世界に82ある4000m以上の山のうち、48峰が位置する山国・スイス。
それらの山々の頂上は、万年氷に覆われている状態なので、地球温暖化の影響を受け、過去60年間に標高が激減。
最高値で29メートルも減少していると判明し、このままではスイスにある4000m峰は消えゆく運命にあると、現地の日曜新聞Sonntagszeitungが報道しています。
過去60年間で標高が激減したスイスの山:ワースト10
山の名前 | 標高減少(m) | 2023年の標高 | 1960年の標高 |
パロッツピッツェ | −29 | 4434 | 4463 |
ペータースグラート | −25 | 3192 | 3217 |
ピーニュ・ダロラ | −15 | 3781 | 3796 |
テテ・ブランシェ | −13 | 3711 | 3724 |
テディ | −12 | 3570 | 3582 |
フレッチュホルン | −11 | 3985 | 3996 |
ヴァイスミース | −10 | 4013 | 4023 |
ユングフラウ | −8 | 4158 | 4166 |
ビスホルン | −8 | 4151 | 4159 |
キャスター | −7 | 4223 | 4230 |
スイス連邦の地形研究所によれば、スイス全土の山々で、1m〜29mの標高減少が確認されたそうです。
唯一の例外:メンヒの標高は+11m。理由はやはり気象変化と地形
ただし、メンヒだけは唯一の例外で、1960年から2023年までに、標高が11mも高くなっているとのこと。
メンヒの標高が高くなった原因は、その特殊な地形と気象の変化による影響で、頂上への積雪量が異常に増えているためだと、新聞記事内では解説されています。
標高減少で4000m以下になった山への人工的な復活計画で大騒動
標高減少ワーストリストの第6位である「フレッチュホルン」は、1900年代初めまで4001mの標高が記録されていた山。
ところが、浸食作用・氷河の雪解け・正確な測定方法の導入などの理由により、4000m級のステイタスを喪失してしまうのです。
フレッチュホルンがある自治体ザース・グルントの一部の住民にとって、自分たちの山が4000m級クラスから脱落してしまった事実は耐え難い模様。
そこで、乾式壁の技術を用いてフレッチュホルンを再び4000m以上の高さにしたいという工事要望書が1998年、州に提出されたのを機会に、賛成派と反対派の意見が衝突する大騒動が発生!
結局、州は2年余りの考慮を重ねたのち(←スイス的には非常に長い時間)、「税金への負担が多すぎる」と決定したため、フレッチュホルンへの人工的な「整形手術」は、行われないことで事態は終結か・・・と思いきや、定期的にフレッチュホルン再建計画が報道されているので、完全終結には至っていないようです。
頂上が氷河の4000m級計測観察はスイスが直面する新分野の問題
スイスにある4000m級峰の頂上にある万年氷河が、地球温暖化によりどれだけダメージを受けているのかという問題を正確に検証するためには、地理学と氷河学の専門家たちによる共同作業が不可欠。
ただし、スイスではこれまで、地理学の専門家は「高さの精密な測定」に、氷河学の専門家は「氷河の融解」に焦点を置いていたため、「高山の氷河融解による標高の変化」については、ほとんど研究がなされていない状態とのこと。
現時点ではっきりしているのは、「今後、冬の降雪量が再び増えるとしても、山の頂にある氷が溶けるスピードの方が早いため、スイスにある4000m級の山々は、標高を失い続ける」という悲観的な変化だけのようです。
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言葉を絶するほど美しい、スイスの雪山。
この素晴らしい大自然の恵みが、未来にも失われないことを祈ってやみません。
スイスにある4000m以上の山々を一覧できるサイトは、コチラ↓。
<参照サイト>
NZZ <Kein Witz! Walliser wollen neuen Viertausender bauen> (更新日2022/02/21)(閲覧日2024/01/09)