近所で飼われている噛み癖のある犬が、今月(まだ7日…)に入ってから、わが家のお隣さん3人に傷を負わせる事件が起きました。
噛まれた状況は、3人ともまるで同じ。バス停から自宅までのスロープを歩いていたら、突然暗闇から犬がアタックしてきて、足を噛まれたというのでコワイ。
あいにくと、飼い主は反省の色がゼロ。おまけに「私の犬のおかげで、泥棒よけになるから安全に貢献している」などと勘違い発言までする暴走状態。
そこで近所総出で、ペット免許制の法律を頼りに「飼い主と犬を『訓練コース』に再入学させる」嘆願書を出すことを相談していたら、驚愕の事実が明るみに!
- スイス全土での「ペット免許制」は、2017年に撤廃
(講習・訓練参加が義務付けられていた) - 現在では、各州が独自の「ペット免許制」法令を適用
国レベルでのペット免許制が今では適用されないことに、誰も気づかずにいたのです。
そして、私の居住地・ベルン州では、現在のところ訓練コースを義務付ける「法令」なし・・・。
「他の州は、どうなの?」と調べてみたら、やっぱり!
チューリッヒ州にはある(至極当然)。だけど、ベルンよりちょっぴり田舎のフリブール州にまであるじゃない?!
「カタツムリのベルン、いつものように出遅れる」
*ベルンはスイスの首都なのに、生活テンポのすべてが「の〜んびり」していることから、「カタツムリ」の愛称で呼ばれています。
まずスイスの政治システムをカンタンにおさらい
スイス連邦の政府は、26の州と2222地方自治体から成り立ち、州と自治体には、地域ごとに問題解決策を決定する権利があります。
公立大学の学費や小学校での外国語導入の条件も、州によって異なるのは、この自治権によるものです。
スイス全土での【ペット免許制】は2008〜2017年にはあった!
国レベルで義務付けられていた犬の飼い主の講習参加法律が撤廃された理由は、
国の調査で、強制参加を促しても効果があるという証拠がないと明らかになったから。
(あぁ、お役所言葉)
国レベルでのペット免許制度撤廃後、州の法令はバラバラ
連邦全土でのペット免許制度が撤廃されて以来、各州が法令を作成して適用することになっていますが、実態はバラバラ。
これ、スイスの地図です。緑の部分が犬の飼い主への講習を義務づけている州。灰色は法令がない州です。
例)チューリッヒ州のペット免許制度
情報満載、27ページにわたるチューリッヒ州のペット免許制度の最重要点はこちら。↓
- 州と自治体へ、犬を飼うことを申請
- 犬の税金を毎年払う
- 犬専用の傷害賠償責任保険に入る
- 犬をしつける
- 犬種による講習義務を守る(犬種によって指定がある)
- 犬の監督に責任を持つ
- 他人に迷惑をかけないように散歩させる
- 犬の立ち入り禁止区・リード着用義務を守る
- 犬のフンを始末する
- 犬による騒音を防ぐ
- 万一、犬が誰かを傷つけたら、責任のある行動を取る
現在は、体重が15キロ以上の犬のみ講習参加義務があるとのことですが、2022年から施行される予定の新法令では、新たに小型犬を含む全ての犬の飼い主の参加が義務付けられるそうです。
例)フリブール州のペット免許制度
国レベルでのペット免許制度撤廃後、犬が噛み付いた事件が50%増加したことから、2021年、州の法令で「犬の飼い方コース」の参加義務を再びスタート。
参加義務の条件と内容:
- まだ犬を飼ったことがない、または過去10年飼っていなかった
- 犬を飼い始める前に5時間の理論講習
- 飼い始めてから18ヶ月後に「犬がどれだけ言うことを聞くか」テストがある
ベルン州、2018年州議会が新法令を否決「講習参加義務なし」状態
ペット免許制度の新法令がまだない状態のベルン州では、犬の飼い主に講習参加を義務付ける法令はありません。
現在、ベルン州の法令で決められている内容は、こちら↓。
- リードと口輪
家の外で犬にリードをつける義務はない。
例外:
学校/遊び場・スポーツ広場/公共交通機関/駅と停留所/家畜がいる草原/自然保護区域の標識があるところ。
また口輪は、噛み癖のある犬もしくは役所の獣医が必要であると指示した場合には着用義務がある。 - 犬の多頭飼い
一世帯で同時に3匹まで。例外は4ヶ月以下の子犬。 - 自然環境保護
屋外の散歩中、犬のフンの始末をしない飼い主は罰金を払わされると心得るように。 - ペット傷害賠償責任保険に申し込む義務あり
- 犬が傷害事件を起こした場合
医師・獣医・犬のトレーナー・警察は、特に凶暴な事件のケースを役所の獣医に申告する義務がある
27ページに及ぶチューリッヒ州の「ペット制度パンフレット」と比べて、ちょっと頼りない…(←これ、首都なのにチューリッヒへのコンプレックスを感じている(ように、言葉の端から私には映る)ベルンの人が聞いたら大激怒するセリフよ)。
上で例に挙げたチューリッヒとフリブールだけではなく、ヴァリス州・ヌーシャテル州もペット免許を州の法令で再導入することが決まっているそうなので、ベルン居住者としては少し複雑な気分です。
結論として、わが家の近所にいる噛み癖のある犬と飼い主への対応は、居住地の自治体に連絡を入れ、自治体から飼い主に「犬のトレーニング」を促してもらう方法しかないようです。
飼い主からの謝罪はまったくなかったとのことですが、犬に噛まれた被害者の方達も、まだ被害にあっていない私たちも、犬の訓練を自治体がこの飼い主に義務付けることで問題が解決するように、望んでいます。
犬を躾けることも、犬の一途な「ご主人様がNo.1」の愛情を大切に受け止めるための飼い主の責任ですよね。