なにより個人の自由と自主性を尊重するスイスにおいて、学校での服装規定は、大騒動の発端になりがちなテーマ。
けれども制服のないスイスの学校で、「学校にふさわしくない服装」を定めるルールがないと、特にティーンエイジャーの服装がエスカレートしてしまうのは自明の理。
そこで今回の記事では、スイスの学校で禁止されている服装のいくつかの例を、私の親としての体験談を交えてご紹介していきます。
- スイスの学校で服装規定は必要なのか?データで見る大人の意見
- 【服装規定】スイスの学校で禁止されている格好の例
- 【スイスの学校で禁止されている服装】丈が短いスカート/ホットパンツ
- 【スイスの学校で禁止されている服装】下着の露出
- 【スイスの学校で禁止されている服装】スケスケの素材
- 【スイスの学校で禁止されている服装】胸元のカットが深い
- 【スイスの学校で禁止されている服装】ハイヒール
- 【スイスの学校で禁止されている服装】お腹と背中の露出
- 【スイスの学校で禁止されている服装】タンクトップ
- 【スイスの学校で禁止されている服装】メッセージ付きのTシャツ
- 【スイスの学校で禁止されている服装】迷彩柄
- 【スイスの学校で禁止されている服装】野球帽/フーディーを授業中着用
- 【スイスの学校で禁止されている服装】ふしだらな印象を与えるジーンズ
- 【スイスの学校で禁止されている服装】スウェット素材のパンツ
- 【スイスの学校で禁止されている服装】規定に違反するとどうなる?
- 【服装規定】青少年が成人してから損しないルール習得のお手伝いが理想
スイスの学校で服装規定は必要なのか?データで見る大人の意見
「学校での服装規定に関して、あなたはどう思いますか?」 回答者7689人
- 青少年は自由が必要なので、服装規定はいらない 45%
- 「適切な服装」を理解するために、規定は必要だ 55%
参照サイト:スイスの公共放送SRF <So gehen Schweizer Schulen mit aufreizender Kleidung um>(更新日2021/11/02)(閲覧日2022/07/18)
反抗期のティーンエイジャーを抱える親の立場からしてみると、どうせ言うことを聞かないであろう禁止令を親が出すより、学校側が指定してくれている方が、楽だという点はあるかもしれません。
ムダな喧嘩はひとつでも減って欲しいという、親の本音です。
【服装規定】スイスの学校で禁止されている格好の例
- 丈が短いスカート/ホットパンツ
- 下着の露出
- スケスケの素材
- 胸元のカットが深い
- ハイヒール
- お腹/背中の露出
- タンクトップ
- メッセージ付きのTシャツ
- 迷彩柄
- 野球帽/フーディーを授業中に着用
- 洗いざらし/体にフィットしすぎ/穴ぼこだらけのジーンズ
- スウェット素材のパンツ
では、ルール内容の解説をしていきますね。
【スイスの学校で禁止されている服装】丈が短いスカート/ホットパンツ
長さの目安は、太ももの中ほどに届く丈であれば、OK。ただしピッチリしすぎのデザインは禁止とのこと。
ところで歌手のカイリー・ミノーグさんがMVの「Spinning Around」で着用していた金色のホットパンツ、現在ではオーストラリアのアーツ・センター・メルボルンという博物館に収蔵されているんですって。
歌手の小林幸子さんが紅白で使った衣装も博物館で収蔵すれば…、いや、かさばるサイズだから、博物館で展示しにくいのでしょうか。
【スイスの学校で禁止されている服装】下着の露出
例外:ボートカットのデザインで、襟元からブラの肩紐が出てしまうのは許容範囲。
特に男子の場合、太いジーンズが落ちそうな履き方で(←私には履き方の名称が不明)、腰のところから下着が見えてしまうのはNG。
【スイスの学校で禁止されている服装】スケスケの素材
あみあみになっているメッシュトップスや(←名称を調べました)、生地が薄くて透けてしまうものだけを着用するのは、禁止。
下にTシャツを着用して、あみあみを重ね着すると、ひだまりでお茶を啜っているおばあちゃまを私は連想してしまうのですが、あれはあみあみの柄が微妙に違うのかしら。
【スイスの学校で禁止されている服装】胸元のカットが深い
首から手ひとつ分のところまでの深さのカットであれば、OK。
襟元のデザインは一般的に、Vネックはダメと見なされる確率が高いようです。いちばん安全なのはラウンドネック。
微妙なところのボート・スクエア・ハートネックはOKなようです。
私、アパレルの人間ぽくありません?すべてはグーグル様のおかげです(笑)。だって、私は「タートルネック」ではなく、「とっくり」で育った昭和化石。皆様に意味が伝わるように、キチンと検索しました。
【スイスの学校で禁止されている服装】ハイヒール
例外:ヒールの高いエスパドリーユ。
はは〜ん、だからイギリスのキャサリン妃は、エスパドリーユでお出ましになる機会が多いのかしらと納得(おそらく全然関係ない)。
【スイスの学校で禁止されている服装】お腹と背中の露出
いわゆるへそ出しルックと、背中が大きく開いているデザインは、NG。
【スイスの学校で禁止されている服装】タンクトップ
推奨されるトップスの目安として、「脇毛が見えない」という注意書きがあるので、性別に関係なく、肩を丸出しにするデザインはダメという意味のようです。
ところでスイスの女性は、脇毛処理をしないまま、タンクトップをお召しになる方もチラホラといますので、この服装規定は大人社会でも適用してくれたらと、個人的には思います。ええ。
【スイスの学校で禁止されている服装】メッセージ付きのTシャツ
Tシャツのメッセージがきわどい、または反社会的な印象を与える内容である場合、「どこまでが学校内での許容範囲なのか」という議論に発展しないように、初めから「メッセージ付きTシャツは全面禁止」となっているようです。
エリザベス・ジョージ著作のミステリー小説「リンレイ警部シリーズ」に登場するハーヴァーズ刑事が、もしスイスの学校に通っていたなら、退学処分は間違いなし、ということになります。←ファンにしかわからない内容で、すみません。なにしろ私はミステリーオタクなもので…。
【スイスの学校で禁止されている服装】迷彩柄
俗にカモフラージュ柄とも呼ばれる、ミリタリーファッションの生地で作られた洋服は、禁止とのこと。
ただし大学では、兵役義務から講義に直行、または講義から兵役の駐屯地に向かう学生もいたので、彼らは本物のミリタリーのユニフォームのまま、大学に来ることもありました。
通常彼らは、講義開始時に「今日は軍服で講義を受けてもよろしいでしょうか」と、教授に口頭で確認し、OKが出されていました。
軍のユニフォームよりも、私がビビったのは、ライフル銃。
スイスで兵役義務遂行中の若者たちが携帯しているのは小型のピストルではなくてライフルなので、初めて見たときには驚きました。
大学の教室の隅にライフル(時には数丁)がゴロゴロ転がっている環境だと、「どうも講義に集中できない」と学生は皆ぼやいていましたが、スイスでは兵役が義務なので、仕方ありません。
【スイスの学校で禁止されている服装】野球帽/フーディーを授業中着用
授業中での帽子着用に関しては、娘が通っていた高校では容認されていたので、私自身驚いた経験があります。
足の怪我で松葉杖を使用していた娘をお医者様に連れて行くために、早退する彼女を教室まで迎えに行った時のことです(自分で重い荷物を持てなかったので)。
教室内にいた数人の生徒が、なんと帽子をかぶったままで授業を受けていたので、「先生は何もおっしゃらないの?」と、娘にたずねました。
それぞれの先生方は、帽子をかぶったままの生徒に、「大人の社会では、帽子を脱がずに人の話を聞く態度を、礼儀に欠けていると判断するのが一般的。そのことを踏まえた上で、帽子を脱ぐのか、そのままでいるのかを自分で判断するように」とコメントしていたそうです。
娘の学校では、帽子/フーディをかぶったままで授業を受けても、懲罰はありませんでした。
【スイスの学校で禁止されている服装】ふしだらな印象を与えるジーンズ
洗いざらし/体にフィットしすぎ/穴ぼこだらけののジーンズだと、先生にお咎めを受けるケースに該当するようです。
娘の母校が服装規定より個人の自由を尊重するタイプだったのかもしれませんが、「ちょっと、あなたのお宅には『防虫剤』がないわけ?」と口を挟みたくなるほど、ボロッボロの穴あきジーンズが生徒たちに流行っていたこともありました。
いいえ、私は思っただけで、口出しはしませんでした。ティーンエイジャーと口論になるのは、自分の娘だけで十分ですもの。
【スイスの学校で禁止されている服装】スウェット素材のパンツ
スウェット素材のパンツは「だらしがない」から生徒の服装として禁止れされるべきか否かをめぐり、バーゼル州は「禁止はできない」と判断。
それでもスウェット素材のパンツを生徒が着用して授業を受けることを反対したい学校側は、現代的なファッションの流れを反映した新しい服装規定を、生徒が中心となって作成することを提案。
生徒さんたちは、「月1でスウェットパンツOKの日」などのアイデアを取り入れた規定を、学校側と調整する意向のようです。
しかし、そこまでスウェットパンツにこだわる理由が、私にはわからない。これは私がシニア世代である証なのでしょうか。
【スイスの学校で禁止されている服装】規定に違反するとどうなる?
- たびたび服装規定に違反する生徒は、親が呼び出しを受ける
- 校則違反として謹慎処分(←成績に直接影響)
- 違反当日:生徒はXXLサイズのTシャツを服の上に着て、その日1日過ごす(一部の学校のみ)
上記の3点目は、ジュネーブ州で生徒たちがデモをしたほどの騒動となりました。
学校の服装規定に違反しているとみなされた生徒は、「適切な服装をしています」というメッセージが印刷された、「恥のTシャツ」と呼ばれる特大Tシャツを着ることを強制されたそうです。
その強制に従わなければ、校則違反で罰則を受けるという学校側の措置に反対した生徒・保護者・応援団体がデモで抗議を認め、ニュースでも報道されていました。
ヴォー州では、学校側が「恥のTシャツ」着用を生徒に強制する行為を禁止すると、決定が下されました。
しかし、メッセージ付きのTシャツって、禁止事項のひとつではないのかしら…。
【服装規定】青少年が成人してから損しないルール習得のお手伝いが理想
私が通っていた附属高校では、服装規定に合わないからと、教師のひとりが大きなハサミを手にして生徒を追いかけ、少しでも前髪の長い生徒を捕まえてはザクザク・ギザギザに前髪を切る野蛮な行為が行われていたのですが、おそらく令和の現代では、大問題になったのではないでしょうか。
強制は禁物だと個人的には思うのですが、あまりにも不適切な服装やマナーのまま大人になってしまうと、いちばん損をするのは子どもたち。
子どもの心を傷つけない形で、社会に出てから青少年が困ることのないようなルールを身につけるお手伝いを、大人ができれば、理想的ですよね。
とはいえ、わが家でもたびたび、喧嘩にはなりました。ティーンエイジャーの親はツラい(涙)。
<参照サイト>
SWI <ヴォー州、「恥T」の着用強制を禁止>(更新日2020/10/07)(閲覧日2022/07/18)
SRF<So gehen Schweizer Schulen mit aufreizender Kleidung um>(更新日2021/11/02)(閲覧日2022/07/18)
SonntagsZeitung <Trotz Hitzwelle: Mäschen dürfen nicht zu viel Haut zeigen>(日曜新聞紙版2022/07/17)