「ぞうのエルマー」が海外在住の天才児にくれた思い出〜違いは個性

飛び級児成長記

わが家の絵本コレクションの中で、特別な意味を持っていた「ぞうのエルマー」。

作者のデビット・マッキーさん逝去にあたり、エルマーが教えてくれたことに、あらためて感謝しています。合掌。

デビット・マッキー作「ぞうのエルマー」のあらすじ

デビット・マッキー作「ぞうのエルマー」のあらすじ

とある象の群れのなか、まわりと違う1頭の象・エルマーがいました。

仲間はみんな灰色の肌なのに、エルマーだけはとってもカラフルな肌の色。エルマーの肌色は、ピンク・赤・紫・黄色…と素敵な色のパッチワーク。でも、エルマーは、みんなと同じ灰色になりたくてたまらないのです。

ある日、エルマーは群れと離れて、体に泥を塗りたくります。灰色の象に変身したエルマーを見た仲間たちは、全員が仮装してお祝いすることを思いつきました。

普段は灰色の象たちは、お祭り当日、みんなカラフルな色と柄の象に大変身。エルマーだけは、灰色の「普通」の象に変身を遂げ、大満足。

・・・というのが、「ぞうのエルマー」のあらすじです。

「ぞうのエルマー」は、スイス人と日本人のダブルとしてスイスで誕生し、天才児認定を受けた娘の成長過程で、大きな意味を持つ特別な絵本でした。

「ぞうのエルマー」のメッセージ:海外在住者の立場で

「ぞうのエルマー」のメッセージ:海外在住者の立場で

マッキーさん作「ぞうのエルマー」は、娘の誕生祝いとしてわが家にやってきました。

「ぞうのエルマー」をプレゼントしてくださったのは、わが家のご近所さんのひとり。小学校の校長先生だったこの方は、世界数カ国のさまざまな学校に赴任し、子どもを真っ直ぐ育てる教育に情熱を傾けていらしたのです。

私がお知り合いになったとき、この方はすでに退職後でした。でも、成人した元生徒さんが生活する世界のいろいろな国からの贈り物がご自宅を飾り、「出張でスイスに来る元生徒とお食事です」なんてことも、度々話題になっていたほど。

この方から頂いた絵本「ぞうのエルマー」の表紙の裏側には、「違うことって素晴らしい!!!」と手書きのメッセージがありました。

「ぞうのエルマー」は娘への贈り物でしたが、人種の多様性と人種の違いに伴うさまざまな難題を、自ら体験された方からのメッセージは、特別な意味を持って、私の心に響いたのです。

スイスという異国で娘を育てることに不安を覚えていた私は、心が挫けそうになったときに何度も「ぞうのエルマー」を開き、この方のメッセージからポジティブ・パワーをもらっていました。

「ぞうのエルマー」のメッセージ:天才児の成長過程で

「ぞうのエルマー」のメッセージ:天才児の成長過程で

やがて娘がギフテッドらしさを発揮して、隣人の元校長先生ご夫妻とおしゃべりを楽しむようになったときのこと。

確か当時、娘は2歳前後だったのですが、彼女が自ら切り抜いて作った工作のアレコレについて、ニコニコと熱心に耳を傾けてくださったおふたりの姿が、とても印象的でした。

説明を終えてから、再び夢中で作業に取り組み始めた娘を見ながら、「あなたのお子さんは、エルマーそのものだね。まわりと違うのは、素晴らしいこと」と、私におっしゃった元校長先生。

するとこのセリフを小耳に挟んだ娘がすかさず、「じゃあ、これからどろんこ遊びをして、灰色にならなくちゃ!」とジョークを飛ばしたので、元校長先生と奥様も大爆笑。

元校長先生がお亡くなりになったとき、奥様から「大好きな絵本『ゾウのエルマー』を、エルマーらしさがあふれるあなたのお嬢さんにプレゼントできたのは良かったと、主人は大喜びしていたの」と知らされました。

娘の成長過程で、彼女が「まわりと違う」自分の個性を受け入れる難しさや、普通枠からはみ出る娘に批判的な態度を取る周囲とやりくりをつける必要が生じた際、必ず親子で手にしていた絵本が、「ぞうのエルマー」でした。

半分外国人、そして天才児としてけっして平坦ではない子ども時代を過ごした娘の心に潤いを与えてくれた「ぞうのエルマー」は、わが家でいちばん大切で特別な絵本です。

60以上の言語に翻訳され、世界中で計1000万部以上の売り上げが報告されている「ぞうのエルマー」。

みんなと違うのは、素晴らしいこと。
だって、「みんなと違う」みんなが素晴らしいのだから

というデビット・マッキーさんからのメッセージは、これからも「ぞうのエルマー」の物語を通じて、世界で愛されることでしょう。

心よりご冥福をお祈りします。わが家の心の支えになったメッセージをお届けくださり、ありがとうございました。

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まわりと違う自分を娘が受け止められるように、わが家では朝顔栽培を通じて「人ぞれぞれの個性がある。そしてみんなが素晴らしい」と実感できる方法も試してみました。