ブリトニー・スピアーズが自伝で吐露した衝撃の人生と心痛:読書感想

読書感想

ブリトニー・スピアーズさんの自伝『The Woman in Me』は、彼女の視点から自分自身の人生と、近親者との関係で生じた心痛を吐露した回顧録。

2023年10月24日発売後、初週で110万部の売り上げを達成し、セレブ自伝の史上最速売上記録を到達した『The Woman in Me』から読者に伝わってくるのは、13年に及ぶ「成年後見制度」からようやく解放されたブリトニーさんの魂の叫び。

衝撃的な出来事だらけの重荷に負けず、自分らしい生き方を探すブリトニーさんに、心からエールを送ります!

ブリトニー・スピアーズさんの心痛:自伝で吐露された4要因とその連携

ブリトニー・スピアーズさんの心痛:自伝で吐露された4要因とその連携

1999年にデビューシングル『Baby One More Time』が全世界で大ヒットしてから、超有名なポップスターとして成功を収め続けているブリトニーさんが、なぜ13年間も「成年後見制度」が必要な人だと裁判所に認定されていたのか?

ブリトニーさんの自伝『The Woman in Me』から浮き彫りになるのは、彼女の人生に暗い影を落とした以下4つの要因が、ドミノ倒しのように連携した結果、ブリトニーさんを「実父の囚われの身」に追い込んだという、彼女の視点です。

【人間関係による要因】

  • ジャスティン・ティンバーレイクさんとの破局(2002年)とその後の影響
  • ケヴィン・フェダーラインさんとの離婚(2007年)と親権争いに絡む立てこもり事件(2008年)
  • スピアーズ家メンバーとの軋轢:デビュー前から成年後見制度認定(2008年)と解除(2021年)までの家族(両親・妹・兄)との関係性

【影響要因】

  • マスコミの報道姿勢

成年後見制度とは?

もちろん、アメリカでは法律の定義が異なりますが、日本での定義は、以下のとおりです。

成年後見制度

精神上の障害があり判断能力が不十分なために、財産管理や契約などの手続きが困難なものに対し、本人の行為の代理または行為を補助する者を選任する制度。

引用元:コトバンク 出典:小学館 デジタル大辞泉 (閲覧日2023/11/01)

ブリトニーさんの悲劇要因①ジャスティン・ティンバーレイク氏の行動

ブリトニーさんの悲劇要因①ジャスティン・ティンバーレイク氏の行動

『The Woman in Me』でブリトニーさんが告白した、ティンバーレイク氏との子どもを妊娠、しかも秘密裡にするため自宅で中絶した事実に、多くのメディアが注目しています。

けれども、回顧録でブリトニーさんが特に怒りを示しているのは、あたかも自分がブリトニーさんに振られたかのように演出して、ふたりの恋愛関係をソロデビュー(2002年)への踏み台にした、ティンバーレイク氏の「仕打ち」。

彼のデビューソロアルバムに収録された『Cry Me A River』のビデオでは、ブリトニーさんに瓜二つの女性が登場し、彼女の浮気が原因で傷心する姿をティンバーレイク氏が演じているため、マスコミや世間がブリトニーさんを敵対視するきっかけになったというのが、彼女の意見なのです。

実際に同棲までしていた恋愛関係を『メッセージ1本』(!)で終えたのはティンバーレイク氏なのに、世間には「悪者はブリトニー」の風潮が出来上がってしまい、自分にはこれまで反論の余地がなかった…とのことです。

ブリトニーさんの悲劇要因②親権争いが原因の立てこもり事件

ブリトニーさんの悲劇要因②親権争いが原因の立てこもり事件

長男(2005年)と次男(2006年)に恵まれたものの、わずか3年で結婚生活を終えた元夫・フェダーライン氏とは、離婚時には共同親権で合意したブリトニーさん。

けれども、共同親権(例:子どもたちは隔週で母か父と生活)のために子どもたちと一緒にいる時間が減ってしまったことに苦しんだブリトニーさんは、報道陣の前で奇行を連発し、親権が剥奪されてしまうのです。

その後、子どもとの面会時間終了時に、「今後は会えなくなるかもしれない」という恐怖心から、ブリトニーさんは自宅の部屋に立てこもったため、警察や消防署が出動する大騒ぎ(2008年)となり、そのときの様子がメディアでも報じられました。

ブリトニーさんの悲劇要因③実父による成年後見制度認定

ブリトニーさんの悲劇要因③実父による成年後見制度認定

立てこもり事件の後、ブリトニーさんの実父が申請していた「成年後見制度」を、ロサンゼルスの裁判所が認定(2008年)。

実父が後見人として資産・仕事・私生活のすべてを管理するなか、ブリトニーさんは音楽活動(アルバム制作・テレビ番組出演・ラスベガスでの常設公演・世界ツアーなど)を継続し、アーティストとして実績を残しますが、後見制度は13年間、解除されないまま。

ブリトニーさんは、電話やインターネットすら許可がなければ使えず、食事や飲み物規制、トイレ詳細の記録、部屋に盗聴器、そして自分が演じるショーの内容や公演プランも変更不可という、凄まじい24時間の監視体制下で生活をするのですが、少しでも生活条件の緩和を求めると、引き合いに出されるのは、「2人の子どもたちとの面会時間を減らす/なくす」という切り札。

ブリトニーさんの稼いだお金で豊かな暮らしを営む両親や兄妹との断絶、親権のない子どもたちに会えない不安、けれども外部から完全に遮断され、がむしゃらに働くことを要求されていたブリトニーさんは、抵抗する術を知らずに、精神的苦痛に悩まされていくのです。

#FreeBritney活動がブリトニーさんに与えた虐待告白の勇気

#FreeBritney活動がブリトニーさんに与えた虐待告白の勇気

後見制度のもとに行われる実父の管理に少しでも従わなければ、強制入院という措置が繰り返されるなか、入院先の看護師さんが教えてくれた「#FreeBritney」活動の存在を知ったことがきっかけとなり、勇気を出したブリトニーさんは、ようやく自ら動き出します。

2021年、裁判所審理で「成年後見人」である実父による搾取と虐待(例:避妊器具の着用強制)を、公開告白したブリトニーさんの行動は世間を震撼させ、同年、13年間に及んだ後見制度の解除が認定されました。

ブリトニーさんが自伝で訴えるのは「暴露」ではなく自分の体験と想い

ブリトニーさんが自伝で訴えるのは「暴露」ではなく自分の体験と想い

しかし自伝『The Woman in Me』のなかで、ブリトニーさんは彼女の心痛の原因となった人々を一方的に批判しているわけではなく、

  • 当時メディアで報じられた、またはあえて報じられなかった内容
  • ブリトニーさんの実体験に基づく事実
  • 問題となった出来事が生じた際、彼女の胸に湧き上がった感情

を、読者に知ってもらいたい!と、自分自身の問題行動もきちんと振り返りつつ、言及しくいことをあからさまにしているので、回顧録から浮かび上がってくるのは、等身大のブリトニーさんの姿。

編集者の作戦が、大成功したのかもしれませんが、どのページをめくっても、「みんな、聞いて!これが私の本当の想い!」と訴えてくるブリトニーさんを感じたのは、私だけではないと思います。

ブリトニー・スピアーズさんの自伝は人間の怖さと強さを象徴

ブリトニー・スピアーズさんの自伝は人間の怖さと強さを象徴

「ブリトニー・スピアーズさんの自伝発売」というニュースを目にしたとき、特に彼女のファンではなかった私は、本を買うつもりなどありませんでした。

でも報道内容で、彼女が13年間も成年後見制度により管理されていたと知り、衝撃を受けたため、本を購入。

『The Woman in Me』を読んだ後は、さらに衝撃を受けました。

大好きなダンスと歌で、才能を開花したブリトニーさんが、天才児だったからこそ通常の発達段階を経ずに成長し、大人になる前にメディアの晒し者となり、世渡りの仕方や、自分の心の守り方を身につけないまま、毒親をはじめとする周囲から利用されて苦しむ様子は、本当に悲しくていたたまれない。

「人間関係の揉め事では、関係者双方の意見を聞くことが必須」というのは、私が学んだ臨床心理学での鉄則なのですが、『The Woman in Me』で自分の見解を世に知らせたことは、ブリトニーさんにとって「真の解放」を意味するのでは。

今後、本の内容に対する関係者の発言なども続く可能性がありますが、理不尽すぎるほど長期間続いた成年後見制度のコントロールに打ち勝てたブリトニーさんが、自分の気持ちを尊重しながら、再び音楽と生きる喜びを発見できますようにと、願ってやみません。

<参考サイト>

フリー百科事典 ウィキペディア ドイツ語版 <Britney Spears> (更新日2023/10/26 UTC 14:46)(閲覧日2023/11/02)

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