スイスの広大な草原と放牧牛のコンビネーションは、まさにのどかさの象徴。
スイスのハイキングコースで、放牧牛に遭遇する確率は、ほぼ100%なのですが、実は毎年、放牧牛によるハイカーへの傷害事故が発生している事実をご存知ですか?
「ハイカーにとって、牛は熊より危険」というのは、私の潜伏地・スイスでハイキング愛好者がよく口にするセリフで、コロナ以前は年間3〜5件だった負傷事故は、ハイキング・ブームとともに、年々上昇の傾向にあると、現地のメディアがしばしば報じています。
けれども、牛は本来穏やかな性格なので、「牛が嫌がること」さえ把握しておけば、放牧牛との遭遇を恐れる必要はありません。
スイスの大自然の中でのハイキングを満喫できるように、大切なポイントを以下にまとめましたので、ぜひご旅行の前にお目通しください。
【この記事でわかること】
- 放牧牛へのエチケット:ハイキングで人間が注意すべき6つの心得
- 万一の攻撃に備えて:放牧牛の攻撃をかわすための3つの秘策
ある日森の中、放牧牛に出会ったら…:注意すべき6つの心得
- 牛からできるかぎり離れた場所を歩く →スイスで推奨されているのは、20mの距離
- 静かにゆっくりとした動きを心がけながら、牛から速やかに離れる
- 牛とのアイコンタクトを避ける
- 牛をなでる・草を与える・追いかけるなどの行為は禁物
- 牛の「危険信号」に注意を払う:たくさん鳴く、頭を上下に動かす、足を踏み鳴らすなど
- 子牛がいる場合は最も危険なので、牛の親子には特に注意を払う
また、日本からの旅行客であれば、該当するケースは稀かと思いますが、犬を連れてハイキングしている場合、犬にリードをつけ、牛に向かって吠えないように心がけることが大切です。
放牧牛が攻撃する姿勢を見せたら、どうする?効果的な対応策3つ
- 落ち着いた声で牛に話しかける
- 物を地面に投げて牛の注意を逸らし、その間に逃げる:ただし、バタバタした動きは避けて!
- 高低差のある場所の場合、上の方に向かって逃げる:牛は高いところへ登るのは、低いところへ下りるよりも苦手なため
ある日スイスの森の中、放牧牛の群れに出会ってビビった私の体験
グリッチアルプからミューレンまでのアルペンハイキングコース(=上級者向きだけど山登りの装備は不必要なコース)のルートを、楽しく歩いていたときのことです。
岩がゴツゴツある細い山道を上り切り、目の前に広大な草原が展開したと思いきや、ハイキングルートのど真ん中で私たちを待ち受けていたのは、放牧牛の群れ。
30〜40頭の牛たちが、あっという間に私たちを包囲して、しかも通常よりも鳴き続けているから、怖いのなんの。
ちょうどその直前、ハイカーのグループが放牧牛に攻撃され、病院に搬送されたというニュースがスイスで報道されたばかりだったので、夫と私は焦りまくり。
偶然、私たちの後からやってきて、同じく牛の包囲網の真っ只中にいたシニアのカップルが、「昨日、『放牧牛に遭遇する際の注意点』を、私たちが所属するハイキングクラブで練習したばかりなの!だから、一緒に牛から逃げましょう!」と声をかけてくださったので、事なきを得たのです。
この方たちが、「群れの後方に、子牛が何頭かいるから、とにかくそこからいちばん離れましょう!牛と目は合わせないで、ゆっくり動いて!」と、この記事内でご紹介した注意点をひとつずつ、私たちに指示しながら、しかも牛たちには「あなたたちの場所をちょっと通らせてくださいね。何もしませんよ〜」と、落ち着いて話しかける神対応を披露。まさに、救世主!
でも、無事に牛の群れから解放された後、「怖かったね〜」と、4人とも興奮が冷めやらず、お昼ご飯をアルメントフーベルのレストランで、ご一緒したほど。
救世主のおふたりは、早速ハイキングクラブでの「放牧牛との遭遇訓練」を提案したお仲間に連絡を入れて、練習の効果を報告していました。
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SNS受けするからと、スイスアルプスの草原で放牧牛に近づいて自撮りをしていた観光客が牛に突かれた動画も、最近話題になったばかり。
私のように、意図せずにハイキングコースの真ん中で、放牧牛に出会うこともスイスでは日常の風景なので、今回の記事でご紹介した「放牧牛遭遇時の心得」が、お役に立てば幸いです。
楽しいスイス旅行になりますように🎵