スイスでは5人にひとりが入れているほど、ポピュラーなタトゥーの存在。
だけど、オシャレなはずのタトゥーが、とんでもない内容だったと後悔することも・・・。
漢字文化育ちの私のまわりで起きた、悔やんでも悔やみきれないエピソードです。
【海外タトゥー実情】スイスアーミーナイフより万能なGoogle検索で文字探し
「ママ、ちょっといい?」
娘の猫撫で声を聞いて、何か頼み事にちがいないと思ったら、大当たり(笑)。
「この中から、ママがいちばん好きな言葉を選んで、順位をつけてくれる?」
見せられた写真には、哲学の本に書いてあるような言葉がズラリ。しかも、すべて素晴らしく美しい行書と草書の2パターンで記されている。
スイスに潜伏中の私、久々に目にした美しい文字を眺めて、ただうっとり。
「ママ、何ボーッとしてるのよ」
「日本の美に触れて感動してるところ。どうしたの、これ?」
なんでも、娘の友人がタトゥーを入れたいので、その言葉を選択中とか。
日本語ができないのに、よくこれだけ芸術的にしたためられた崇高な言葉を探し出せたものだ、と感心する。
「一生身につけるものだから、慎重に選び抜いたんだって」
「どうやって?」
「Google」
知ってはいたけど、Googleスゴイのね。
けれども念のため、日本人の私に言葉の意味と文字の美しさをチェックしてほしいと言う。
【海外タトゥー実情】娘の友人がGoogle検索で見つけた素敵な文字
*画像はイメージです。
「ママが選ぶNo.1にするって」
「ダメよ、自分でまず順位をつけたリストを送るように言って」
こんな大事な決断を、私ごときの好みで決定するなんて事態になったら大問題ですもの。大切なよそ様のお子さんですからね(すでに成人していても、昔からの知り合いは「子ども」のイメージでセーブしているので、カンタンに脳内変換できないの、私)。
幸い、娘の友人のいちばんのお気に入りが、私のNo.1と一致したので一件落着。
その日の午後には、腕に刻まれたタトゥーの写真と「ありがとう」のメッセージが送られてきた。
【海外タトゥー実情】タトゥー愛好者はスイスで5人にひとり
スイスでは5人のうちひとりが入れているほど、タトゥーはポピュラーな存在。
参考リンク
TAGBLATT : Jeder fünfte Schweizer ist tätowiert – doch eine Kehrtwende zeichnet sich ab (更新日2019年1月12日)
先ごろのオリンピックでも、外国人選手のタトゥーがいろいろ話題になっていたが、スイスでもごく普通のカタギの人たちがタトゥーを入れている。
例えば、学校の先生。
夏になって、ノースリーブを着ている先生の肩や腕にタトゥーを見つけたことが何度もあったし、修学旅行に同伴した先生の腕に、日本でこういうスケールのタトゥーを見かけたら、ビビりまくって半径5メートル以内には近づかないんじゃないか、と思えるほど立派なタトゥーが入っているのを写真で見て、意外性に驚いたりということが、スイスでは日常茶飯事なのだ。
今回、娘の友人(ちなみに彼も大学生。親御さんも堅い職業のご家族)がタトゥーの文字選びに慎重だったのには、ワケがある。
一生残るのはもちろんだが、ヨーロッパではせっかく痛い思いをしていれるタトゥーに、とんでもない文字を選んでしまった失敗・後悔体験談をよく耳にするのだ。
【海外タトゥー失敗談】タトゥーに入れた名前の当て字が意味するもの
ある夜のこと。まもなく深夜12時になるというのに、私の友人から立て続けにメッセージが送られてきた。
「ユキが寝ていても叩き起こしてって、友人が東京から電話してきてるの!」
この友人の友人は、とあるエアラインのスチュワード。
自分の名前を漢字で記したタトゥーを入れたばかりだった彼は、日本の大ファン。
東京へのフライトで一緒になった日本人クルーに、「見て! タトゥーのおかげで、僕はこれから自分の名前をいつでも漢字で書けるようになったんだ」と見せたら、とてもビミョーな反応をされたのだとか。
悪い予感がモクモクと心に広がって落ち着かないので、東京に到着後、すぐさま友人に電話し、私への連絡を依頼したらしい。
「ショッキングな内容でもかまわない。とにかく正直に、文字から受ける印象を伝えて!!!!!」
とのことだったので、恐る恐る添付された写真を見たら、そこには・・・。
【海外タトゥー失敗談】ビミョーな当て字を、さあどうする
写真には、「味蛙」の文字が。
そう、彼の名前はミカエル。
この当て字を、失敗と呼ぶべきなのか私にはわからないけれど、「ビミョー」な選択であることは確か。
「なんでタトゥーを入れる前に、私に聞いてこなかったのよ」と喉まで出かけたセリフを飲み込む。今更言っても、仕方がない。
『正直に』とお願いされていたので、私は読んだ通りの意味を伝え、「どこでこのタトゥーを入れたの?」とたずねた。
まさか、日本でとは思えない。いや、日本であってほしくないという想いで、私の心に不安な暗雲が立ち込めた。
だってせっかくなら、もっと素敵な当て字があるでしょうに。
友人から、コンコルド並みの速さで返事が来た。
「OMG!!!!! スイスのスタジオ!! 彼はベジタリアン!!!」
笑ったら失礼なのだけど、私は笑い転げたわ(この記事を書きながらも、思い出して涙を流している不謹慎な私)。
ショックを受けたスチュワードは、いっそのこと日本滞在中にレーザー処理でタトゥーを消してしまいたい、せめて相談したいと言う。
私がオススメのタトゥースタジオは東京にあるかと聞かれたが、私には縁のない世界なので、あいにくと力になれなかった。
結局、彼はスイスに帰国後かなり時間をかけてタトゥーを消していた。
「自分やパートナーの名前に素敵な当て字を見つけるビジネスを、スイスでスタートしようかしら?」と思いついたけれど、私の頭に浮かんだのは「夜露死苦」の文字だけ。
こりゃダメね。