「いちばんお気に入りの童話をクラスのみんなにプレゼンテーションする」という宿題が出た、当時小1の娘。
戸惑いながらも、大好きな「へっこきよめさ」を紹介したら、スイスの子どもたちにも大ウケでした。笑いは世界をつなぐのですね。
いちばんお気に入りの童話・へっこきよめさ。紹介したいけど戸惑う娘

娘が小1のときのことです。
「大変、大変。どうしよう」と、なにやら困り顔で帰宅した娘の話を聞くと、学校で出された宿題が、「いちばんお気に入りの童話をクラスのみんなにプレゼンテーションする」というもの。
0歳のときから読み聞かせをスタートし、たくさんの日本と海外の童話に親しみながら成長した、わが家の娘。
そんな娘のいちばんのお気に入り童話は、海外ものでは「にげだしたパンケーキ」、そして日本の昔話では「へっこきよめさ」。
特に、「へっこきよめさ」は初めて耳にしたときに数分間笑い転げていたほどで、その後の読み聞かせタイムには毎日登場していた、お気に入りの昔話。
「でも、みんなの前で『へっこきよめさ』を紹介するなんて…」と悩む娘。うん、うん、そうよね。その気持ちもよくわかる。
へっこきよめさの選択は正しかったのか/日本人の母は悩む

「自分の気持ちにウソつくのは、イヤだ」と悩んだ挙句、いちばん好きな「へっこきよめさ」を題材に決定した娘を、私は少し複雑な気持ちで学校へと送って行きました。
プレゼンテーションの準備中、「日本の人がみんな、すごいオナラをするって誤解されたらどうしよう…」と、気にしていた娘。
そうなのです。実は娘が悩んでいた原因は、「オナラの話を人前でするのが恥ずかしい」ことではなく、「自分の紹介する日本の童話が原因で、日本と日本人がからかいの対象になるではないか」という問題だったのです。
スイス社会にはびこるアジア人への偏見に、スイス/日本のダブルとして直面することがたびたびある娘にしてみれば、「へっこきよめさ」で日本人が嘲笑されては困る、という責任を感じていたようです。
親として、娘の選択を止めるべきだったのか。だけど、心から楽しんでいる童話を、「自分の好きなお話」として紹介できなくてどうする。ユーモアは、いつの世でも万国共通語ではないか。
そんな揺らぐ気持ちを抱えながら、私は一日中、落ち着かない気分で過ごしました。
「へっこきよめさ」のユーモアは、時代と国境を超えてスイスでも大ウケ

結局、娘がプレゼンテーションした「へっこきよめさ」は、ぶっちぎりでクラスメイトのハートをつかむことに成功したようです。
担任の先生も、「これまで知らなかった童話だけど、楽しすぎます」と、笑い転げていらしたとか。
娘は常日頃私と議論していた、
- へっこきよめさは、体内にあったガスのせいで病気になる可能性はないのか
- 船や人を吹き飛ばすには、体内にどのくらいの量のガスが溜まっていた必要があるのか
- オナラはどのくらいの風速で出れば、船や人を飛ばすことができるのか
- へっこきよめさのオナラを吸い込んだ人が、ガス中毒になることはないのか
という疑問を掲げ、自分なりの解説コメントをしたそうで、プレゼンテーションは大ウケだったと、喜んでおりました。
めでたし、めでたし。
よみきかせ日本昔話 へっこきよめさま
(講談社の創作絵本)
令丈ヒロ子(文/著)
おくはらゆめ(絵/著)