シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルストは、誰もが一度は挑戦したがる憧れのトレッキングルート。
ハイキング王国スイスでは、現地の人やハイキング目的でスイスを訪れる観光客と話す機会があるたびに、「ところで、シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルストのルートを歩いた経験はありますか?」と、本当に毎回話題になります。
噂どおりの壮大な天空ルートで大満足したスイス在住ハイカーが、体験記とお役立ち情報をまとめました。
【シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルスト】ルートの特徴
- 標高:シーニゲプラッテ(2099m)/ファウルホルン(2681m)/フィルスト(2184m)
- トレッキングにオススメの季節:6月〜10月(←ただし6月または10月は、ルート部分にも積雪の可能性あり)
- 難易度:上級者向き
- 距離:16.2km
- 所要時間:6時間
- 上り/下り:825m/639m
- 道のコンディション:
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン区間:ごく一部が自然道、他はガレ場・ザレ・木段・尾根の混在状態
ファウルホルン〜バッハアルプゼー区間:ザレ・砂利道
バッハアルプゼー〜フィルスト区間:自然道(←この区間だけは初心者向きのハイキングルート) - お食事処・トイレ:シーニゲプラッテ/ファウルホルン/フィルスト
道のコンディションに関する名称は、コチラ↓の専門サイトにある記事でご確認ください。
出発地シーニゲプラッテ・到着地フィルストを現地人が推奨する理由
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルストのルートをトレッキングする場合、
- 出発地:シーニゲプラッテ
- 到着地:フィルスト
で計画を立てる方が断然歩きやすいと、現地スイスのハイカーたちは推奨しています。
その理由は、道のコンディション。
全行程6時間に及ぶトレッキングルートなので、元気いっぱいのうちに難易度の高いシーニゲプラッテ〜ファウルホルン区間を歩き、疲労度がピークに達している後半部分に、初心者向きのハイキングレベルであるバッハアルプゼー〜フィルスト区間を歩くのが、このルートを最大限楽しむコツ!という助言を、このルートの経験者全員が口にしているのです。
実際、私もその助言に従って良かったと感じました。
どちらの方向からスタートしても、トレッキング中の景色に優劣の差はまったくないので、「せっかくなら、どうしてもハードなルートを歩きたい」という方以外は(笑)、シーニゲプラッテを出発地にする計画を、私はオススメします。
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルスト:ルートの長所と短所
- (+)ルートの最初から最後まで、壮大なパノラマの連続
- (+)草原・森・アルプス・湖と、ルート内の風景が変化に富んでいる
- (+)ハイカーが少なめで、静か
- (―)適したコンディションと経験が必須のルート
- (―)シーニゲプラッテ〜ファウルホルンの区間、休憩用のベンチがゼロ
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルスト:休憩時の注意点
スイスのトレッキングルートでは、絶景ポイントには必ずと言ってよいほどベンチがあるのがあたりまえなのですが、シーニゲプラッテ〜ファウルホルン区間ではベンチがないため、斜面にある大きめサイズの岩の上に座って休憩することになります。
その場合、岩の下にヘビが隠れていることが多いそうなので、ヘビが逃げてくれるように、座る前には足を踏み鳴らし、できるだけ音を立てるという方法を、私は実践しています。
また、草の上にゴロンと横になって休憩するハイカーを、ユングフラウ地方でしばしば目にしますが、地元のスイス人で気軽に草の上に横たわる人は、よっぽどワイルド、いやおバカな人以外、いません。
その理由は、マダニ。
マダニ媒介感染症の恐ろしさは、自然の中でのアクティビティ愛好者が多く、徴兵制度の訓練(男性だけですが)でも身近に刺された体験者が少なくないスイス人が、ハイキング/トレッキングで最も注意を払う点のひとつなのです。
マダニに関する説明を知りたい方は、コチラ↓のサイトに掲載されている専門家の解説を、ぜひ参考になさってください。
もし日本から持参していない場合、スイスでは薬局だけではなく、ミグロ(Migros)またはコープ(coop)などのスーパーマーケットでも、マダニ予防のスプレーを購入することができます。
「Zeckenspray(ツェッケンスプレイ)」とたずねれば、すぐにわかるはずです。
ちなみに私は、
- ハイキング/トレッキング用の長いパンツ
- 膝下までの長靴下
- 足元にマダニよけスプレー噴射
- 草むらに座ったり、寝転がったりしない
という対策を実行しているおかげで、まだ一度もマダニに刺されたことはありませんので、十分な対策をして、ハイキング/トレッキングを楽しみましょうね!
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルスト:トレッキング体験記
この日は、朝イチのレトロ電車でシーニゲプラッテに到着。
空気も青空も爽やかで気持ちよくて、理想のトレッキング日和です🎵
ハイキング/トレッキングルートにあるマーキングは、まさにスイスを象徴するシンボル。どの分岐点でも、正確に進むべき方向を示してくれます。
この日も、まだ朝早い時間なのに、放牧牛が遊んで倒してしまった(!)標識のひとつを、農家の人が修繕中でした。
いつものことながら、ハイキング/トレッキングルート維持にあたるボランティアの方々のご尽力に、心から感謝。
自然道はすぐに終わり、右画像↑のようなザレ状態の道を進むと・・・。
ジャーン!スイスアルプスと森と草原の絶景がお待ちかね。
足元は、ご覧のように岩ゴロ状態なので、アイガー・メンヒ・ユングフラウに見惚れすぎてつまずかないように、立ち止まって写真をパチリ。
ガレとザレのミックスのような地面なので、注意深く前進。
傾斜がかなりきつい上、柵がないトレッキングルートの真横は、谷まで伸びる斜面なので、緊張感マックス!
幸い、残雪はルートの障害にならない程度なので大助かりしました。
美しいゼーギスタール湖が見えてきたところで、ホッとひと息!大きな岩の上で、おやつ休憩。山で食べるりんごはいつもの倍、美味しい🎵
ファウルホルンの手前2.9km、シーニゲプラッテ寄りの位置にある山小屋メンドレーネン(Männdlenen)でも軽食・簡易トイレ利用は可能ですが、私はオススメしません(↑画像中央の建物)。
その理由は、2つあります。
ひとつめは、山小屋のスタッフ(夫婦)が、超感じ悪いから。
ちなみにこの日、私たちを含む3組のゲストが同時に、「普通に品物をレジに運んで、提示されている方法で支払う」作業で、怒鳴り飛ばされました。
詳細を記載しようかと思いましたが、せっかくの素敵な1日の思い出に、嫌な記録を残すのはもったいない気がしますので、気になる方は、トリップアドバイザーの評価を見てみてください(私は未記入)。
どうやら宿泊客には愛想が良いようですが、レストランだけの利用者には、サービスとはかけ離れた最悪の扱いをすることが、この山小屋では常のようです。
山小屋メンドレーネンを避けるべきふたつめの理由は、山小屋を後にして斜面を登り切った場所に、と〜っても眺めの良い台地があるから。コチラ↓の画像が、その台地から見えるパノラマ!
どうです、この壮大なパノラマは!
しかも台地は岩なので、腰を下ろして休憩しても、マダニの心配はなさそうです。
天に手が届きそう!
この日は、翌日行われる「アイガーウルトラトレイル」のために、すでに標識や分岐点にマーキングが施されていました。
本番に備えて練習中のランナーを数人、お見かけしたのですが、皆さん速い!まさに超人的!
私はと言えば、この6時間天空ルートにチャレンジして、美しいアルプスの風景に囲まれているだけで、幸せ。
数年前、肺炎を繰り返して入院し、わずかな距離でも老人のような息切れ状態。おまけに重度のアトピーを発症して、気持ちが腐っていた当時の自分に、教えてあげたい……。
毎日毎日、あきらめずにピラティス+HIIT+有酸素運動などを続けていたおかげで、数年後にはこんなに高い位置にあるファウルホルンの山小屋レストランまで登れるほど、健康が回復するわよ、と!
いや、でも、「ちょっとどころじゃなく、すごく登りにくい〜」と、へたって文句ブツブツの私が現実(笑)。
登り切るまで、レストランで何を食べようかと、ひたすら考えながら前進。
スイスで最も古い時期にオープンした山小屋のひとつと言われるファウルホルンの山小屋は、テラス席からの景色が見事!
うれしいことに、レストランのスタッフもとても親切なので、パノラマを見ながら美味しいお食事を楽しめます🎵
ファウルホルンで昼食を終えた後は、この日のトレッキングのデザートコース開始。
楽に歩けるコースなのに、引き続き目の前に広がるバッハアルプゼーほとりの美景!
コチラ↑の写真撮影場所にあったベンチの下に、何やら不思議なお弁当箱のような物を発見。好奇心が強い私は、「誰かの忘れ物じゃない?」という夫にかまわず、ベンチへと急ぎました。
ベンチに貼ってあるメッセージの発信者は、シモネ(Simone)さんで、ベンチ寄贈者と判明。
この位置からのバッハアルプゼーの眺めを愛するシモネさんは、「私の大好きな場所にあるベンチで休憩するあなたたちからメッセージをいただけるとうれしいので、もしよかったら容器に入っている手帳に、メッセージを書き留めてください」とのこと。
なんて素敵なアイデア!
そして、手帳の中にはワクワクするようなメッセージの数々が!
私もいずれマネしたいと思ったので、調べてみましたら、「ベンチ文化促進協会」なるものがスイスにあり、個人からのベンチ寄贈を受け付けているようです。
あいにくと、公式ページはドイツ語かフランス語でしか記載がないのですが、興味のある方がいらっしゃるかもしれないので、リンクを貼っておきます。
私の周辺の人々にたずねてみたところ、自分のベンチを設置したい場所を管轄している市町村に直接連絡をする方法でも、ベンチ寄贈は可能なようです。
ちなみにベルン市のサイトによれば、ベンチ1つ寄贈するのに2500スイスフラン(約45万円。1スイスフラン=178.90円、2024/06/27のレートで換算)の費用がかかるとのことでした。
この情報を得てから、個人名が記されているベンチで休憩をする際には、「ありがとうございます」とお礼を述べる習慣を身につけました。
シーニゲプラッテ〜ファウルホルン〜フィルスト:ルート関連情報
シーニゲプラッテとフィルストの時刻表と運行情報がわかるリンクはコチラ↓です。
日本と違いスイスでは、運休・遅延情報が利用客にわかりやすく伝えられることがないので、ご自分で必ずチェックしてくださいね!
信じられないほどすべてのことが、自己責任で片付けられてしまうので、念には念を入れましょう。スイスで30年生活している私からの切なるお願いです(笑)。
お出かけ時には天気予報だけではなく、シーニゲプラッテおよびフィルストに設置してあるライブカメラで、現地の様子を確認するのが、オススメです。