【論文の不正引用】ドイツでは現職大臣が辞任するほど深刻な問題

スイスライフ

参考文献の記載不十分は、論文作成において、あってはならないこと。

例えばドイツでは、博士論文で他人の文章を正しく記載せずに引用した現職大臣の首が、メルケル政権時代で3回も飛んでいます。

・・・って、いったい何人の政治家が、盗作した論文で博士になっているのか、その点も疑問です。

【論文の不正引用】メルケル時代のドイツ現職3大臣辞任の原因

【論文の不正引用】メルケル時代のドイツ現職3大臣辞任の原因。マイクの前で頭を下げる男性。

16年間続いたアンゲラ・メルケル元ドイツ首相の政権時代、現役閣僚が辞任に追い込まれた最も多くの理由は、実は論文盗作問題なのです。

  • 2011年 防衛大臣 Karl-Theodor zu Guttenberg
  • 2013年 教育大臣 Annette Schavan
  • 2021年 家族大臣 Franziska Giffey

<参照サイト> Tagesanzeiger: Doktorarbeiten unter Verdacht(更新日2021/05/20(閲覧日2022/03/04)

3人とも、論文の不正使用が明るみに出た後、博士号剥奪と大臣職辞任の運命を辿っています。

特に、Karl-Theodor zu Guttenberg氏は記者会見で「論文盗作は事実無根の批判」と堂々と説明。釈明会見からわずか2週間、盗作が確認され博士号剥奪と大臣辞任に至るまでの期間に、責任を職員になすりつけるなど、言い訳発言が続いたため、大騒動を巻き起こしました。

またFranziska Giffey氏は、2021年に大臣職を辞任した際、当時のメルケル首相がGiffey氏の政治家としての功績を讃えたほど、社会への貢献度が認められていた人。

学位剥奪と大臣辞任は受け入れたGiffey氏が、それでも政治家としては辞職せず、2021年の12月からベルリンの市長を務めていることも、メディアで非難の的になっていました。

【スイス】高校以上の教育機関では論文不正行為対策にソフトウェア導入

私が在籍していたスイスの大学では、論文の不正引用をチェックできるソフトウェアが使われていました。

ソフトウェアの導入時、IT部門担当者が使い方をプレゼンテーションしたことがあったのですが、その際に例として選ばれたのが、某教授の論文。

クリックした途端、「不正引用の疑い」を示す赤線が至る所に引かれ、会場がシーンと静まり返ったことを、今でも覚えています。

自分たちが悪いことをしたわけではないのに、「いけないものを見てしまった…」という思い。

会場からの帰り道、「あの時代に生まれた教授は、楽だったよね」「今ではソフトウェアが敵だもの。私たち、貧乏くじ引いてる?」なんて、博士課程の学生たちはゲンナリしながら、帰路に着いたと記憶しています。

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スイスでは、大学への進学率は、人口の約20%。ですから、大学進学予定の学生たちが学ぶギムナジウム(高校)でも、正しい論文の引用方法が在学中から身につくように、指導されています。

娘の母校では指導方針の一環として、卒業論文だけではなく、学校側に提出する必須レポートはすべて、不正引用対策のソフトウェアで、内容がチェックされていました。

一度、娘の同級生のひとりが、「ソフトウェアがどこまで不正を見破れるのか、あえてチャレンジ」と、わざと不正引用だらけのレポートを提出したことがあったのです。

あまりにもあからさまに不正引用していたため、担任の先生が「キミ、わざとしたでしょ?」と学生の真意を見破ったのが幸いでした。本来なら停学か退学処分の大騒ぎになるところ、1週間教室掃除の罰という粋な計らいで済ませて一件落着、なんてこともありました。

悠仁さまの作文問題をドイツの女性誌も報道

女性自身が、悠仁さまの作文問題についてイギリスのメディアが取り上げている、と報道していたので、ドイツ語でネット検索してみました。

すると、ドイツの女性雑誌・Galaが、「秋篠宮の息子(原文のまま)に対する不正引用批判」というタイトルで、宮内庁からの作文問題に関する発表内容を、すでに報道していました。

<参照サイト> 女性自身:悠仁さま「研究者への道」に暗雲…海外メディアが大きく報道した“作文引用”問題の波紋 (更新日2022/03/04)(閲覧日2022/03/04)

<参照サイト> Gala:Plagiatsvorwürfe gegen den Sohn von Kronprinz Akishino
(更新日2022/02/25)(閲覧日2022/03/04)

Galaの記事内容は、作文の不正引用が「訂正の必要あり」、つまり引用に間違いがあったのは事実と判明したにもかかわらず、悠仁さまが一度受賞された賞を辞退するかどうかが未定、という事実に引っかかっている、という印象を受けました。

上記の大臣辞任の件で述べたように、ドイツでは、論文の不正引用が明らかになった場合、不正引用により手に入れたもの(例えば博士号や大臣のポスト)を速やかに手放すことが通例。ですから、賞の辞退をすぐに発表しない宮内庁からのコメント内容は、ドイツ文化の視点からは、理解し難いのでしょう。

お隣のスイスに住んでいるのに、ドイツ人気質になっているのかしら、私(笑)。

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