加藤未唯選手:全仏オープン失格から優勝のメルヘン〜ドイツ語圏の反応

スイスライフ

全仏オープンで加藤未唯選手に起きた出来事は、「事実は小説よりも奇なり」の証。

女子ダブルスでの「ボール返球・失格騒動」で挫けずに、ティム・プッツ選手(ドイツ)と組んだ混合ダブルスで見事優勝を果たした加藤未唯選手に対し、ドイツとスイスのメディアはとても好意的に報道しています。

スイス在住の私が目にした報道内容を、まとめてみました。

それにしても加藤選手のメンタルの強さ、すっごい!!

加藤未唯選手・全仏女子ダブルス失格に対するドイツ語圏での報道

加藤未唯選手・全仏女子ダブルス失格に対するドイツ語圏での報道

全仏オープン女子ダブルス3回戦で、加藤未唯選手&アルディラ・スーチャディ選手(インドネシア)が、マリエ・ブズコバ選手(チェコ)&サラ・ソリベストルモ選手(スペイン)対戦時に失格となった騒動は、「失格ではなく警告で十分だった」と、ドイツ語圏では一律に報道されていました。

ボールガールに返球を当ててしまった加藤選手の行動が「失格」とみなされたのは、「大げさすぎる対戦相手の抗議に影響された審判のミスジャッジ」だと、ドイツ語圏での報道は、加藤選手に対して同情的。

ドイツ人のテニス界レジェンド、ボリス・ベッカーさんが発した「加藤選手は、ボールをわざと当てたわけではないことが明らかなので、警告で十分」というコメントが、どの記事にも引用されていました。

ちなみにベッカーさんは、破産宣告をしたのに資産を隠していたことが原因で、2年半の実刑判決を受け、イギリスの刑務所で服役していたのですが、早期釈放が認められて出所した現在、ドイツのメディアにチラホラと登場しています。

加藤未唯選手・全仏混合ダブルス優勝に対するドイツ語圏での報道

加藤未唯選手・全仏混合ダブルス優勝に対するドイツ語圏での報道

加藤未唯選手の女子ダブルス失格判定は行き過ぎ……という世評があるなか、混合ダブルスでまさかの優勝という結末は、ドイツ語圏でも「テニスのメルヘン」として報じられています。

特に、加藤選手の混合ダブルスでのパートナーが、ドイツ人のティム・プッツ選手なので、喜びが倍増といった感じです。

加藤未唯選手の混合ダブルスパートナー:ティム・プッツ選手のコメント

加藤未唯選手の混合ダブルスパートナー:ティム・プッツ選手のコメント

メルヘンにはお姫様と王子様、そしてハッピーエンドがつきものですが、加藤未唯選手の混合ダブルスパートナー、ティム・プッツ選手のコメントは、王子様のように素敵で心温まる内容で、泣けてくる(涙)。

プッツ選手は、スポーツ専門放送局・EUROSPORT(ユーロスポーツ)でのインタビューで、

失格騒動が巻き起こしたネガティブなエネルギーが、自分たちの混合ダブルス優勝により、加藤選手だけではなく、関係者全員や、大会にとって「ハッピーエンド」をもたらすようにと願っている。

引用元:EUROSPORT <French Open:Tim Pütz freut sich über Grand-Slam-Titel im Mixed mit Miyu Kato – «einbisschen surrreal»  の内容をサイト運営者が日本語に翻訳 (更新日2023/06/09)(閲覧日2023/06/09)

と発言。

またプッツ選手は、混合ダブルスで優勝を決め、笑顔がハツラツとしていた加藤選手が、『失格ではなく、優勝や喜びを連想させる存在になってほしい』ともコメント。

コート上の優勝者インタビューだけではなく、加藤選手がいない場所でもダブルスのパートナーを思いやる発言内容からは、プッツ選手の素敵なお人柄が、聞き手に伝わってきます。

さらに、加藤選手が女子ダブルスで失格したにもかかわらず、自分たちの混合ダブルスへの参加を認めてくれた大会関係者の配慮にも、プッツ選手は感謝の意を表しています。

ドイツ語圏の報道ではその他、

  • 加藤未唯選手とティム・プッツ選手が混合ダブルスを組んだきっかけは偶然(本来予定していた互いのダブルスパートナーのランキングポイントが不足していたため参加不能)
  • 加藤選手は英語が苦手なので、詳細の打ち合わせはないまま参戦(←ほんまかいな)
  • ウィンブルドンで混合ダブルスに参加する場合には、加藤選手とパートナーを組むと思うが、まだ確定ではない

などといったプッツ選手のコメントも報道されていました。

加藤選手の混合ダブルスパートナー:ティム・プッツ選手の略歴

せっかく優勝したのに、プッツ選手の経歴は日本ではあまり報道されていないようなので、ドイツ語で検索してみました。

【ティム・プッツ選手】

  • 1987年生まれ、ドイツ・フランクフルト出身
  • 右利き・バックハンドは両手打ちのプロテニス選手
  • 2007年、大学入学資格取得後、テニス奨学金の援助によりアメリカ・オーバーン大学に進学。経済学学士
  • 2018年、ドイツ・シュトゥットガルトで行われたATPワールドツアーの男子ダブルスで、フィリップ・ペッシュナー選手と組んで初優勝

参照元:フリー百科事典 ウィキペディア(ドイツ語版)<Tim Pütz> (更新日2023/06/09 11:26 UTC)(閲覧日2023/06/09)

【加藤未唯選手全仏失格処分】優勝後の毅然とした異議申し立てに感謝!

【加藤未唯選手全仏失格処分】優勝後の毅然とした異議申し立てに感謝!

女子ダブルスで失格となり、泣き顔でコートを去る加藤選手を見た私は、動画の前でギリギリ歯ギシリするほど、悔しさをおぼえました。

「もし加藤&スーチャディ組が白人だったら、同じように失格処分の判定が出るだろうか? 対戦相手も審判も、アジア人のペアだから、このような扱いをするのではないか?」という疑惑は、ヨーロッパでの日常生活で、人種差別を頻繁に体験する(はずの)日本人の方ならどなたでも、心をよぎった疑問なのではないでしょうか。

さらに、加藤選手が失格になったことはもちろん悔しいけれど、ヨーロッパに四半世紀以上在住している私がそれ以上に悔しく感じたのは、毅然と言葉で抗議する代わりに、涙を流して退場する加藤選手の姿。

世界で注目されるテニスの試合だからこそ、「不当な差別を受けても言葉で抗議せず、泣くだけのアジア人」というイメージを強調してほしくない!と思ってしまったほど。

でも、混合ダブルスで優勝という快挙を成し遂げた加藤未唯選手は、優勝後のスピーチで、失格の判定から受けたご自分の心情的な辛さと共に、「失格処分により取り消されたポイントと賞金返還の要望」を、毅然と訴えました。

「失格の後に劇的優勝!」などというドラマを普通の生活で体験できない一般人の私にとって、加藤選手の行動は「文句を言わない/言えないアジア人」のイメージを払拭してくれる、大変意味のあるメッセージ! だからとっても嬉しかったのです。

「遠山の金さん」シリーズを、まとめて堪能したような爽快さで、あ〜スッキリ(一気見、やったことないのですが。しかも昭和化石の私の金さんは、松方弘樹さんだし)。

不当な失格処分に直接的な怒りを向けるのではなく、周囲への配慮あふれる感謝の言葉を口にしながら、ご自分の要求をハッキリと表現した加藤選手の行動は、ビデオ判定を用いるなど、今後のルール変更にまで影響を与えるようなので、混合ダブルスでの優勝と並ぶほどの快挙だと、個人的には思います。

だけど今後の試合では、ワンバウンドでボールガール/ボーイに返球することを、加藤選手はどうぞお忘れなく!

加藤未唯選手の今後の活躍が、とても楽しみですね🎵

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