた娘の希望を尊重し、幼稚園はあえて1年だけ・保育園と掛け持ちというスタイルで、娘は幼稚園に入園する運びとなりました。

生まれて初めて同い年の子どもたちだけのグループに属した娘は、「私はどうやら、まわりとかなり違うらしい」と気づきます。

保育園でも年齢が同じお友だちはいましたが、娘はお互いの違いを「個性」と受け止めていたようです。

毎週3〜4回ペースで訪れていた図書館と動物園でも、まわりのお子さんと明らかに異なる態度の娘を、観察してくる人たちも少なからずいたのですが、自分の世界にすっかり浸っていた娘は、他人の態度に注意を払っていませんでした。

ところが幼稚園で、他の子よりも優れている自分の能力と、課題をこなすテンポの差を自覚した娘は、「私、ちょっとまわりとズレてる?」とハッと気がついたときには、あえて超スローペースにギアチェンジするようになったのです。

娘のクラスは、ふたりの幼稚園教諭が週3日と2日勤務で担任していたのですが、主任教諭(週3)は何につけ普通の観念からはみ出る娘をきつく批判し、サブ教諭(週2)は娘の個性を大変好意的に伸ばす方向で指導していました。

幸い、娘はメンタルが強く、日常の揉め事にそつなく対応できる性格に育っていたので、主任教諭からの批判は、娘本人より私たち両親の方がヤキモキしながら毎日を過ごしておりました。

そして、掛け持ちでお世話になっていた保育園でも、保育士の方たちが本当に娘を可愛がってくださったおかげで、「そりゃ意地悪先生に変なことで叱られてばかりなのはイヤだけど、幼稚園と保育園で、たくさんのお友だちと遊べて、楽しい!」と娘はポジティブに暮らしていました。

娘が、ごく稀な優れた才能の持ち主であることを、親の私たちは確信していましたし、恵まれた天才に対する批判的な姿勢を幼稚園主任教諭の態度で痛感した私たちは、娘の進学先として優れた能力を持つ子どもたちの教育に力を入れている私立小学校を選びました。

幼稚園での保護者面談、教諭同士の睨み合い/娘は天才か否か

あと半年で小学生、そして受験日のひと月前という時期に、幼稚園での保護者面談が行われました。

面談のメンバーは、主任とサブの幼稚園教諭と私たち。

先生たちの評価の前に、娘の発達レベルと今後の進路について、まず親の意見を求められました。

「娘のポテンシャルを尊重してサポートしてくれる環境を与えたいので、私立校を受験させます」と述べましたら、主任教諭は私たちを鼻で笑い、「お宅のお嬢さんは、普通学級はムリ。特別支援学級しかあり得ないのに、ピント外れなご意見をお持ちなんですね」と辛辣なコメントを浴びせられました。

ところがサブ教諭の方は、「40年近い私の幼稚園教諭生活の中で、お宅のお嬢さんのようなお子さんは、体験したことがなかった。彼女が特別なのは間違いないけれど、私はW先生のご意見とは逆。ギフテッド教育を重視している私立校への進学は、理想的だと思います」と正反対のご意見。

すると主任教諭は、「お黙りなさい! あなたはただのサブ。主任教諭の私の意見通り、この子は普通学級には進学させません!」と、私たちの目の前であるにかかわらず、サブ教諭の方を激しく罵倒し始めたのです。

ほぼ同い年で、似たような職業年数のあるおふたりは、『極道の妻たち』の睨み合いを想像させる火花バチバチ状態で、私たちも呆気に取られました。

「とにかく、発達が非常に遅れている子どもだと、主任の私が州の教育庁に申請しますから」とペンを取り上げた主任教諭の、勝ち誇った笑顔、そして唖然としていたサブ教諭の青ざめた顔…。15年ほど経った今でも、ふたりの教諭の相反する表情は、私の目に焼き付いています。

主任教諭が「こんなにノロマな子は、まともに育ちませんよ」とさらに悪態をつき、娘の査定表にペンを下ろそうとしたまさにそのとき、私は声を立てて笑いだしたのです。

ギフテッド娘をノロマとなじられて笑い出すキレた母親に、幼稚園教諭唖然

意地悪な主任教諭は、私が完全にキレたとお思いになったようで、ギョッとして私を見つめ、「何がおかしいんですか?!」と金切り声でたずねてきました。そして、夫とサブ教諭は、ショックを受けた表情で私を見つめていました。

私は実のところ、どう対応すれば普通学級への進学を阻もうとしているイジワル主任教諭に立ち向かうことができるのか、笑いながら考えていたのです。

「私が幼稚園生だったときもノロマで、ついたあだ名は『ゆっくりユキちゃん』(これは事実)。娘が私にそっくりだなんて、もうおかしくって…」と笑って答える私を、イジワル主任教諭は憎々しげに見つめていました。

「今の娘と同じように『普通と違う』と心配された私ですが、無事成人することができました。娘の発育状況は、親の私たちが責任を持つべき問題ですから、娘に障害があると勝手に診断するのは、やめていただけませんか」と、私はできるだけ毅然とした態度で、自分の意見を述べました。

私が心理学の研究職に就いていたことをご存じだったサブ教諭は、すぐに援護してくださり、「必要であれば心理学士に発達のレベルを診断してもらうのだから、ここで私たちがお嬢さんの発達具合を議論するのはムダなこと。進学予定の私立校では、ギフテッド教育を重視しているし、追々学校からもサポートしてもらえるでしょう」と、満面の笑顔で場を取りなしてくださいました。

【天才児の苦悩】お受験合格発表まで親は眠れぬ日々

祈る女性

進学を希望していた私立学校の受験項目は、「1日体験授業」と「幼稚園教諭の評価」。1日体験授業では、該当校の1・2年生のクラスで通常授業に参加する受験生の態度を、先生方が評価するシステムになっています。

そのことをご存知だった幼稚園の主任教諭は、「受験する学校から意見を求められたら、お宅のお嬢さんは不合格にすべきだと、私は伝えますから」と、半ば脅しのようなセリフで保護者面談を終了し、サブ教諭は「万一問題が起きたら、私から学校に連絡するので心配しないで!」と支援を約束してくださいました。

そんなこんなで、合否結果が出るまで、まったく心の落ち着かない日々を過ごしましたが、幸い、娘はテストに合格。

私立学校からは、「まさにわが校が重要視している教育指針にピッタリなお子さんであることが明らかなので、幼稚園教諭の評価は考察事項から除外します」と、合格連絡の際にメッセージを受け取りました。

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追記:数年後、このときの主任教諭と偶然街で出会った夫は、「あのとき保護者面談でけなされたウチの娘は、飛び級認定を受けてすくすく成長しています」と、嫌味を言ったとか。

すると主任教諭は平然と、「あら、私はお宅のお子さんの才能を見抜いていましたよ。あれだけ特別な子だもの、飛び級して当然」と、信じられないコメントを口にしたそうです。

当時の保護者面談のことを振り返ると、足がすくむ思いがする私ですが、あのときブレずに、娘の才能を信じて状況に対応できてよかった、と過去を振り返って感謝する日々です。

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【わが家のギフテッド児】まとめ・5歳児での様子

  • 幼稚園での集団生活で、初めて自分とまわりの違いを意識
  • ギフテッド児の特質を理解していない幼稚園教諭からのプレッシャーと、才能を認知している別の教諭からのサポートを両方体験
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