道ですれちがう人に挨拶しないといけないスイスの大問題

スイス社会暗黙のルール 赤の他人への挨拶を紐解く スイスライフ

スイスの首都・ベルンから電車で約20分、豊かな森に囲まれ、アイガー・ミュンヒ・ユングフラウ山の絶景を楽しめる場所に位置していた町に、私は10年ほど住んでいました。

私が暮らしていた町の人口は、約5000人。ちょうど日本の与論島と同じくらいのサイズと人口の場所です(ヨロンを比較の対象に選ぶ私って…美しい海に憧れる深層心理丸出し)。

この町に住み始めた当時の私は、毎日犬のお散歩に出かけるたび不思議な現象に出会い、戸惑いました。

知り合いゼロの町。だけどみんなが私に挨拶する、スイスの不思議

アイガー・ミュンヒ・ユングフラウ山の絶景

自宅から森への道のりは、徒歩で10分ほど。裏庭から外に出た途端、駅へ向かう人とすれちがい、<Grüsse>と声をかけられたので、私もあわてて挨拶を返しました。

私は引っ越してきたばかりだったので、この町での知り合いは、まだゼロ人。

ところが、郵便受けに新聞を取りに来た人、早朝から庭のお花を手入れしている人、私と同じように犬の散歩中の人、森の中で乗馬している人…。

お散歩を開始して30分も経たないうちに出会った方全員に、<Grüsse>と挨拶をされた私は、ちょっと混乱しました。

森を散歩中のポメラニアン

出会ったひとりめの人は、ウチのすぐ裏の道を歩いていたのでご近所さんと思われる。
けれど、森へ続く小径の横にある農家でニワトリの世話をしていた人は初対面にちがいないし、森の中で馬をギャロップさせていた人に、私の顔が見えたはずはない。

知り合いのわけ、ないわよね?

結局、1時間のお散歩で挨拶した回数は20回以上でした(多すぎたから、途中でカウントを中止)。

スイスでは、ハイキングでも挨拶が必須?


そして週末、山へハイキングに出かけた私は、再びまるで同じ現象に遭遇しました。

スイスのハイキング道

互いに道を譲り合わないとすれちがうことが難しい箇所で、声を掛け合うのは自然なこと。

けれども、数メートルの幅がある場所でも、山の頂上へ向かうロープウェイに乗り込むときも、絶景を見渡せるベンチで休憩するときにも、必ず<Grüsse/Grüezi>の一言が聞こえてきます。

*Grüsseは、ベルン州の方言です。



「きちんと挨拶をしなさい」と親に厳しく躾けられたけれど、「道ですれちがう見知らぬ他人に挨拶をする」という習慣は、東京のど真ん中で育った私には、衝撃的でした。

渋谷のスクランブル交差点

もし渋谷のスクランブル交差点でこんな現象が起きたら、1メートルも進まないうちに信号が赤に変わること確定(笑)。
それか、寄付を募る怪しげな団体のメンバーと誤解され、急ぎ足で逃げられるに決まっています。


もちろんスイスでも、チューリッヒの Paradeplatz (市の中心にある広場で人通りが多い)で行き交う人に挨拶をする必要は、当然ながらありません。

では、どんな状況なら挨拶が欠かせないのでしょうか?

スイスで「見ず知らずの他人」に挨拶することが期待されている状況

スイスアルプスが見える田舎

私の体験や、友人たちの意見をまとめるとこんな感じ。

  • 都市以外の地域
  • 都市での例外:お店(スーパーやデパートなど大きな店を除く)やレストラン・カフェに出入りする際

例えば、14世紀に作られたカペル橋で有名なルツェルン州の社会福祉課のホームページには、スイスの暗黙のルールとして、以下の内容が↓記されています。

見ず知らずの人に道で出会う際、郊外であれば挨拶をすること。

引用元 Dienststelle Soziale und Gesellschaft : gruezi.lu.ch
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大切! 電車で空席を確認するときもひと声かけて挨拶がスイス流

戦車の座席

そして、「挨拶をするシーン」で忘れちゃいけないのが、電車の座席に座るとき!

電車で空席を見つけたら、空席の横、もしくは同じコンパートメントに着席している人に、

<Ist hier noch frei?>

と空席を指差し、相手の了承を得てから着席することも、スイス社会の暗黙のルールのひとつです。


次回のスイス旅行で公共の交通機関を利用する際、「この座席、空いていますか?」とひと声かけてから着席すると、もしかしたら同席者と思いがけない楽しい会話が発展するかもしれません。

スイス人は本当に旅行好きなので(ビバ、スイスフラン! 物価は高いけど)、偶然同席するお相手が日本のファンという可能性大ありです。

スイスの湖畔

コロナよ、早く収まれ〜!

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