女優の中谷美紀さんが、ドイツ人のパートナーのお子さんを「継娘」と表現していらっしゃるニュース記事を拝見して、心がモヤモヤした私。
私がモヤモヤした原因は、夫の両親(スイス人)が結婚/離婚を繰り返したことにより、彼らの新しいパートナーと、夫は「継子」、そして私は「継嫁」として、お付き合いをしなければいけない立場にいるから。
親/義両親が選んだ新パートナーとのお付き合いは、時には快適、時にはとても不快な関係として、わが家の生活に影響を与えてきたので、心がざわついてしまうのです。
そんなわが家の体験をもとに、ステップファミリーが快適な共同生活を過ごすためのコツを、まとめてみました。
【この記事でわかること】
- 心理学の見解:ステップファミリーの出会いから成立まで。理想的なケースの4段階
- 親の新パートナーとの関係:継子・継嫁の立場で実際に体験した失敗例/成功例
【ステップファミリー】離婚率50%・両親が共同親権を持つスイス
結婚した夫婦の2組に1組が離婚しているスイスでは、ステップファミリーは珍しい存在ではありません。
離婚率を国別に比較したデータ(2020年)によれば、調査に含まれた世界41ヵ国のうち、スイスの離婚率はランキング13位、日本は29位とのこと。
出典:グローバルノート <世界の離婚率 国別ランキング・推移>(更新日2022/09/15)(閲覧日2022/12/05)
そしてスイスでは、離婚後の単独親権は、非常に稀。
通常のケースでは、子どもの養育は両親の共同親権が原則なので、子どもたちは必然的に、離婚後両親の人生に登場する新しいパートナーたちと、交流を持たざるを得ない環境にあると言えます。
私の夫は、男ばかりの3兄弟。夫の両親が離婚したのは、子どもたちが12・10・8歳だった時なのですが、本人たち曰く、両親の人生に現れた新しいパートナーと関係を築くことが前提とされている自分たちの環境への不満と不安は、「両親の離婚」という衝撃的な出来事以上に、乗り越えるのが容易くない問題だったそうです。
関連サイト:法務省 <父母の離婚後のこの養育に関する海外法制について(更新日令和2年4月)>(閲覧日2022/12/05)
【ステップファミリー】出会いから成立までの4段階:心理学の見解
子連れであってもなくても、離婚後の大人の恋愛が御法度ではないヨーロッパでは、心理学の見地からも「ステップファミリーが成功するための秘訣」が、さまざまに提案されています。
一般的に、親・子ども・親の新パートナーがたどるステップファミリーの歩みは、
- 親と新パートナーの恋愛関係と、親子間にあるつながりが「ご対面」
- 親の恋愛と親子関係の間での権力争いと各自の位置付け
- 状況が沈静化し、新たな関係性へ移行
- 親・新パートナー・子どもがそれぞれ「自分らしい姿」で関係を築く
という4つの段階が交差しながら、理想的な状態に近づいていくと、提唱されています。
【ステップファミリー】①親の恋愛感情と親子間のつながりがご対面
親と新パートナーの頭の中が、恋愛感情でお花畑になり、明るい未来を夢見ているのとは反対に、両親の離婚で日常の「あたりまえ」が消滅した子どもの焦点は、「失った過去」。
親の新パートナーは、愛する恋人の連れ子と「仲良し」になれるよう、美味しい手料理を作ったり、好きそうな物を買い与えたりと努力する傾向があります。
しかし、新パートナーに夢中で、わが子である自分たちにはあまり注目していない親の態度を感じ取っているお相手の連れ子にとって、新パートナーは、「邪魔者」。
子どもは、親の離婚と新パートナーの存在により、「親子間のつながり」が消えていく感覚を、幾重にも味わいます。
【ステップファミリー】②親の恋愛と親子関係の権力争いと位置付け
親の愛情を、他人である新パートナーと分け合わなければいけない状態は、子どもにとってはショック極まりない現実。
最初は善意でお相手の子どもを受け止めようとしていた新パートナーの忍耐も、素っ気ない/憎らしい態度を取り続ける連れ子の前に、途切れがちになるのがこの頃です。
各家庭の習慣の違いは、同じ屋根の下での生活の中で初めて浮き彫りになるので、新パートナーが持ち込むルールと子どもが育った家庭のルールがぶつかり合い、もめごとも多発。
新旧ルールの権力争いを通じて、ステップファミリー内での新パートナーと連れ子の立ち位置が決まります。
子どもの心が親の離婚でズタズタになっていることを、どうか大人は忘れずに。
同時に、大人は自分にとって大切な主張を子どもにも伝え、一緒にわだかまりを解決しないと、トラブル期から抜けられないので、上手く言葉を選んで関係者全員の合意点を探す努力が必要です。
【ステップファミリー】③状況が沈静化し、新たな関係性へ移行
新パートナーに反発することで、親から再び全愛情を注いでもらえると信じていた子どもたちは、「親・新パートナー・連れ子」という三角関係の中で、新しく自分たちに与えられた立ち位置を容認することが不可欠なのだと、気づき始めるのがこの段階です。
離婚した親の片側にだけ新パートナーがいる場合、もう片方の親が自分の不幸な立場を子どもたちに愚痴り、子どもと新パートナーとの円滑な関係作りを阻止しようとする可能性もあります。
けれども子どもが必要としているのは、たとえ両親が離婚しても、親子関係は維持していけるという確信。
親同士のもめごとに子どもを巻き込むのは禁止行為だと、親は意識して子どもに接するべきです。
また、新パートナーも親子間の争いには踏み込まないように心がけることが大事。お相手の子どもとの快適な距離感をキープした、互いに尊敬し合えるお付き合いの仕方に、焦点を当てましょう。
【ステップファミリー】④各自が「自分らしい姿」で関係を築く
親・新パートナー・子ども各自の関係性と、「どうしても譲れないこと」がお互いにとって明らかになり、認め合えるようになると、次第に新しい枠組のステップファミリーの中で、独自のルールや習慣が誕生します。
両親が、離婚後に築いたふたつの生活環境を渡り歩く子どもは、常にどちらかのルールに合わせて対応する必要があるのだという事実を、親と新パートナーは忘れずに、子どもに向き合ってあげてください。
親・新パートナー・連れ子の誰かが我慢しすぎている状態だと、長期的にはストレス噴火と関係悪化につながるだけ。
聞き手を挑発しない言葉を選んで、少しでも気にさわることは問題が大きくなる前に解決する努力を全員が継続し続けることが、ステップファミリーの生活が成功するカギだと言えます。
時には「大人ばかりが努力するのは理不尽」という感情が芽生えるかもしれません。
でも、子どもは親の離婚と新パートナーとのお付き合いという困難な課題を、回避できない状況にいるという事実を、どうか忘れずに。
【ステップファミリー】親の新パートナーと連れ子の関係:悪い/良い例
私の夫の両親は離婚した後、ふたりとも数回の結婚と離婚を繰り返してきました。
親が新たなパートナーとのお付き合いを始めるたびに、夫と私は継子・継嫁の立場で、親の新パートナーとの関係を築く必要に迫られてきたのです。
その結果、子どもの立場から良い関係を持つことができた人、または逆に険悪な付き合いになってしまった人の両方のタイプを、経験してきました。
【ステップファミリー】親の新パートナーと連れ子の関係:NG編
夫の3兄弟がまだ幼かった当時でも、成人後でも、連れ子の立場から勘弁してほしいと思う親の新パートナーのNG行為は、「私は継母/継父で、あなたたちは私の継子」と、言葉と態度であからさまにすること。
- 子どもには「実の父母」がいて、子どもの関心は実の父母との関係性を維持すること
- 子どもは親が勝手に選んだ新パートナーを「継母/継父」に選んだわけではない
という事実を、新パートナーが正確に把握していないと、お相手の連れ子とお互いが自分らしく共同生活を送る未来は、遠いでしょう。
もちろん、親・新パートナー・連れ子全員の関係性が、互いの努力と時間が熟することによって、心地よくお付き合いできる段階に達していれば、「継母/継父」と「継子」として認識し合うことも可能です。
けれども、「継母/継父」と「継子」という呼び名の冠は、子どもの立場にしてみると、ウザいもの。だって、呼び名を通じて「親子」という上下関係を、新パートナーが利用していると感じるので。
継嫁の立場にいる私ですが、「継母/継父のポジション」を誇張するお相手とは、感情面でこじれる問題が多発する傾向にあります(残念ながら、現在進行形)。
【ステップファミリー】親の新パートナーと連れ子の関係:理想的な形
- 大人同士の恋愛関係と、パートナーと連れ子の親子関係は、「別物」だと認識
- 「継母/継父」と「継子」という親子の上下関係に頼らず、連れ子と同じ目線に立つ
- 意見の相違がある場合には、尊敬を表しながらもハッキリ議論
- お互いにとって大事なことを尊重し合える
義父のかつてのパートナー(残念ながら離婚)は、上記4点を見事にクリアしていた人でした。
ステップファミリーの中で、お互いの境界線がどこにあるのかが、初めから関係者全員に明らかだったので、むやみに傷つけ合う体験は、ゼロ。
「親の恋愛という大人の事情で出会った私たちが、『家族』の枠に閉じ込められるのは、私が連れ子の立場だったら、嫌だと思う」というスタンスを崩さずに、常に思いやりと敬意を言葉と態度で示してくれた新パートナーとの関係は、ステップファミリーとして理想の形でした。
私たちにとっては、ステップファミリーであっても、親・新パートナー・連れ子が良い関係を築くことが、現実に可能な実例として、心に刻まれた体験となりました。
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今回お届けした記事の内容が、快適なステップファミリーの構築に、少しでもお役に立てることを、願っています。
<参考文献>
Grünewald, Katharina: “Glückliche Stiefmutter. Gut zusammenleben in Patchworkfamilien“. Herder-Verlag, 2.Auflage 2018.