【W杯】強豪ドイツとスペインを撃破した日本が、完全なダークホース的存在のサッカーワールドカップ。
「スペイン・ドイツ・コスタリカと同じグループの日本は、1次リーグで敗退の可能性が濃厚」と、誰もが予想していたスイスで、日本の勝利に歓喜するスイスの報道からは、お隣の国・ドイツが「元サッカー大国」になったザマミロ感がありありです。
だけど、普段は控えめなスイス人が、ドイツ敗退にほくそ笑んでしまう気持ちもわかる!
【W杯】スイス公共放送のサッカー中継アナ、日本の勝利にはしゃぐ
スイスに在住する私は、日本対スペイン戦を、スイス公共放送のサッカー中継で観戦しました。
第1戦でドイツを撃破した際、「でかした日本!」的なムードにスイスではなっていたものの、コスタリカ戦での負戦で、「あぁ、やっぱり…」感に変化して、スタートした第3戦日本対スペイン。
スイス公共放送による日本対スペイン戦のテレビ中継では、コスタリカ対ドイツ戦の得点も並んで掲示され、注目の的はむしろ「ドイツがどうなるか」といった状況で、放映が開始。
【W杯】日本が1−1でスペインに追いつくと、中継アナの声が弾む
スペインが1−0だった時点では、落ち着いた声でゴールの様子を中継していたアナウンサーが、「リッツ・ドーアン」(←響きが素敵!)の1−1同点ゴールを伝える際には、「面白くなってきたぞ」という思いが視聴者に感じられるほど、声が弾んできました。
スイスのサッカーファンにとっては、ドイツのブンデスリーガはお馴染みの存在(ケーブルテレビで視聴可能)。
ですからW杯のテレビ中継でも、ブンデスリーガで活躍中の日本選手の名前は、所属チーム名と共に、チームでの実績なども、レポートされていました。
【W杯】日本の2−1からは、スイス中継アナの声が裏返りっぱなし
その直後、「2−1か? いや、ボールは線の後ろ側か…」と実況するアナウンサーの声は、日本人が中継しているのではと思うほどのガッカリ感でいっぱい。
ところが、VARで得点が認められた時点から、「ミトマのパス、アオ・タナカのゴールです! すごいぞ、日本!」にガラリとムードが変化。
コスタリカ対ドイツ戦の経過から、日本の決勝トーナメントへのグループ第1位進出の可能性が出てくると、「あり得ないことが、起きています!」と、アナウンサーの声は、裏返りっぱなし。
カメラに映っていなくても、ツバを飛ばして実況しているアナウンサーの様子(失礼)が目に浮かぶほどの、勢いあるコメントの連続でした。
ゲーム終了時には、「目をこすっても、信じられません! 日本人が、再びセンセーションを起こしました!!」と、スイスでも完全に手のひら返しのお祝いムードが生じていました。
【W杯】スイスでは日本の勝利より隣国ドイツの敗退がほくそ笑みの焦点
スイスでは誰も予想さえしていなかった日本のドイツ・スペイン撃破という快挙は、世界的に注目を浴びたあの2点目の動画と共に、報道されています。
日本の勝利に対するお祝いムードは、もちろんあるのですが、スイスにとってやはり興味の焦点は、隣国ドイツの敗退。
テレビ中継の最中にも、わが家が身内と友人の間で交わしたメッセージでは、「このレポートの仕方だと『ドイツの敗退嬉しすぎ』感が出過ぎじゃない?」などと、個人的な意見を交換し合ったほど。
スイスのオンランメディアでは、ドイツのメディアが「かつてのサッカー強豪国・ドイツの衰退」をいかに報じているのかを、さまざまな記事を引用して紹介もしています。
なかには「ドイツ敗退にインターネットは腹を抱えて笑う」など、ちょっとブラックユーモアがひどすぎると、私には思える報道記事までありました。
関連リンク:
watson.ch <<Ende einer grossen Fussball-Nation>>:So reagiert die Presse auf das deutsch WM-Debakel (更新日2022/12/02) (閲覧日2022/12/02)
watson.ch Deutschland ist raus! Und das Internet lacht sich kaputt (更新日2022/12/01) (閲覧日2022/12/02)
【W杯】目の上のたんこぶドイツ敗退でスイスが嬉しいワケ
森保ジャパンチームの選手たちの多くが、ドイツのブンデスリーガで活躍中であることからもわかるように、スイス選手にとっても、サッカーの本場といえば、ブンデスリーガ。
実際、スイス選手のブンデスリーガへの移動が決まると、「これでいよいよ本格的デビュー」みたいな扱いで報道されたり、W杯のコメントも「元ブンデスリーガで活躍したスイス選手」が適用されたりと、ブンデスリーガ=一流選手の箔付けがあるのは、否めない事実。
自己肯定感丸出しのドイツ文化は謙虚さ第1のスイス文化には強烈すぎ
けれども、自己肯定感をことばと態度で表現することを良しとするドイツ文化と、謙虚さ第1で目立たないことを良しとするスイス文化とは、あまり相性が良くないのも、また事実。
例えば私がスイスの公立大学に在籍していた当時は、教授陣の約9割、博士課程の約7割はドイツ人。
自分たちの「できる」能力を過大にPRするドイツ人同期の態度が、「能ある鷹は爪隠す」姿勢のスイス人同期の感情面を逆撫でし(だけどスイス人は文句を言いたがらない)、「何でもかんでも、本当はできないくせに、自慢するんじゃないわよ!」と、思いがけないことが大ゲンカに発展することも、残念ながら日常茶飯事でした。
ですから、W杯などの世界的なスポーツイベントで、「わがドイツのチームは優勝まであと2試合!」などという、「勝って当然」的なニュアンスの漂うドイツの報道を目にするたび、「また能力をひけらかして…」と、眉をひそめていたスイス人は、少なからずいたのです。
実際、ドイツからスイスへ移住した私の友人・知人も、「スイスでは『私はこれができる』のテンション下げないと、ドイツ人は嫌われる」と、自己批判気味に語っています。
【W杯】チームとファンの日本文化の美徳PRは海外在住組の私の誇り
海外在住組の私にとっても、日本チームの大健闘は、ものすごく嬉しい出来事です!!
素晴らしい結果はもとより、画面からも伝わってくるスポーツマンシップの清々しさ(例:ドイツの中継アナも「日本選手は無意味にゴネない、フェアな精神」と称賛)、そしてチームメンバーとファンの方々が清掃活動により日本文化の美点を世界にアピールしている点も、「アジア人」として一括りにされる環境で生きている私にとっては、とても誇りに感じること。
また、日常生活で「アジア人がヨーロッパで生活すること」のさまざまな障壁を体験している私にとって、おそらく自分と似たような経験を乗り越えて、W杯で大活躍しているサッカー選手の健闘ぶりからは、ものすごくたくさんの勇気と希望をもらえるので、ただただ感謝しかありません。
画面の前で手に汗握るか、涙を流すかで大忙しのW杯観戦となっています。←W杯視聴用に、ウォータープルーフのマスカラを引っ張り出してきました(笑)。
スイスは昨晩、セルビア戦で勝利をおさめ(3:2)、日本と同じく決勝トーナメントへの進出が決定したので、優勝戦での対戦も、あり得るかも?!
日本チームがW杯のダークホースとして、ますます邁進できますように!!!