イギリスのヴァージン・アトランティック航空が、大手航空会社として初めて客室乗務員のタトゥーを条件付きながら許可すると、2022年5月31日発表しました。
保守的なお国柄のスイスの航空会社の反応は、やはりコンサバと判明。
職場でタトゥーをあからさまにすることが、スイス社会ではどのように定義されているのかも気になったので、調べてみました。
ヴァージンが客室乗務員のタトゥー露出につけた条件とは?
ヴァージン・アトランティック航空の客室乗務員への新規定で引き続き禁止されているタトゥーは、
- 顔と首にあるもの
- 裸・暴力・アルコール・薬物などに関連するタトゥーのデザイン
顔と首にあるタトゥーについては、のちに規定を緩和するかどうか考慮中だと、ヴァージン・アトランティック航空はコメントしています。
条件付きながらもタトゥー露出を許可した理由は、各個人の「自分らしさ」を尊重するという考えに基づくものだそうです。
それにしても、ヴァージンのクルーって、はっちゃけた雰囲気がして楽しそう♪ お給料がいいのかどうかは、知らんけど。
保守的な国・スイスの航空会社はコンサバ路線:タトゥーは禁止
コロナ禍の人員削減により、スイスの航空会社では現在、客室乗務員不足が問題となっています。
2022年の5月には、乗務できるCAさんが揃わなかったため、スイスインターナショナルエアラインズ(昭和世代の私にとっては、今なおスイスエアーの方がお馴染み)が、複数のフライトをキャンセルする事態となったのは、記憶に新しいところ。
「それならタトゥーOKとすれば、客室乗務員になりたい人員が集まるのでは?」という意見は、スイスインターナショナルエアラインズ(まどろっこしい!)にとっては、依然と「No go」のようです。
同じくスイスが本拠地のエーデルワイス航空でも、客室乗務員のタトゥーはまだ、ご法度。
エーデルワイス航空の労働組合は、「タトゥー規制により、良い人材が客室乗務員の職に応募してこないことは遺憾である」とコメントしています。
この発言は、スイス社会でいかにタトゥーが浸透しているのかを反映する内容ではないか、と私は思います。
・・・エアラインに就職したい日本の学生さんは、見える場所にタトゥーのある人たちは皆無でしょうから、その人たちをスイスの航空会社で雇ってほしいなどと、考えてしまう私。
コロナによる採用ストップで、苦しんでいらっしゃる方が多いのではと、つい想像してしまうので。
う〜ん、世の中って、難しい。
スイス社会におけるタトゥーの許容は職業ごとに異なる
航空会社ではまだ露出禁止とはいえ、スイスの他の職業ではタトゥーが認められているのかが気になったので、調べてみました。
- 小売業の店員:全体の清潔感と親切で的確な対応を重視しているので、基本的にタトゥーはOK。限度を超えている場合には、上司が判断。
- 銀行員:タトゥーもピアスも禁止されていない。ただし、顧客サービスにあたる社員は、整った身だしなみであることが重要視されているので、タトゥーは見えてはいけない。
- 警察官:見える場所にタトゥーがある人は、採用されるチャンスがほぼない。
- 郵便局員:タトゥーの有無より、デザインの内容が問題。差別や嫌悪感を呼び起こすデザインと、顔面の行き過ぎたピアスは好ましくない。
- レストランのサービス:タトゥーのせいで不採用にはならないが、基本的に奨励はしない。
- 病院職員:あえて禁止事項にはなっていないが、整った身だしなみが大切なので、必要であればケースバイケースで上司が判断。
- 牧師・神父:これまでタトゥーがテーマになったことはないので、特に規定もなし。
参照サイト:SRF <Meistens kein Problem – aber sie dürfen nicht sichtbar sein> (更新日2017/06/12)(閲覧日2022/06/05)
大学講師の素敵な女性が、足首に大きめのタトゥーがあるのを発見した学生たちがどよめいた、なんてこともありました(私も「ワァオ」と声を上げたひとり)。
海外あるあるで、奇妙な漢字をタトゥーのデザインに選んでしまった知人(偶然にもエアラインのクルー)の話は、コチラ↓。
【SWISS】客室乗務員の身だしなみ規定に新ヘアスタイル追加
ちなみに、スイスインターナショナルエアラインズでは、男性クルーのマンバン(ちょんまげと言わないと初めて知ったわ)、アンダーカット(日本ではツーブロックでお馴染み)のヘアスタイルは、時代の変化を受けてOKになったそうです。
女性クルーがアンダーカットしたくなったら、OKかどうかは不明ですが、おそらく大丈夫なのでは。
日本の学校でツーブロックが禁止というニュースは頻繁に目にしていたのですが、航空会社のSWISSでも禁止だったとは、オドロキ。
ツーブロックが何なのか、よくわからない私が参照したのは、コチラ↓のNHKのサイト。写真付きでとてもわかりやすいはずなのに、まだツーブロックのスタイルが見極められない私、男の子の母でなくて、よかった。
外部リンク:NHK 首都圏ナビ Webリポート <「ツーブロック禁止」校則に悩む理容師 “刈り上げ”なのにダメ!?>(更新日2022/03/11)(閲覧日2022/06/06)
なぜツーブロック(=アンダーカット)がヨーロッパでも問題視されていたのかが気になってネット検索してみたら、ウィキペディアのドイツ語版で該当する記載が見つかりました。
アンダーカット(髪型)
このヘアスタイルは、1920年代から1940年代にかけて既に人気があり、2012年にSüddeutschen Zeitung(南ドイツ新聞)により「HJ(ヒトラー・ユーゲントの略)ヘアスタイル」と名付けられた。
引用元:フリー百科事典 ウィキペディアドイツ語版 : Undercut (Frisur) (閲覧日2022/06/06 11:00 UTC) の記載事項を、サイト運営者が一部抜粋して日本語に翻訳
では、ドイツに本拠地を置くルフトハンザでは、ツーブロックがまだ禁止なのかな?と思い、再検索。
ルフトハンザとオーストリア航空では、スイスインターナショナルエアラインズの新規定導入以前の段階で、ツーブロックのヘアスタイルはOKという身だしなみ基準が適用されているそうです。
やはりスイスは慎重派。まずまわりの動きを観察してから意思決定するのが、永久中立国・スイスに根付く文化なのです。
もしかして、日本の航空会社がタトゥーOKなんて日がいつの日か訪れたら、スイスの航空会社でもタトゥー規定が変更になるかもしれません。
そしたら、パンチパーマは禁止になるのかしら…。
やっぱり日本の航空会社の身だしなみが最高!(完全にえこひいき)
どんなにスイス潜伏期間が長くなっても、日本のエアラインを利用するたび、CAさんたちのカチッとした身だしなみから清潔感を感じて、ホッとする私。
海外の航空会社を利用すると、「あら、あのCAさん、髪の毛をクリップで留めているのはいいけれど、あんなに毛の束がほどけてきている…」とか、「スカーフ、ここをキュッと結んだら、形が崩れないのに〜」と、完全にウルサイ姑目線で、自分が嫌になります(笑)。
追記:スイスインターナショナルエアラインズのCA募集はまもなくある?
スイスインターナショナルエアラインズは、客室乗務員不足のため、夏の繁忙期に約100のフライトをキャンセルせざるを得ないというステートメントが、2022年6月7日、新たに発表されました。
2001年のスイスエアー経営破綻後に発足したスイスインターナショナルエアラインズは、スターアライアンス加盟航空会社。2007年からはルフトハンザの子会社となり(LHが買収)、現在に至っています。
深刻なCA不足を補うために、夏の間は親会社であるルフトハンザの客室乗務員がSWISS便に乗務することで、欠航便を最小限に抑える必要があるほど、SWISSの人員不足は深刻な状況だそうです。
コチラ↓が以上の内容を報道したスイスの大衆紙・ブリックの記事(更新日2022年6月8日)。
スイス在住者の立場から私見を申し上げると、経営破綻・LHによる買収・コロナ禍での大量解雇と、SWISSに対するイメージは、スイス国内ではガタガタに崩れている印象を受けます。
何と言っても、スイスという国のナショナルフラッグキャリアがドイツの航空会社に吸収されてしまったショックは、国内で波紋を呼びました。加えて今回のブログ記事でお伝えしたように、SWISSではタトゥーを隠さなくてはいけないから、面倒だというのは侮れない問題(ちなみにスイスでタトゥーがある率は、5人に1人)。
スイスインターナショナルエアラインズがヨーロッパで直面している深刻なCA不足が、日本ベースでの客室乗務員募集にすぐつながるかどうかは、私にはわかりかねます。
しかしSWISSの現状を考慮しますと、日本における客室乗務員募集がいつ行われてもおかしくないのでは、と想像します。あくまで私の個人的な意見ですが。
航空会社の採用試験が、1日も早く再開されることを祈っています。
<参照サイト>
stern <Erste große Airline erlaubt Kabinenpersonal, Tattoos zu zeigen – doch es gibt auch Ausnahmen> (更新日2022/06/02)(閲覧日2022/06/05)
watson < Britische Airline erlaubt Tattoos – so reagieren Swiss und Edelweiss> (更新日2022/06/04)(閲覧日2022/06/05)
20min.ch <Die Swiss erlaubt neu Man Bun und Undercut bei Flugbegleitern>(更新日2021/06/22)(閲覧日2022/06/06)