韓流ドラマにハマったことがきっかけとなり、今では韓国語も習い始めた義妹が、「スイス人の私には想像し難い『韓国文化に基づく風習』と、文化が異なるのに共通している『女性の苦悩』の両方が詰まっているから」と、私にプレゼントしてくれたのが『82年生まれ、キム・ジヨン』でした。
自分の人生とも重なる主人公の苦悩に、息が詰まる思いでページをめくり、最後には絶句した私。
「人生を共に歩みたい」と思えるお相手に出会えたカップルは、交際中に『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで内容を議論することで、将来ふたりに発生するであろう「ジェンダーから生じるすれ違い」を回避できるのではないかしら?
少なくとも、早い時期からお互いの心に潜在する「自分と相手の立ち位置」を確認して、末長く良い関係を紡ぐことは、可能になると思います。
もしかしたら、一緒に人生を歩き出す前にスパッと別れる結果になるかもしれませんが、それはそれでいいじゃない?
次行こう、次! きっとその方が、お互いに幸せになれるわよ!
『82年生まれ、キム・ジヨン』著者チョ・ナムジュさんの経歴
- 1978年生まれ、韓国・ソウルの出身
- 梨花女子大学卒業後、子育てをしながらテレビの脚本家として活躍
- 3作目の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』が世界的ベストセラーになる
参照サイト:フリー百科事典ウィキペディア <チョ・ナムジュ>(更新日2023/02/02 12:38 UTC)(閲覧日2023/05/23)
『82年生まれ、キム・ジヨン』が描く「普通の女の一生」:あらすじ
1982年生まれのキム・ジヨンは、「ごく普通」の韓国人女性。
第1子出産後、奇妙な言動を取り始めたジヨンが、心配する夫に連れられて訪れた精神科医との診察過程で、ジヨンを中心とするさまざまな女性の生き様が浮き彫りになり、韓国社会での「女性特有の生きづらさ」が、だんだんと大きくなるのに止められない「ひび」のように、読者に伝わってきます。
スイスにも『82年生まれ、キム・ジヨン』だらけの現実〜在住者の本音
・・・だけど、『82年生まれ、キム・ジヨン』の主題である「女性特有の生きづらさ」が、韓国社会に限られた苦悩でないことは、翻訳された本が世界中で話題になっていることからも、明らかでしょう。
実は、私が読んだのは義妹(夫の弟の妻)にプレゼントされた『82年生まれ、キム・ジヨン』のドイツ語翻訳版。
ドイツ語圏のオンライン書店に記入された書評を見たところ、自分の体験から『82年生まれ、キム・ジヨン』が描く「女性の生きづらさ」に共感しているスイスやドイツの女性読者の声が、大多数を占めていました。
私の感想と同じように、「男性にこそ読んでほしい本」というコメントも目立ちます。
感想:普通の「内/外」には別物の苦悩があり、どちらの苦悩も重い
スイスで女性参政権が認められたのは非常に遅く、連邦レベルでは1971年、スイス全土ではなんと1991年のこと。
1970年生まれである私の義妹の人生は、そんなスイスの風土から、モロに影響を受けているのです。
例えば、彼女より成績の悪かった兄は、なんとしてでも大卒になるべきだと両親に育てられたのに、学年でNo.1の成績だった義妹は、「女の子は職業学校で十分」と、大学への進学を認められなかったこと。
働きながら大学入学資格を得た彼女は、のちにスイス連邦工科大学チューリッヒ校(常に世界ランキングトップの国立大学)に入学し、修士・博士取得時に2度も最優秀学生のメダルを授与されたのに、彼女の父親は「女のくせに無駄だ」と発言したこと。
職場の女性キャリア組の中では、彼女だけが「子持ち」なこと。
「家に主夫(義弟はアラフォーでFIRE*済み)がいるから、子どもは産んだだけだよね」という意地悪コメントを日常的に浴びること(発言者は男女両方)。
・・・そして、義妹自身もそんな自分の生き方に、罪悪感と自己批判をたびたび感じてしまうこと。
韓国とスイス、国は違えど「82年生まれのキム・ジヨンさん」が体験した「韓国の『普通』の枠内で生きる女性の苦悩」と、1970年生まれの義妹が「スイスの『普通の内と外』で体験する女性特有の生きづらさ」には、打ち消しようのない酷似性があると、私には思えます。
でも、FIREに成功した幸せ者の義弟でさえ、「自分の生き方はこれで本当にいいのか」と、チラチラと煩悩が浮かぶこともあるようなので、この次は「男の生きづらさ」をテーマにした本を読むつもりです。
猫じゃらしで一心不乱に遊ぶわが家のお猫さまが、幸せオーラを発揮している姿に、羨望の目を向ける私(笑)。
毎日癒してくれて、ありがとう🎶
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*FIREとは?
「経済的自立」と「早期リタイア」を意味するFIRE。「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取ったもので、定年を迎える前に豊かな老後生活の資金を確保し、退職する従来の早期リタイアとは違い、資産運用で得られる不労所得をもとに生活することを前提とした早期リタイアを指す。
引用元:Forbes JAPAN <8割が「FIRE」を希望、早期退職には資産がいくら必要か>(更新日2023/05/22)(閲覧日2023/05/23)
<関連リンク>
フリー百科事典ウィキペディア <女性参政権>(更新日2023/04/25 19:27 UTC)(閲覧日2023/05/24)