『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(日本では2023年1月13日から公開予定)を、一足お先にスイスで視聴してきました。
映画音楽というジャンルを確立した巨匠エンニオ・モリコーネ氏の人生は、まさに映画音楽の歴史そのもの。
一食抜いてもオススメしたいドキュメンタリー映画です。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』:作品の説明
2020年、91歳で逝去された映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネさん。
『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督、ジュゼッペ・トルナトーレさんが作成した『モリコーネ 映画が恋した音楽家』は、
- モリコーネさんご本人への5年に及ぶ密着インタビュー
- モリコーネさんの仲間たち(70人以上)へのインタビュー
- ふんだんなアチーブ映像
を用いた、ドキュメタリー映画です。
モリコーネさんとトルナトーレ監督は、『ニュー・シネマ・パラダイス』の作成以来、友情で結ばれていたという背景もあり、マエストロの胸の内が細やかに表現されています。
何より圧巻なのは、撮影時にはすでに90歳近いお年だったモリコーネさんの「音楽への愛」が、画面から伝わってくる様子!
モリコーネさんご自身による人生の回想録からは、映画音楽界の巨匠というイメージからはかけ離れた音楽家としての葛藤と、500作品以上手掛けた映画音楽作成の秘話が次々に披露される、とても興味深い内容となっています。
157分のドキュメンタリー映画ですが、時間が経つのはあっという間でした。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』:映画鑑賞で得た豆知識
エンニオ・モリコーネさんは・・・、
- トランペット奏者として音楽家への道をスタート
- ローマの国立音楽アカデミーの出身者
- 映画音楽で世界的に有名になったきっかけの『荒野の用心棒(1964年)』の監督、セルジオ・レオーネさんとは小学校の同級生
- 大成功した映画音楽が芸術として認められないことに悩み続け、何度もやめようと考えていた
- 2015年、作曲賞部門でアカデミー賞を初受賞(『ヘイトフル・エイト』タランティーノ監督)
- 映画音楽と並行し、オーケストラ用の楽曲も精力的に作成・演奏を継続していた
という事実を、『モリコーネ 映画が恋した音楽家』を鑑賞したおかげで知ることができました。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』:私の感想レビュー
たった1小節を耳にするだけで、誰の作品なのかがわかる作曲家は、稀なのではないでしょうか。
モリコーネさんの作曲した音楽が流れ出すと、その音楽が使われていた映画の場面や、映画を鑑賞した時の思い出が鮮やかに甦るので、思わず手を止めて聞き入ってしまう経験が、私にはしばしばあります。
そして、読者の方々も少なからず同じような体験をされているのでは?
それは、モリコーネさんの曲が単なる映画音楽の領域を超えて人の心を揺さぶり、思い出を刻んでいる証拠だと、常日頃感じていました。
モーツァルトやベートーヴェンなど、クラシック音楽の巨匠たちが書き上げた名曲が、国境と時代を超えて感動を呼び起こすように、モリコーネさんの作品は、モリコーネさんがパイオニアとして築いた「映画音楽」という芸術分野で、今後も後世の人々の胸を熱くし、心を豊かにしてくれる存在であり続けることでしょう。
芸術
作品の創作と鑑賞によって精神の充実体験を追求する文化活動。文学、音楽、造形美術、演劇、映画などの総称。
引用元:コトバンク 出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)<芸術>
何十年後かには「芸術」の定義に、「映画音楽」も含まれて当然になるかもしれません。
偉大な作曲家、エンニオ・モリコーネさんが残した足跡を、直に体験できる世代に生まれた偶然に、感謝♫