アルプス山脈で有名なスイスの山で、もし救助活動が必要な状態に陥ったら、その費用を支払うのは、誰なのか?
スイス在住者の私が現地で集めた情報をご紹介します。
【スキー場での捜索・救助費】日本では地域により条件が異なる
日本のスキー場で、遭難が相次いでいる今日この頃。
万一、救助活動が必要な事態が発生した場合には、救助隊の方たちが捜索・救助に出向いてくださるわけですが、救助隊の方たちにも危険が伴う厳しい条件下で行われる救助活動の費用を負担するのは、いったい誰なのか?という疑問が浮かんできた私。
STVニュース北海道の<【捜索費はいくら?】誰が払う?相次ぐバックカントリー遭難 Weサーチ北海道#28>YouTube動画(上の動画)を見たところ、
- 道警・消防・道の防災ヘリ:費用請求はなく、税金でまかなわれる
- ただし、一部の自治体やスキー場は費用を請求する
と、捜索費用請求の有無に関しては、各地域によって異なることを知りました。
例えば、札幌国際スキー場の公式サイトには、コース外での救助費用についての詳細が、以下の様に明記されています。
コチラ↓の記事には、バックカントリーの定義と、有名なスキー場における救助費用の制定が、大変わかりやすく解説されているので、リンクを貼っておきます。
外部サイト:スキー凸凹研究所 <バックカントリーとコース外との違い、そして救助費用は?>(更新日2023/01/30)(閲覧日2023/02/04)
【スイスのスキー場での捜索費】救助費用は誰が払う?
さて、今回の記事の本題です。
疑問:スイスの山で救助活動を要請した場合、捜索・救助費用は誰が支払うのか?
回答:救助される人が、スイス人か外国人であるかにより、条件が異なる
ということが、現地の情報を収集して明らかになりました。
スイスに住んで四半世紀以上の私ですが、これにはビックリ。
連邦制のスイスでは、何かにつけて各州で異なる条例があるのが一般的。けれども、「山での救助費用」に関しては、スイス国内で一律の決まりが適用されているようです。
【スイスのスキー場での捜索費】救助費はどのくらい?
スイスの雪山でウインタースポーツをしていた人が、ヘリコープターによる救助を必要とする場合、ヘリコープターの飛行費用は約50万円とのこと(3500スイスフラン。1CHF=141.66円、2023/02/04のレート)。
ただし、この費用には救助隊の人件費は含まれていないので、必要となる救助隊員の人数や実質必要となる救助時間を加えると、1400万円以上(100’000スイスフラン)の救助費が発生すると考えた方が、現実的。
【スキー場での捜索・救助費】救助される人がスイス人の場合
スイスの山で救助を必要とする該当者がスイス人の場合、救助費は基本的に
- 健康保険(救助費の一部のみ負担)
- 傷害保険
によりカバーされるそうです。
ただし、「捜索・救助費が、どれだけ自己負担になるのか?」という点を左右するのは、救助を必要とするスキーヤーまたはスノーボーダーの態度。
- ゲレンデ内の場合:スキー国際連盟(FIS)が制定した「10 FIS RULES」(上の画像)に従っていたか
- バックカントリーの場合:自己責任を全うしていたか(例:必要な装備携行・登山届の申請・雪崩情報の把握・実力に見合ったルート選定・地形確認など)
の2点が考慮されるので、救助費は一概に「保険でいくら出る」とは片づけられないテーマだということです。
そのためか、私が調べた限り、どのサイトにも保険でカバーされる救助費は、明記されていませんでした。
ちなみに、保険による救助費支払い有無の焦点となるのは国籍ではなくて、「スイスに在住してスイスで健康保険や傷害保険の契約をしているかどうか」が決め手となる模様。
ですから、外国人でもこのポイントをクリアしていれば、スイス人と同様に支払いの処理がされるみたいです(私はこのケースに該当)。
【スキー場での捜索・救助費】外国人が救助を必要とする場合
スイスの山で、観光に訪れていた外国人が捜索・救助を必要とする場合、救助費は全額自己負担(!)となります。
上部に記しましたが、念の為繰り返します:スイスの山岳で行われる救助で、必要な捜索・救助費は、100’000スイスフラン以上(約1400万円以上)。
今回の記事では、スイスの雪山における救助費用を中心に取り上げましたが、昨今のスイスでは不適切な装備で登山し(特に夏)、救助が必要となるケースが多発しています。
スイスの美しい自然を心から楽しむためにも、ご旅行の前には山に適した装備を万端に整え、海外旅行障害保険に加入してからスイス・アルプスへ旅立つことを、お忘れなく。
外務省のサイトに、海外の山に登る際の注意事項が記載されていますので、コチラ↓にリンクを貼っておきます。
関連サイト:外務省 海外安全ページ <海外における登山、トレッキングに関する注意>(閲覧日2023/02/03)
<参照サイト>
Beobachter <Wer haftet bei einem Lawinenniedergang?> (更新日2022/02/14) (閲覧日2023/02/04)