【海外在住体験記】子どもの歯列矯正イコール(ほぼ)強制〜スイス編

スイスライフ

日本と欧米での歯科矯正に対する考え方の違いは、度々メディアでも話題になるテーマ。

海外留学/旅行での体験、またはお好きな海外ドラマを視聴している際にも、「欧米人はやけに矯正器具つけている人が多いわね」なんて思われた方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、

  • 日本のデータで見る歯列矯正の現実
  • スイスでの現状:子どもの歯列矯正の必要性と現実
  • スイスにおける歯列矯正費用と健康保険とのかかわり
  • 海外子どもの歯列矯正:大出費になったわが家の失敗談

について、ご紹介したいと思います。

日本における歯列矯正の現実〜日本臨床矯正歯科医会による調査

日本における歯列矯正の現実。歯の矯正器具を手にする日本人女性

まず、日本ではどのくらいの人が歯列を矯正した経験があるのかについて。

データ出典元:

一般財団法人 日本臨床矯正歯科医会が2009年に、全国の20代〜60代の男女各500人、合計1000人を対象にインターネットで実施した調査

回答者全体のうち、

【日本における歯列矯正のデータ】日本臨床矯正歯科医会

  • 矯正歯科治療経験者=10%
  • 矯正治療を受けようと考えている人=30%弱
  • 男女とも20〜30代の回答者は40〜60代の回答者に比べて矯正経験率が高い
  • 20代の男女では、「矯正治療を受けてみたい」と考えている人が40%以上

とのこと。

海外留学での経験や、メディアからの情報による影響でしょうか。日本でも歯列矯正に対する意識が徐々に高まっていることが、データからうかがえます。

【海外在住体験記】子どもの歯列矯正の必要性と現実〜スイス編

【海外在住体験記】子どもの歯列矯正の必要性と現実〜スイス編。曲がった前歯を指差す少女

次に、私の住むスイスでは、歯列矯正がどのくらい行われているのかについて。

  • 医学的見地から矯正を必要とする子ども=全体の約10%
  • 実際に歯列矯正を受けている子ども=全体の約50%

やはりスイスでは、歯列矯正が必要ではなくても、審美的な条件から行われている率が高いようです。

娘のクラスでは、歯列矯正をしていない子どもはひとりもいなかった、と記憶しています。ほとんど流行状態で、子どもたち同士でお互いに、歯列矯正治療方法の最新情報を交換しあっていました。

【海外子どもの歯科治療/矯正】歯列矯正費用の現状〜スイス編

【海外子どもの歯科治療/矯正】歯列矯正費用の現状〜スイス編。スイスフランの上に矯正器具

【スイスでの歯科治療/矯正費用に関する情報】

  • 歯科治療(虫歯の治療・抜歯・デンタルクリーニング)は基本保険の適用外=健康保険の負担額はゼロ
  • 歯列矯正基本保険の適用外=健康保険の負担額はゼロ
  • 保険会社のオススメ:「追加保険」を子どもが4〜5歳になるまでに申請する
  • 毎月の追加保険料金は、10〜50スイスフラン(約1300〜6600円)とお得
  • ただし、保険会社が負担してくれるのは歯列矯正治療費用の50〜80%
  • 通常、年額負担最高金額が指定済み(例:5000スイスフラン=約66万円/1年)
  • 治療期間の年齢制限あり(例:子どもが18〜30歳になるまで)
  • 追加保険が負担するのは、「治療」だけ、もしくは「矯正」だけと限定している保険会社もあるので確認が必要
  • スイスで子どもが歯列矯正する場合の費用は2000〜12000スイスフラン(約27万〜160万円)

*1スイスフラン=132.89円で計算(2022/04/10のレート)

【海外子どもの歯列矯正】スイス在住わが家の失敗談:追加保険はお早めに

【海外子どもの歯科矯正】スイス在住わが家の失敗談:海外では追加保険条件確認はお早めに。スイスフランのお札の画像

以下に、大出費となったわが家の歯列矯正失敗談の経緯をお話ししようと思います。

【海外子どもの歯列矯正〜スイス編】歯並びの綺麗さが注目の的だった娘

【海外子どもの歯科矯正〜スイス編】歯並びの綺麗さが注目の的だった娘

娘が0〜6歳までわが家のお隣さんだったマダムは、言語聴覚士、そして息子さんが歯医者さん。

娘の誕生直後から「おしゃぶりは歯並びに悪い影響を与えるから、初めからできるだけ避けて」というマダムと息子さんのご忠告に従ったおかげでしょうか。

ウチの娘は「まぁ〜、この子は歯並びがキレイ!」と、見知らぬ方にもほめていただくことが多かったのです。

私がデンタル・クリーニングのために歯科医院を訪れる際、娘の歯のチェックも同時にお願いしていたのですが、娘は歯医者さんを愛する非常に稀な人間(笑)。

幸い虫歯ゼロで成人することができた娘は、「えらいね~、歯磨きをキチンとしているね」といつも歯医者さんにほめられ、ごほうびにシュガーレス・ガムをたくさんもらえるので、歯医者訪問のたびにワクワクしていました。

【海外子どもの歯列矯正〜スイス編】娘の歯並びに感謝。追加保険未申請

【海外子どもの歯科矯正〜スイス編】娘の歯並びに感謝。追加保険未申請。歯の模型と計算機

娘が成長するにつれ、歯医者さんでのおほめの言葉は、「歯の綺麗さ」プラス「歯並びの良さ」にも拡張されていきました。

毎年、健康保険の新契約期(スイスでは各個人で契約が必要)には、「お子さまの歯列矯正で痛い出費を防ぐために!!」のような宣伝文句のパンフレットが同封されていました。

でも、「歯並びが綺麗」のセリフを歯医者さんから常々聞いていた私たち両親は、「ウチは大丈夫。ついてたわ〜」と追加保険への申請をしないまま。

他の親御さんたちからも、「お宅のお嬢さんは、歯並びが綺麗だからいいわね〜。ウチは3人だから大変よ」なんて言われて、時は過ぎていったのです。

【海外子どもの歯列矯正〜スイス編】歯並び美人の娘、突如矯正必要診断

【海外子どもの歯科矯正〜スイス編】歯並び美人の娘、突如矯正必要診断。矯正器具をつけた少女の笑顔

娘が12歳になったある日の歯科医院訪問時のこと。

「サリーちゃんは12歳か…。じゃあ、矯正歯科専門の先生に、一度検診をしてもらおうか」と、わが家のお抱え歯医者さんが信じられない発言をしたのです。

「これまでずっと『歯並びが綺麗』って、ほめていたのは先生なのに、どうして?」とあわてた私。

すると先生は、「見た目では、おそらく歯列矯正は必要ないと思う。だけど、僕は専門外だから、やはり一度専門家の意見を仰ぐべきだと思うし…」と、何やら奥歯に物が挟まったようなコメント。

続けて、「でもユキさん考えてごらんよ。やがてサリーちゃんが『ミス・スイス』の代表に選ばれたら、新聞や雑誌の一面に彼女の写真が大々的に飾られるわけで、そうなると歯並びはカンペキな方がいいでしょ」と気を取り直した先生。

先生の発言を受けて娘が、「先生!私、大人になっても『ミス・スイス』になんて絶対応募しないわよ」と反論したのですが、「いやいや、人生に絶対はありえないからね。モニカ・ベルッチだって、もし歯並びがガチャガチャならあんなスターにはなっていないから」って、先生の好きな女優さんがわかっても仕方がないんですけど?!

【海外子どもの歯列矯正〜スイス編】矯正歯科医は治療すべしと診断

【海外子どもの歯科矯正〜スイス編】矯正歯科医は治療必須と診断。矯正器具を手にする歯科医

お抱え歯科医から紹介状をもらって訪れた矯正歯科医院では、「私の医院では矯正の精密検査に、ベルン州でもまだ2台しかない最新の機械を使用しています。1台は私が兼務する大学病院にあって、個人医院ではここだけです。ほら、こんなことも…」と、完全に機械フリークのご様子で物珍しいテクニックの数々をご披露してくださった矯正歯科の先生。

娘用の歯列矯正追加保険が未加入だった私は、こんなに希少な先端機械を操る先生の治療費は、さぞや天文学的な費用になるのではないかと、ビクビク。

「娘はこれまで、わが家がお世話になっている歯医者さんからも『綺麗な歯並び』をほめられていたのです。ですから、矯正の必要はありませんよね?」と、私は畳み掛けるように話しかけました。

あいにくと、矯正歯科の先生の最新器具による診断は、娘の上下の歯の中心部分が、ミリ単位で一致していないとのこと。「今のうちに矯正しておかないと、成人してからもっと崩れたら、後悔しますよ。矯正するなら、今!」という血の凍るような診断を、先生は下したのでした。

あわてて保険会社に連絡を取り、子どもが12歳の年齢になっていても申請できる「緊急プラン」を申し込みましたが、矯正治療の1年目は自己負担というのが、お財布に最も優しい結論でした。

全然優しくないっつーの(怒)。

結局、娘が歯列矯正に要した期間は3年ほど。本人は歯並びに大満足しているので、終わりよければすべてよし、と考えるようにしています。

・・・というわけで、特に歯列矯正治療が頻繁に行われる海外にお住まいのご家族の場合、早めに健康保険会社に問い合わせをして、できるだけお得な解決法をお探しになることをオススメします。

【スイス在住わが家の歯列矯正費用失敗談から得た教訓】
「この子は歯並びが綺麗」という歯科医のお世辞を真に受けてはいけない。
歯列矯正治療の健康保険条件を早めにチェック!

みなさま、どうぞわが家の二の舞を演じないように、お気をつけくださいね。

整った歯列だけではなく、お子さんが健康な歯の持ち主として成長するためのサポートも、親から子どもへの大切な贈り物。脳の活力を上げる「噛む力」が育つように、虫歯ゼロで成人した娘の育児で私が心がけていたことも、よろしければご覧ください。

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ちなみに現在でも、私たちは懲りずに同じお抱え歯医者に通っています。

「アハハ、サリーちゃんの追加保険未加入だったから矯正費用が高くついたって、ご両親がお怒り?これは、お詫びのしるし」と、娘に大量のシュガーレス・ガムをプレゼントしてくれたけれど、割に合わないわよ、H先生!

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