【実話】小学生に食事摂生を強要!コンクール重視のバレエ教室は危険

スイスライフ

わが家の娘が、13年もの間、ほぼ毎日のペースでクラシックバレエのレッスンを楽しんでいるのは、偶然にも大変善良なバレエ教室に出会えたおかげです。

一時期、別のバレエ教室に属していた生徒さんが大量に、娘のお教室に転入してきたことがありました。問題のあるバレエ教室に、お嬢さんを通わせていたお母様から私が伺ったのは、信じ難いお話でした。

今回の記事のテーマ

コンクール重視のバレエ教室がはらむ危険【スイスでの実話】
教室の名声ファースト/生徒の未来は興味なし

同じバレエ教室出身の子どもたちは体格まで同じ【極細・極小】

バレエ教室のレッスンを受ける子どもたち4人

娘が通うバレエ教室では、生徒の年齢とレベルごとに適したレッスンが行われるように、いくつかのクラスが設置されています。

娘が12歳だったときの出来事です。バレエ歴5年目で、週に3〜4回のレッスンを受講していた娘のクラスに転入してきた生徒さんたちを見た私は、違和感を覚えました。

研ぎ澄まされたテクニックで踊る転入組の少女たちは皆、同一の極小・極細の稀に見ないスタイル語弊があるかもしれませんが、全員の動き方だけではなくスタイルが、クローン人間のように統一されていたのです。

「ウチの子より上手い子が入ってきてしまった」とかの嫉妬ではなく、ありえないものを見たショックを受け、私を含めたお迎えママは皆、絶句。それほど転入生たち全員が、まるで同じスタイルをしていたのです。

まもなく、転入生は全員(約15名、年齢は8〜16歳)、同じバレエ教室に通っていた子どもたちだということが判明します。

バレリーナ向きの容姿で才能のある子の親が陥りやすい罠

バレリーナ向きの容姿で才能のある子の親が陥りやすい罠。舞台上のバレリーナたち。

転入組がバレエ教室に来るようになってから数週間後、転入生のひとり・Eちゃんとお母様がウチに遊びにきました。

たまたま近所に住んでいたこと、そしてEちゃんが娘の小学校と姉妹校にあたる私立学校に通っていたため、共通の友人もいたことから、すっかりふたりは意気投合。でも、親同士は面識がなかったので、Eちゃんのお母様もご一緒にと、お招きしたのです。

Eちゃんのお母様から伺った悪徳バレエ教室のお話は、想像を絶していました。

Eちゃんが悪徳教室でバレエを習い始めたのは、3歳のとき。

プロを目指す場合、バレエの残酷な点は、生まれつきの骨格が才能以上に意味を持つことではないか、と私は考えさせられることがしばしばあるのですが、Eちゃんは天性のバレリーナ体型(骨格が華奢で手足が長い)。おまけに、お顔はフィギュアスケートのザギトワさんのようなキュートさ。

バレエに夢中になり、レッスンに励んでいたEちゃんは、小学校入学時に、悪徳教室の経営者である先生から「コンクール参加予定の生徒枠」にスカウトされます。

毎年、フランス・ドイツ・アメリカなどのバレエコンクールに参加/入賞する生徒を輩出している悪徳教室。Eちゃんも、このころには「大きくなったらバレリーナになりたい」と夢を持つようになったため、親御さんはEちゃんがコンクール参加生徒に選ばれたことを喜び、できる限りの支援を誓いました。

コンクール参加組にスカウトされた子どもたちは、先生が個別にみっちり計画を立てたレッスンと、厳しい食事と飲み物(なんと水まで!)の制限を強要されたとか。

それでも、親御さんの意志で

  • 学校の定期テストを受けるために、バレエのレッスンを休ませる
  • 喉が渇くと訴えるEちゃんにお水を飲ませる

ことが何度かあり、そのたびに先生から叱責を受けたと言うのです。

「食事は問題にならなかったの?」という私の問いに戻ってきたのは、さらに衝撃的な答え。

「先生が、レッスンのたびに『また太った!』と肉をつまんでくるから、Eは食欲そのものを感じないようになっていたの」と話すEちゃんのお母様。

娘が夢を叶えたいなら、先生の言う通りにしなければ…と、まるで洗脳された日々を過ごしていたそうなのです。

Eちゃんが、ヨーロッパのいくつかのコンクールで入賞したことも、後から考えると歯止めが効かなくなった原因だ、とお母様は話していました。

悪徳バレエ教室は自分の名声ファースト/子どもの才能は使い捨て

悪徳バレエ教室は自分の名声ファースト/子どもの才能は使い捨て

Eちゃんの親御さんが「洗脳から目覚めた」のは、同じ教室に通っていたコンクール組の年上の生徒の体験がきっかけとなりました。

その生徒さんは、プロを目指してバレエ団のテストを受け始めていたのですが、どこにも採用されない。不合格の原因は、身長が低すぎるためでした。

ヨーロッパでは、プロのバレリーナになるためには165cmくらいの身長がないと、難しいと言われています。

しかし、この悪徳教室では、育ち盛りの時期に極端な食事摂生を生徒に押し付けているため、9歳ごろからコンクールの常連だった生徒たちは皆、極細・極小のままで成長するのです。少なくとも、私が目にした転入生たちは、16歳でも140cm台の身長の少女ばかり。Eちゃんも、13歳で130cmあるかないかの超小柄な身長でした。

それまでバレエ教師の意見を鵜呑みにしていたEちゃん家族は、このときになってようやく、バレエ教室が作成している食事メニューを小児科医に見せ、助言を仰ぎます。当然のことながら、小児科医はバレエ教室の食事摂生法に猛反対

子どもがコンクール組の親たちはEちゃんご家族と同様に、この時点で次々と目が覚め、バレエ教師に話し合いを求めました。

「コンクールで入賞しても、プロになれないのなら意味がない」と問いただす親たちに向かい、悪徳教師は悪びれずに、「コンクールで活躍できたのは私のおかげ。みんないい夢が見られて、よかったでしょ?実際、プロになれるのはひと握りだし」と、発言したそう。

話し合いは決裂し、その結果、悪徳教室のコンクール組だった生徒が全員、娘の通うバレエ教室に転入してきたというわけだったのです。

「結局、あのバレエ教室は『生徒の才能の育成』ではなく、自分たちの名声のために、子どもたちをコンクールに利用して、使い捨てていたの。子どもに良かれと思ってしたことが、こんな結果になるなんて…」と、悔やむEちゃんのお母様に、私はかける言葉が見つかりませんでした。

娘のバレエ教室に転入してから2年後、踊ることが楽しくなくなったEちゃんは、バレエを辞めてしまいました。その後、新たな進路が決まらずに、Eちゃんはしばらく迷走してしまいますが、今では新しい夢を見つけて、元気な様子なのが救いです。

ちなみに、この悪徳教室では、トウシューズの練習を4歳でスタートしていたそうです。

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信じられないことですが、娘のバレエ教室のどの年齢のクラスでも、目立って背が低くて細い子は全員、悪徳バレエ教室の出身者だったので、保護者の間で「何をすれば子どもの成長をあんなに極細・極小で止めておくことができるのか」と話題になっていたほど。

けれども、子どもを大切にしてくれる指導者に巡り会えれば、クラシックバレエは毎日の生活に数えきれないプラスアルファを与えてくれる、素敵なスポーツです。

安心して子どもを預けることができるバレエ教室を探すための目安として、私が保護者の立場から作成したチェックリストを、よろしければご参照ください。トウシューズの練習開始時期に関する情報も、記事に含まれています。

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