福岡のお笑い芸人ノボせもんなべさんが、「髪モノマネ芸」でブリテンズ・ゴット・タレント(BGT)のゴールデンブザーを獲得!
日本のメディア報道によれば、ノボせもんなべさんは芸歴15年とのこと。
BGTの舞台で初のスタンディング・オーベーションを体験し、おまけに最上級賛辞のゴールデンブザーまで獲得と、良いこと尽くめで喜ばしい限り。おめでとうございます🎵
・・・けれども、実は今回のゴールデンブザーは、BGTルールを逸脱した異例の決断。
そしてこの「異例ゴールデンブザー」が、BGT視聴者に大きな波紋を呼び、イギリスのメディアがこぞって取り上げる状態となっているので、その背景について解説したいと思います。
ノボせもんなべの髪芸に笑いがどうにも止まらないBGT審査員アマンダ
「世界中の人々を笑顔にしたいから、日本から25時間のフライトでBGTにやって来ました!」と、舞台上で挨拶したノボせもんなべさんは、「Nabe(なべ)」とイギリス人にわかりやすいニックネームで自己紹介。
「ネクストミュージック、カモン!」のかけ声を使って、2023年のBGTで決勝進出を果たした、とにかく明るい安村さんと同様に、会場の全員参加型の雰囲気を作り上げたノボせもんなべさんの「髪モノマネ芸」は大ウケ!
「ひつじのショーン」・「テレタビーズ」と、イギリスで制作された作品をモノマネするアイデアは、お見事な作戦勝ちだと、個人的には思いました。
観客もノリノリで、司会者と審査員にもバカ受けの演技でしたが、特に審査員のアマンダさんは、ノボせもんなべさんが繰り広げる意外性だらけのパフォーマンスに、笑いが止まらない状態。
BGT開始当時から審査員を務めるアマンダさんが、これほど爆笑していた出場者の演技は、長年BGTファンである私でさえ思い出せないくらい珍しいケース。
そしてそのアマンダさんが、ノボせもんなべさんの演技にゴールデンブザーを押す結果となりました。
【BGT】ノボせもんなべの髪モノマネ芸:審査員コメント日本語超訳
- アマンダさん:「演技が本当に気に入ったわ。どんなに笑っても、笑い足りないくらい。普段の私なら、涙ながらにゴールデンブザーを押して、盛大なスピーチをするのだけど、今回は違うの。あなたが面白すぎて、完全に笑いのツボにハマったわ」
- サイモンさん:「BGT史上最も面白い出場者のひとりなのは間違いないんだけど、髪を使ってモノマネする人は、きみしかいない。天才的な可笑しさだった」
- ブルーノさん:「次に何が起こるのか全然わからなくて、毎回驚いた。きみは本当に可笑しい」
(ノボせもんなべさんが舞台を去った後で)
- サイモンさん:「彼は(ゴールデンブザーに)とってもビックリしていたみたい」
- アリーシャさん:「驚いたのは私よ!」
- ブルーノさん:「驚いたのは僕だよ!」
引用元:YouTube動画チャンネル Britain’s Got Talent <Nabe gets Amanda’s second GOLDEN BUZZER with HILARIOUS hair impressions | Auditions | BGT 2024> (閲覧日2024/05/13)
【BGT】ノボせもんなべのアマンダからのゴールデンブザーはなぜ異例?
別記事に綴りましたが、BGTでは通常、「ゴールデンブザー」は各審査員がシーズンに1度だけ押すのがルール。
けれども今回、ノボせもんなべさんにゴールデンブザーを押した審査員、アマンダ・ホールデンさんは2024年度のシーズンで、歌手のシドニー・クリスマスさんに対して、既にゴールデンブザーを授与済みだったのです(上の動画がそのオーディション)。
過去にも何度か、ルール破りで同じ審査員がシーズン内でゴールデンブザーを複数回押したケースがありましたし、またBGTボスのサイモンさんが、2024年はゴールデンブザーの複数回押しの可能性を示唆していたとは言うものの、ノボせもんなべさんへのアマンダさん2度目のゴールデンブザー押しは、観客・司会者・他の審査員にとって「予想外」の行動だったことが、彼らの反応からもうかがえます(気になる方は、最上部にあるノボせもんなべさんの動画、4:50〜からをチェックしてみてください)。
BGTを定期的に視聴している人には、彼らのビックリ状態が明らかなようで、例えばコチラ↓のオンラインサイトでは、司会者のアント&デックさんがゴールデンブザーに衝撃を受けた様子を記事にしています。
アマンダの掟破りゴールデンブザーが与えた衝撃:英国メディアの反応
イギリスのメディアでは、高級紙として有名な「インデペンデント」、英国最多の発行部数を誇るタブロイド紙「ザ・サン」、そして英国最古のタブロイド紙「デイリー・メール」のオンラインサイトなどが、BGT審査員アマンダさんがNabeさんの演技に押した、BGTルール破りの2度目のゴールデンブザーに関する記事を公開しているのですが、記事内容はあいにくと批判的。
新聞社のオンラインサイトは一様に、「Nabeさんの演技は、ゴールデンブザーに値する内容ではなかった」というBGT視聴者からの不満コメントに焦点を当て、「アマンダさんのせいで視聴者がショックを受けてしまった」旨の報道をしています。
BGTのゴールデンブザーは、回数に制限があるからこそ、毎回押されるたびに「この出場者より、あっちの出場者の方がゴールデンブザーに値する演技をしていたのに……」と、視聴者が不満を覚えることも、多々あります。
けれども、私が気になったのは、BGTの YouTube公式チャンネルによるノボせもんなべさん演技動画のコメント欄が、通常では考えられないほど多くの批判で埋まっていること。
気になったので、全コメントに目を通したところ、どうやらコチラ↓の出場者にはゴールデンブザーが押されなかったことに、腹を立てているBGT視聴者がたくさんいるようなのです。
【BGT】ノボせもんなべのゴールデンブザーが視聴者に批判される背景
コチラ↑の出場者、デニスさんとステファンさんは、偶然、ノボせもんなべさんと同日に、BGTオーディションに登場したご夫妻。
視覚障害者のおふたりはこの日、ピアノと歌唱のパフォーマンスを披露したのですが、演技前には「もしかしたらコメディアン?」と思うほど、機知に富むやり取りを審査員と交わし、しかもその会話の中で、デニスさんはがんの化学療法を終えたと告白。
明るく前向きな姿勢で人生の試練を乗り越えてきたであろうデニスさんとステファンさんのパフォーマンスには、彼らの素晴らしい生き方が反映されているようで、審査員のブルーノさんは落涙するほど。
観客たちも拍手喝采、審査員全員がイエスを出し、会場はとても温かいムードだったのですが、結局彼らにはゴールデンブザーは押されないまま、オーディションが終了。
その結果を不満に感じた多くのBGT視聴者が、たまたま同じ日にアマンダさん2度目の「異例ゴールデンブザー」を獲得したノボせもんなべさんの演技と、デニスさん&ステファンさんの演技を比較し、「ゴールデンブザーにふさわしいのはこちらの演技」と、批判の声を上げている様子が、両出場者のYouTube動画コメント欄から浮かび上がってきます。
【BGT】ノボせもんなべのゴールデンブザー獲得:一視聴者の意見
長年ファンであるゴット・タレント番組に出演する日本人出場者の方々を目にするたびに、愛国心をくすぐられ、大阪のおばちゃん的なやかましさで声援を送り、演技大成功の暁にはさらに大騒ぎしている私。
今回、爽やかサラリーマン風に登場したノボせもんなべさんの演技をBGTで初めて拝見し、普通だったらコンプレックスの原因になりがちな「ハゲ」を、ここまでサラッと嫌味のない自虐ネタにできるのって、スゴイなぁと感心しました。
同時に、スイス生活30年になる私には、「容姿に関するテーマは、ヨーロッパでは社会的タブー!」の意識が深く浸透しているので、「もしかしたらこのネタは、視聴者が引いてしまうかも……」と懸念を持ちました。
ですから、ノボせもんなべさんのパフォーマンスが観客と審査員に大ウケの様子を見て安心し、私も画面に向かって拍手を送っていたのですが、まさかゴールデンブザー案件になるとは思わなかったというのが、私の本音。
なぜかと申しますと、ゴールデンブザーが押される出場者の演技は、画面を通して会場の熱気が伝わってくるほど、「感動の嵐」を呼び起こすレベルであることが、ゴット・タレントの慣例だから。
ノボせもんなべさんの演技は、「最高にウケていた」のは間違いないのですが、会場にいた人々が「全員一致で史上最高の演技を見た!」と確信するレベルには達していなかったという印象を、司会者や審査員の「驚いた」発言と表情が、裏付けていると見受けます。
また、審査員のアマンダさんはこれまで、誰もが「押してほしい!」と心底願う出場者にしかゴールデンブザーを押さないタイプの方。
ですから、今回の「私の笑いのツボにどストライクの演技だったから、ルール破りになるけれど、2度目のゴールデンブザーをノボせもんなべさんにあげちゃう🎵」行動は、BGT関係者と視聴者が想像していなかったものであることも、大きな波紋が広がった原因のひとつではないかと、私は想像しています。
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何はともあれ、BGT出演&ゴールデンブザー獲得により、海外と日本での知名度が上がったノボせもんなべさんのチャレンジ精神と、自分が気にして凹みそうな点を、強みに変える生き方は、素晴らしいですよね。
ゴット・タレントに出演する人たちは皆、前向きな姿勢で人生と闘っている人たちだから、私はこの番組のファンなのです。
ノボせもんなべさんが、BGTセミファイナルでどんな演技を披露してくださるのか、今から興味津々です。