スイスのバスや電車には、ベビーカー優先エリアがあり、ノンステップで昇降可能なので、この点は楽。
でも、子連れに思いやりのある人たちに出会えるかどうかは、運任せ。
スイスに四半世紀以上潜伏中で、子育て体験者の私が、現地の実情をお届けします。
【ベビーカーでのバス利用が引き起こす波紋】テレ朝newsの報道
ベビーカーを畳まずに、バスの専用座席を利用していた女性客が、別の乗客に咎められ、なんとベビーカーに蹴りを入れられたという出来事が波紋を呼んでいると、テレ朝newsの動画で目にしました。
このベビーカーでのいざこざは、バスの乗客が5人という、比較的空いた状況で発生したとか。
国土交通省によれば、ベビーカーは基本的には折り畳まず、そのまま乗車してOKとのこと。とはいえ、べビーカー問題は、子育て中の悩みとして定期的に取り沙汰される、なかなか難しいテーマですよね。
そこで今回の記事では、ベビーカーでバスや電車を利用する場合、スイスではどのような状況なのかについて、ご紹介したいと思います。
注:この記事投稿時、2022年8月4日には公開されていたテレ朝newsの動画が、2022年9月13日には削除されているため、動画表示ができないことをご了承ください。
【ベビーカーで交通機関利用・スイス編】鉄道・バス会社の公式サイト情報
ヨーロッパでいちばん子育てしにくい国だと、国連児童基金(ユニセフ)の調査で明らかになっているスイス。
けれども、ベビーカーで公共交通機関を利用する際には、子連れ利用者への配慮が、十分になされています。
なお、ベビーカーで交通機関を利用する際には、スイスでは特別料金はかかりません(通常運賃のみ)。
しかし自転車の場合は、通常運賃プラス自転車用の乗車券を購入する必要あり。車内持ち込みの不可も、車両タイプや路線によって決められているので、事前の確認が必要となります。
関連サイト:SWI <スイス、「家族に優しい国」欧州最下位 ユニセフ調査>(更新日2022/06/19)(閲覧日2022/08/03)
【ベビーカーで交通機関利用・スイス編】スイス連邦鉄道による情報
SBB(スイス連邦鉄道)の公式サイトには、ベビーカーで電車を利用する乗客への説明が記されています。
その説明内容は、
- 子どもにベルトを締めるようにという注意喚起
- ノンステップ型でない電車を利用する場合の正しい乗車の仕方(ものすごく人里離れた地方や鈍行列車では、昇降口が階段のケースが稀にあるため)
- ベビーカー優先エリアがある車両(マークで確認可能)の利用推奨
- 畳めるベビーカーの使用推奨と、車内で仕舞える場所の説明
など。
スイスでは現在、ほとんどの電車がノンステップ型の車両を、少なくとも1台は導入しています。
ノンステップ車両には、ベビーカーのマークが貼ってあるので、目印にすると便利です。
【ベビーカーで交通機関利用・スイス編】バスでは優先エリアを使う
コチラ↑は、私の潜伏地・ベルンを走るバスの中に設けられている、優先エリアの写真です(撮影下手で、ごめんあそばせ)。
通常、ベビーカーだけなら3台横並び、またはベビーカー2台と車椅子1台を停めることができるほどのスペースが、バス車両の前方部分と、後方部分に設けられています。
私が撮影したバス車内の写真のマークは、車椅子の絵しかなかったのですが、一般的にこのスペースが車椅子・ベビーカー・自転車の優先エリアであることは、スイスの社会で認知されています。
【ベビーカーでバス利用・スイス編】優先エリア常備でも思いやりは運
ただし、舌打ちや「まったく…」みたいなコメントを、ベビーカーで移動中の親御さんがされることは、日常茶飯事(私自身の体験と観察ですが)。
つい先日も、ベビーカー数台と優先エリアにいた保育園園児のグループ(人数は多いけれど、周囲への気配り十分な人たち)に、「僕のスーツケースが置けない。迷惑だ」と悪態をついていたバスの乗客がいました。
その後、保育園の先生方が、「必要に迫られて公共のバスを利用する保育園児グループと、大きなスーツケースを必要とする旅行者のどちらが無駄なCO2を排出しているか」という議論に持ち込んでいたのが、スイスらしい点かもしれません。
スイスでは、CO2削減のための手段が声高に議論されているのです。建国記念日伝統の花火大会も、継続されるかどうか未定です。
【ベビーカーで交通機関利用】それぞれの余裕のなさが反映される難題
他人への暴言や暴挙はもってのほかですが、個人的には、「ベビーカーが邪魔だ」という気持ちもわからなくはないですし、自分が子育てをした体験上、「じゃあどうすりゃいいのよ」と、途方に暮れるテーマです。
バスや電車に限ったことではないのですが、子連れイコール何でもありでしょ的に、わが物顔で場所を占領し、ドヤ顔で自分たちの権利だけ主張しているような親を見かけると、「だから子連れ全員が目の敵にされるのよ」と、私自身も腹が立つこともありますし。
そして「ベビーカーを押している親」から、自分が持っていないものを見せつけられているように感じてしまい、嫌悪や憎悪を抱く場合も、人によってはあるかもしれません。
一方で、子育て中の親がかさばる荷物を抱えながら、大事な子どもと一緒にベビーカーで移動することの大変さも、体験者にしかわからない苦痛。
ほんっとに荷物が多くて重くて、簡単に身動きできませんものね、ベビーカー+子ども+荷物での移動中って。
到着した駅のホームに降り立った時、目の前には長い階段、だけどエレベーターはホームのいちばん端っこの位置、そして私は数分後に発車する次の電車に乗り換えなければならない…となった時、本気でドラえもんの「どこでもドア」が使えたらと願った経験が、私にはあります。
けれども子育て中に少なくとも一度は、ベビーカーでのバスや電車利用を避けられない事態が、発生する確率は大。
本当にこればかりは、「お互いの配慮」しか、解決策がないのでは。
自分の体験から、ベビーカーで移動中のママさんや、大きなショッピングカートでバスを待っているシニアの方をお見かけすると、私は積極的に自分の方からお声がけするように、心がけています。
大海の一滴かもしれませんが、誰かさんと私の心がギスギスすることは、その一瞬でも防ぐことはできるので、手軽な心のシワ伸ばしとして効果的(笑)。
<関連サイト>
スイス鉄道:SBB <Kinderwagen, Gepäck & Velo>
ベルンのバス会社:BERNMOBIL <“Zäme geits!”>