「アイスホッケースイス代表の公式ユニホームが、国旗ワッペン保護法違反で使用禁止された問題で、スイス・アイスホッケー協会とスイス連邦知的財産研究所は、使用許可の認定について法廷で争うことになりました」というニュース。
上出来なエイプリルフールのフェイクニュースに聞こえますけど、実は本物のニュースだというのが、「些細なことにも目を瞑らない」、いかにもスイス的！
ウソのようなホントの大騒動の内訳には、スイスらしさがあふれています（笑）。
アイスホッケーはスイスで大人気の国民的スポーツ
スイスは世界で最もアイスホッケーが盛んな国のひとつである。
引用元：スイス連邦公式サイト（日本語版）＜国民的スポーツ>（更新日2023/02/07）（閲覧日2024/03/14）
・・・と、スイス連邦公式サイトにも記載されているほど、アイスホッケーはスイス人に親しまれているスポーツ。
たとえば私の潜伏地にある「SCベルン」というホッケーチームは、１試合平均の観戦者数が1万6000人以上と、ヨーロッパでの最多観戦者数を記録しているほど人気の的。
ちなみに、ベルンの総人口数は約14万人なので、いかにアイスホッケーの人気度が高いのか、おわかりいただけるかと思います。
それなのに、よりによってアイスホッケー・スイス代表選手の公式ユニホームが、「使用禁止」されてしまった経緯は、コチラ↓。
アイスホッケースイス代表公式ユニホーム・ワッペン使用禁止の経緯
- 2017年に制定された「ワッペン保護法」により、スイスのワッペンは、基本的にスイス連邦の公式機関にのみ使用が許可されている（例：公式書類や身分証明書など）
- ワッペン保護法制定後、①ワッペンを取り除く、または②特例の使用許可申請をするために、2年間の猶予期間が設けられていた
- ところが、スイスのアイスホッケー協会は、ワッペン除去も特別申請も行わないまま、猶予期間が終了
- よって、スイス連邦知的財産研究所はワッペン付きのアイスホッケースイス代表公式ユニホームの使用を禁じる
- 無許可のワッペン使用は、最高5年までの懲役刑で罰せられる
- 2024年3月、代表ユニホームの使用禁止解除を求めて、国会議員2名が特別使用許可申請を提出。ただし、「法律改正」が必須のため、問題解決まで数年かかる見込み
- 現在、アイスホッケー協会は知的財産研究所を相手取り、裁判所への訴訟を起こしている模様（詳細は報道なし）
偽物のコピー商品ならまだしも、国の代表選手が着るユニホームに「スイスのワッペン」が無許可でデザインされていることで、ここまで問題がこじれているのが、いかにもスイスらしいところ。
現地メディアには、
- アイスホッケー協会からのワッペン特別使用許可申請は、猶予期間を大幅に過ぎてから提出された
- 「法の前には皆が平等である」ため、ワッペンの特別使用許可が認められていないアイスホッケースイス代表公式ユニホームに特例は許されない
と、スイス文化らしい「期限厳守」と「忖度なしで法令実行」を重んじる、スイス連邦知的財産研究所代表者の発言が、掲載されています。
だけど「忖度なし」という建前のもと、外国人超富裕層の移住者をバリバリ受け入れているスイスですもの。何やら抜け道があるのでは・・・と思ったら、やはり裏技があると判明。
これもいかにもスイス的：ワッペンではなく国旗なら使用OKの裏技
実は、アイスホッケー以外のスポーツ種目・スイス代表選手のユニホームには、すでに「ワッペン」ではなく「国旗」が使用されているそうで、「国旗」ならば使用OKだとか。
「なんのこっちゃ？」と思いましたら、
- ワッペン＝盾のような形状。国・州・地方行政機関のみ基本的に使用可能
- 国旗＝四角い形状。スイスを象徴するシンボルとしての使用は基本的に自由。ただし、スイスらしさを損ねる、または誤解を招くような使用は認められていない
とのこと。
ほぼ理解困難な僅差に関する説明だったので、わかりやすく超訳したのですが、この細かさこそ「ザ・スイス」！
アイスホッケー協会が、さっさと国旗を使用した新デザインのユニホームを作れば、問題は解決できるはずなのに、そうはならないところも、スイスらしいです。
アイスホッケーのW杯や世界選手権のときには、ユニホームのワッペン問題にどう対応するのか、今から気になります。
＜参照サイト＞
20Minuten <Wappenstreit bei Hockey-Nati: Jetzt wehren sich die «Beamten»>（更新日2023/03/13）（閲覧日2024/03/14）
watson <Wappen, Flagge, Fahne – was ist der Unterschied?> （更新日2023/03/13）（閲覧日2024/03/14）
