日本育ちの私にしてみると、スイス人の愛校心は、ゼロに等しいレベル。スイス人が愛校心に無縁なワケと私の体験談をまとめました。
日本人は愛校心に燃えているのか?/でもスイスは冷え冷え
ハリウッド映画や海外ドラマでは、登場人物が自分の出身大学のロゴ入りスウェットを着ているシーンを、度々見かけますよね。
かくいう私も、フェリスのカレッジリングをいまだに所有し、想い出の小箱に保管しています(箱の蓋にはクルクル回るバレリーナはついていません)。
そして桐谷美玲さんがフェリス卒と知ると、「あの美人オーラはフェリスに漂っていた空気だわ」などと、ほくそ笑んだりしています(←お嬢様がすることではない)。
同じ学校や、イメージが似ている学校の出身者同士でシンパシーを感じる体験をした日本育ちの私にしてみると、スイス人の愛校心は、ゼロに等しいレベルです。
【スイス人は愛校心に無縁】ブランド化皆無/進学の決め手は学部と環境
スイス人から愛校心があまり感じられない理由を、私の学友の発言と、娘のお友だちが進学先を決定した理由から考えてみました。
【スイス人は愛校心に無縁】大学のブランド化がされていない
日本の九州とほぼ同じサイズのスイスには、12校の国公立大学があります。
スイスでも、例えばチューリッヒはスノッブ、ベルンは田舎者(私の居住地)、バーゼルはオープンマインドなどと、現地の人々は各州によって異なる特性をからかいあったりもするのです。
けれども大学の特色が話題になった経験は、スイス漂流四半世紀のうち大半を大学で過ごした私でさえ、一度もないのです。
学問重視の大学に進学するのか、職業実習の道を選ぶのかはよくテーマになります。でも、大学はどこでも似たようなものでしょ、みたいな感じですね。
大学のワッペンは、授業料の請求書や正式書類で見かけたけれど、スクールカラーはあったのかしら…。出身校でもない慶應義塾大学の紺と赤は即答できるのに、スイスの自分の大学のことになると、さっぱりわからない(笑)。
【スイス人は愛校心に無縁】進学の決め手は学部と環境
別記事の【スイスの大学】進学率/進学目的でも記しましたが、スイスの人たちは「自分の適性と未来にとって、本当に役立つ能力を習得できる学校に進学する」ことに重きを置いています。
ですから、大学そのものの(ほとんど感じない)校風ではなく、学部と環境が進路決定に大きく影響を与えるのではないか、と想像されます。
学部で大学を選ぶケースには、ちょうど今、大学での進路を模索中の娘のお友だちが該当します。
彼女は、犯罪心理学に興味があるのですが、スイスのドイツ語圏では修士課程の副専攻科目でしか、犯罪心理学が学べないのです。でも、フランス語圏のローザンヌでなら学士から履修可能とわかり、彼女は現在考慮中です。
ドイツ語が母国語の人が、さらりと進学先をフランス語圏にスイッチできるのも、スイスのなせる技。私なんて、大阪弁への切り替えだってできないというのに。
また、環境からの大学選択という点では、例えば私が学士・修士時代に在籍していたフルブール大学は、ドイツ語とフランス語で単位が履修できる大学。
スイス東部出身者は、日常生活であまりフランス語を使う機会がないので、学問とフランス語の同時ブラッシュアップを兼ねてフルブール大学を選んだ、という学生がたくさんいました。みんな若いのに、わざわざ困難な道を選んですごいなぁ、と感心するばかりでした。
言語のマルチタレントを続々と生み出す、スイスのスゴ技言語カリキュラムについての記事はコチラです。
【スイス人は愛校心に無縁】バーゼル大学の先輩がなんとあの…。
私の出身校であるバーゼル大学には、超・有名人の卒業生がいます。ちなみに、バーゼルは1460年に設立されたスイス最古の大学です(卒業してから知りました)。
話がそれますけど、私の日本での母校・フェリス女学院は、日本一古い起源を持つ女子校/大学で、1870年開学(←どれだけ長くスイスに滞在しても、日本人だから愛校心バリバリなので、どうしても記入せずにはいられない)。
さて、そんなバーゼル大学の大先輩は、
- ヨハン・ベルヌーイ(微分の平均値定理の発見者)
- ダニエル・ベルヌーイ(流体力学のベルヌーイの定理/ヨハンの息子)
- レオンハルト・オイラー(「eiπ + 1 = 0」の等式を考案した数学者・天文学者)
- カール・グスタフ・ユング (精神科医・心理学者)
ベルヌーイ一家は多くの数学者を輩出したのですが、皆さんバーゼル大学で学んだのち、ご自身で教鞭をとられた経験もあるそうです。
そして、私が個人的にとっても驚いたのが、なんとユング心理学の創始者、カール・グスタフ・ユングもバーゼル大学の大先輩だという事実。
一応、私は心理学部の出身なのですが、誰ひとり「われらの大先輩・ユングによる分析心理の…」などと口にしていませんでした。
知らないのは私だけかと思って、同期に聞いてみたら「ユングはチューリッヒ大学じゃないの?」と私と同じ誤解をしていました。これって、早稲田の大隈重信と慶応の福沢諭吉を逆に覚えてしまうくらい、失礼極まりないことではないのかしら、となんだか申し訳ない。
それだけ、誰も大学という器にこだわっていなかった証拠なのかな、と思います。
【スイス人は愛校心に無縁】卒業時にグッズが購入できず失望…。
在学中は、大学のロゴ入りグッズを身につけている人は、誰もいなかった私のスイス大学生活。
けれども、図書館出入口の脇のガラス戸棚に、大学のロゴ入りTシャツ・スウェットと野球帽が、西陽にさらされて色がすすけた状態で、「学生課で販売中」という札と共に、私の入学時から飾られていました。
いよいよ修士が終わる段階で、ちょっとセンチメンタルになった私が、図書館司書の方に「ロゴ入り商品を購入したいのですが…」とたずねましたら、「え?そんなのあった?」という予想外のお返事が。
大学のロゴ入り商品は、家にあるタンスや見慣れたパートナーと同化して、毎日ガラス戸棚の横を歩いている司書の方には見えない存在になっていたようです。
でも親切な司書の方は、学生課にわざわざ問い合わせをしてくださいました。
ロゴ入り商品は、販売元である学生課でも忘れられた存在だったようで、「あの〜、そんなロゴ入り商品がどこにあるのかもわからないので、よければUBS(スイスの大手銀行)がプレゼントしてくれた、UBSロゴ入りのカランダッシュのボールペンを差し上げるわ」という信じられない回答がありました。
ええ、せっかくですから私、その超高級ボールペンを頂戴して、気休めにしました。書き味は最高(笑)。でも、私が記念に欲しかったのは、大学のロゴ入りスウェット。だって、それだけでウォーキングのときにものすごいスポーツウーマンになれるような気がしたんですもの。