『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』幽霊と人間、どちらが怖い

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』幽霊と人間、どちらが怖い 読書感想

日本で唯一、事故物件専門のお祓いを引き受けている照天神社の金子雄貴宮司の著作、『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』を読むと、幽霊より生きている人間のほうが、怖くなるかもしれません。

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』著者・金子雄貴宮司のプロフィール

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』著者・金子雄貴宮司のプロフィール
  • 1960年生まれ、東京都の出身
  • 國學院大学文学部神道学科卒業。宗教法人「照天神社」の代表役員宮司
  • 「日本で唯一の事故物件専門お祓い宮司」として、2005年からお祓いをした事故現場は1500件以上

照天神社は、不動産業の神様「国之常立神(くにのとこたちのかみ)」をお祀りする、日本で唯一の不動産の神社だそうです。

ちなみに「宮司」とは、

神社に仕え、祭祀・造営・庶務などをつかさどる者の長。

引用元:コトバンク デジタル大辞泉 <宮司>(閲覧日2024/10/28)

とのことです。

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『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿(金子雄貴著)』あらすじ

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿(金子雄貴著)』あらすじ

本書には、不動産業の神様「国之常立神(くにのとこたちのかみ)」をお祀りする照天神社の金子宮司が、日本で唯一の事故物件お祓い専門宮司として、

  • どのように事故物件のお祓いを行なっているのか
  • 事故現場での怪奇現象の実例
  • 特別に不思議なお祓い体験の具体例

が綴られています。

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『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』著者のメッセージは?

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』著者のメッセージは?

生きている人であっても、死んでいる人であっても、苦しんでいる人のためなら、わたしは宮司という立場で話を聞いてあげたいと思っています。

そして、お祓いによって生きている人が笑顔になることが、わたしにとってなによりの幸せです。

引用元:『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿(金子雄貴著)』 少し長いおわりに これからも御霊を救う宮司でありたい

というメッセージを体現するように、事故物件のお祓いと供養を行なっている金子宮司の真摯な姿勢からは、背筋が凍るほど不気味な現場を浄化する清々しさと、人に寄り添う優しさが伝わってきます。

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』最も印象に残るエピソード

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿』最も印象に残るエピソード

どのエピソードも強烈なため、選択が難しいのですが、金子宮司にとっても初めての体験となるお祓いシーンは、非常に印象深いです。

  • 事故物件専門宮司に結びついた、初めての孤独死現場お祓い体験
  • 夜のお店の御用達神社になったきっかけ
  • ラブドールの御霊入れ聖地になるまでの展開

と、「まさか」の展開が続々。

怪奇現象に遭遇するのと同じレベルの驚きを、本書は提供しています。

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿(金子雄貴著)』私の感想

『はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿(金子雄貴著)』私の感想

この本を手に取ったきっかけは、私の潜伏地・スイスのベルンで有名な幽霊屋敷が、霊障のために建築以来500年以上空き家だったのに改築して、2025年から入居者を募集しているというニュースでした。

「こういう物件って、日本なら『お祓い』を受けるのでは……」と考えた私が、本の中でいちばんショックを受けたのは、凄惨な事故物件の様子ではなくて、金子宮司が神社界でパワハラに遭い、うつ病に苦しめられたというくだり。

事故現場で怪奇現象を起こす幽霊も恐ろしいのですが、お祓いで浄化される死者の霊とは異なり、神職にありながらもいじめを厭わない人たちがいるなんて……。

やはりこの世でいちばん恐ろしいのは、生きている人間なのだと思うと、心が寒々しました。

また、事故物件のお祓いは通常の神社ではお断りの対象だということも、本書を読むまで私は知らなかった点。

「苦しいときの神頼み」で、神社にすがる事故物件の所有者や居住者が、頼りにした神社に肘鉄砲を食わされたら、途方に暮れてしまいそう……。

けれどもさまざまな苦難を乗り越えてきた金子宮司が、自ら建立した照天神社で、あの世とこの世で苦しみを抱えている人に寄り添っている姿からは、救いを感じます。

とはいえ、人とのつながりがどんどん希薄になっているこの世の中、10年もしたらどこもかしこも、孤独死が発生した事故物件だらけになるのではと考えると、一抹の寂しさと不安を拭いきれません。

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