【スイスのチップ習慣・外食編】現地データと在住者の体験から完全解説

スイス観光情報

先日、スイス・ベルンのフリーマーケットで支払いをする際に、「チップはおいくらで?」と耳慣れない質問をされて、驚きのあまりフリーズ状態に突入した私。

スイス潜伏歴30年になりますが、これまで店員さんからチップの要求をされた経験はゼロ。

「気づかぬうちにアメリカにワープ?だったらハワイにしてよね…」などとひとりごちたばかりだった私の目に留まったのが、スイスの日刊紙・20ミヌーテンが取り上げた、「セルフサービスのレストランで会計をする際に、チップの額を聞かれた!」という記事。

そこで、今回は現地で行われた最新の検証データと私自身の体験をもとに、「スイスで『普通』とみなされているチップ習慣」について解説いたします。

この記事を読めば、スイス旅行でチップの対応に困ることはないはずです🎵

【スイスにチップ習慣はある?ない?】法律と習慣に差がある現実

【スイスにチップ習慣はある?ない?】法律と習慣に差がある現実

スイスには、「レストラン・カフェ・ホテルなどの料金にはサービス料が含まれている」という法律が、1974年からあります。

とはいえ、実際の日常生活で、チップを支払わないケースは、ごく稀なこと。

たとえば、スイス連邦観光局の運営サイトにも、

スイスでは、チップを支払う義務はゲストにはありません。ただし、ほとんどのレストランでは、チップは当然とみなされています。

引用元:Schweiz Tourismus <Trinkgeld>(ドイツ語版)の内容をサイト運営者が抜粋して日本語に翻訳

…と、何事に関してもグレーゾーンを好む、永世中立国・スイスらしさを象徴するような、まどろっこしい記載があります。

法律があっても、グレーゾーンでの解釈が現実には用いられているスイスでの一例は、安楽死。興味のある方は、コチラ↓の記事をご覧ください。

【スイスのチップ習慣】チューリッヒ応用科学大学の検証データ

【スイスのチップ習慣】チューリッヒ応用科学大学の検証データ

スイスを象徴するのは銀行であるくせに、お金に関する話題は極端に嫌うのも、スイス文化の特徴。

そのせいか、レストランやカフェでのチップについて明言することも、避ける人が多いという風潮が社会にはあります。

そんな「スイスのチップ習慣」の現状を、明らかにしたのがチューリッヒ応用科学大学(ZHAW)による調査(2022年9月実施)です。

【スイスのチップ習慣】払うのがマナー。払う/払わない理由ベスト3

【スイスのチップ習慣】払うのがマナー。払う/払わない理由ベスト3

レストランでチップを払う:85%

スイス全土からの居住者1179名(18〜76歳)が回答した結果

【チップを払う理由ベスト3(複数回答可)】

  • 礼儀だから (80.3%)
  • レストラン従業員はお給料が低いから(35.9%)
  • 他人が喜ぶのを見るのは嬉しいから(33.5%)

【チップを払わない理由のベスト3(単数回答のみ)】

  • サービス料金は値段/お給料に含まれているから (31.2%)
  • 値段が高すぎるから(21.2%)
  • お金がないから (17.6%)

という事実が明らかになりました。

簡単な昼食でさえ、レストランで注文すると、「メニュー+ノンアルコール飲料+食後のコーヒー」で、おひとり様分約50スイスフラン程度(日本円で8500円!)が相場のスイス。

ですから、「チップまで払う必要、あるの?」と思う気持ちも、わからなくもありません。

1スイスフラン=169.07円。2023/11/23のルートで換算。

【スイスのチップ習慣】金額の決め方:現地データの典型的な2例

【スイスのチップ習慣】金額の決め方:現地データの典型的な2例

「チップをどれだけ上乗せすればいいのか?」というルールには、2パターンあるようです。

キリのいい金額に引き上げる(41.7%)
← 0または5の単位を目処に上乗せする回答が最多(21.2%)。例)食事代金が51スイスフランなら55に上乗せして支払い

自分が支払う金額の定率をチップとして上乗せ (27.2%)
← 常に料金の10%をチップにする回答が最多(16.9%)

【スイスのチップ習慣】金額の決め方:旅行の際の具体的な目安

【スイスのチップ習慣】金額の決め方:旅行の際の具体的な目安

スイス旅行の際には、

  • 飲み物だけ注文:端数を1スイスフラン分切り上げる(例:5.50なら6スイスフラン)
  • レストランやカフェでの食事:0か5スイスフランの単位で切り上げ(例:51なら55、サービスが良かった場合には60スイスフランへ)
  • 夕食または高級レストランでの食事:10スイスフラン(約1700円)、または料金の10%以上を上乗せ

というチップの払い方を目安にすれば、スイスのマナー的には「普通」だと思います。私の個人的な意見になりますが。

【スイスのチップ習慣】サービスが不満なら払わない。要求ははっきり!

【スイスのチップ習慣】サービスが不満なら払う必要なし。要求ははっきり!

受けたサービスが多くなるにつれ、チップの額も上乗せして当然というのがスイスのチップ習慣。

逆に、サービスがひどかった場合には、チップを払う必要はありません。

先ごろ、シーニゲプラッテでのハイキング後に、レストランで昼食をとったときのこと。

お隣の席だったスイス人のシニアカップルは、「地元産のビーフ・ジャーキーとチーズ+焼きたてのパン」という定番メニューを注文したにもかかわらず、出されたパンはガチガチに乾燥した状態。

このおふたりは、「あまりにもパンが古くて、食事を楽しめないから新鮮なパンに交換してください」と、丁寧に何度も、従業員にお願いしていたのですが、なぜか無視され続けて、30分経過。

あとからオーダーした私たちの別メニューが運ばれてきた後、何の説明もないままようやくパンが交換され、乗り継ぎの電車に間に合わなくなるからと、あたふたと食事をするおふたりを横目に、お節介ではしたない私は、「ふたりで55スイスフラン(約9000円!)もするメニューを注文しているのに、サービスひどすぎ…」と、心のなかで同情してしまいました。

会計の際、おふたりは、「ひどいサービスに払うチップはありません」と、はっきりおっしゃっていたのですが、サービスの意識が日本と異なるスイスでは、こういう残念なことに遭遇してしまうケースも、少なくありません。

テーブルを担当する従業員の当たり外れの差が、サービスに反映されることがとても多いので、万一スイス旅行の際に、レストランで感じの悪いサービスを受けたら、思い切って別の従業員に声をかけ、ご自分の要求をはっきりと伝えることをオススメします。

【スイスのチップ習慣】タッチ決済での支払い方

【スイスのチップ習慣】タッチ決済での支払い方

コロナ以降、タッチ決済が急激に広まったスイスでは、レストランやカフェでの支払い時にも、現金で支払いをする人は、見かけなくなりました。

レストランやカフェでの会計時には、

  • 従業員がテーブルにレシートを持ってくる
  • タッチ決済を希望すると伝える
  • タッチ決済機に従業員が金額を入れる際、チップを含めた金額を述べる
  • 正しい金額かどうかを確認し、必要であればピンコードを入力

という方法で、チップの支払いも同時に済ませることができます。

【スイスのチップ習慣】セルフサービス・テイクアウトでは不要

【スイスのチップ習慣】セルフサービス・テイクアウトでは不要

最後に、冒頭で記した私自身と日刊紙での体験談のように、フリー・マーケットやセルフ・サービス、テイクアウトなどの飲食店で支払いをする際には、現在のところスイスではチップを支払う習慣は、まったくありません。

会計時、もしチップに関してたずねられたら、拒否してO Kです。

***********

スイス潜伏歴30年の私ですが、毎回、レストランやカフェで会計をする際、「チップ足りない?それともOK?」と、気になっていたので、この記事の執筆を通じてモヤモヤが晴れました(笑)。

皆様のスイス旅行が、素敵な思い出でいっぱいになりますように🎶

<参照サイト>
20minuten <Trinkgeld bei Selbstbedienung: Wir sind hier nicht in den USA> (更新日2023/11/19)(閲覧日2023/11/22)

zhaw <Mehrheit der Gäste gibt Trinkgeld in Restaurants> (更新日2022/11/03)(閲覧日2023/11/22)

タイトルとURLをコピーしました