【スイス建国記念日】恒例の花火大会、地球温暖化の影響で中止決定

スイスライフ

スイス連邦の建国記念日・8月1日の伝統といえば、各地で行われる花火大会。

ところが2022年は、1州を除く連邦全土で、恒例の花火大会が中止と決定されました。

7月上旬からの異常気象により、スイスが極度の乾燥状態に陥っていることと、コロナの3密防止が中止の原因かと思いきや、世間で花火大会の反対派が増えていることも、少なからず影響を及ぼしているようなのです。

【欧州の異常気象】極度の高温・乾燥はスイス全土に/屋外で火気厳禁

【欧州の異常気象】極度の高温・乾燥はスイス全土に/屋外で火気厳禁
引用元:スイス連邦環境庁 森林火災危険 現在の危険度 (閲覧日2022/07/31)

観測史上初という高気温が、ヨーロッパの各国で記録されている2022年の7月。

私の居住地・スイスでも、森林火災を防ぐために「屋外での火気取り扱い」が、各州により条件つき、または全面的に禁止されています。

えんじ色:屋外での火気取り扱い全面的に禁止
:屋外での火気取り扱い州の一部で禁止
オレンジ:森の中での火気取り扱い全面的に禁止
黄色:条件つきで火気取り扱い禁止(正式に設置されている花火専用の場所のみOK。ただし十分な消化対策が必要)
画像の灰色部分は、湖・河川です。

【スイス建国記念日】恒例の花火大会が1州を除く連邦全土で禁止

【スイス建国記念日】恒例の花火大会が1州を除く連邦全土で禁止
引用元:SRF <Feuerwerksverbot am 1. August: Das gilt in Ihrem Kanton> (更新日2022/07/28)(閲覧日2022/07/31)

けれども、「スイス建国記念日の恒例・花火大会の主催者は州だし、大丈夫よね?」と、心待ちにしていた私は、ガッカリ。

スイス連邦にある26州のうち、バーゼル都市部を除くすべての州で、2022年の花火大会は中止と決定されました。

ちなみに花火大会だけではなく、個人による花火の使用も、上の画像での色分けの通りに禁止されています(ブログ記事投稿日・2022/07/31の情報)。

黄色:十分に注意を払って花火を使用する
藍色:花火禁止
:州の一部で花火禁止
水色:森の中および森の近辺での花火禁止

【スイス建国記念日・恒例の花火大会中止】乾燥とコロナ以外の理由

【スイス建国記念日・恒例の花火大会中止】乾燥とコロナ以外の理由

「ベルン州では8月1日の公式花火大会は中止。個人による花火使用も全面禁止」と条例が公表されたのは、7月最後の週、建国記念日の数日前のこと。

静粛時間が社会のマナーとして重んじられているスイスですが、8月1日は、騒音を出すことが許容されている、数少ない日のひとつ。

自治体が正式に開催する花火大会以外の前後に、個人もそれぞれ、派手に花火を打ち上げて楽しむことが、恒例行事でもあるのです。

公式の花火大会も、個人による花火使用も禁止となれば、花火専門店は、相当の打撃を受けることは確実です。

ニュースを目にした私の頭によぎったのは、「あの有名なベルンの『花火屋さん』は、どうするのだろう」という思いでした。ベルンにある花火の専門店は、スイスではとても有名なお店。私も何度か、利用した経験があるのです。

【スイス建国記念日恒例花火禁止】花火専門店店主が感じる世論の変化

【スイス建国記念日恒例花火禁止】花火専門店店主が感じる世論の変化

すると本日付(2022/07/31)の日曜新聞・SonntagsZeitungに、該当の花火専門ショップ店主、ハンスペーター・クリーグさんのインタビュー記事が、掲載されていました。

日曜新聞の記事には、

  • 花火専門店の損失額は、約3100万円(220’000スイスフラン)
  • 店主は過去にも干ばつを体験しているが、個人の花火使用が禁止された例はない
  • 花火禁止令への問合せメールを役所に送信するも、担当者は休暇中で連絡取れず
  • 店主が、ベルンのアメリカ大使館の建国記念日パーティー(2022年7月4日)に計画・実行した花火大会が批判されたことへの不満
  • 法律改正を求めるイニシアチブを目的として、現在行われている「スイス全土での建国記念日と大晦日での個人による花火全面禁止」を目指す署名活動への不安

といった店主側のご意見が、報道されていました。

地球温暖化重視で花火禁止意向の世論が吹くスイスはCO2排出大国

地球温暖化重視で花火禁止意向の世論が吹くスイスはCO2排出大国

スイス全土に「花火禁止」の意向が高まる背景を受け、スイス公共放送SRFは、

スイス国内での花火によるCO2年間排出量78トン
=チューリッヒーフィジー間の片道フライト27回分
=スイス人20人分のCO2年間消費量

と比較する記事を、早速公開。

でも、「だから花火を目の敵にしなさんな」などと明確な姿勢を取らないところが、非常にスイス的な報道スタイルなので、日本育ちの私には興味深く映る点でもあります。

実のところスイスは、CO2排出大国のひとつ。世界のCO2排出量の2〜3%はスイスによるものとのことで、日本と並ぶ規模だそう。

スイスに居住している私にしてみると、「ゴミ分別が本当に細かいし、リサイクルが世界トップレベルなのに、なぜ?」という疑問も感じたのですが、生活レベルの高いスイス国民は、輸送手段(飛行機・車)・ゴミの量・住居の暖房に伴うCO2排出量が多いとのことです。

【スイス建国記念日恒例花火大会・個人使用禁止】今後の展開への私見

【スイス建国記念日恒例花火大会・個人使用禁止】今後の展開への私見

日曜新聞の掲載記事で指摘されていた、ベルンのアメリカ大使館が催した花火大会を、たまたまわが家から楽しむことができた私。

記事によれば、一切の予告なしで突然始まった花火大会の意図は、パーティのサプライズ感を盛り上げるためだったそう。

私たち家族はそのようなわけで驚きつつも、22時過ぎから15分ほど続いた花火の様子を動画に収め、友人・知人に送ったところ、皆「コロナ関連でふさいでいた気分が吹き飛んで、最高!」と大喜び。

私自身も、「良いものを拝ませてもらいました」と心から楽しめたので、騒音(ペットが怖がる・避難民が戦争を連想するという理由)や、CO2排出量への思案から批判が上がったと新聞記事で知り、その事実を驚きの気持ちで受け止めました。

日本と同様に、コロナ以降のスイス社会も悲壮感が増し、全体がギスギスした雰囲気になってしまったと感じる今日この頃。

連日の異常気象を体験することで、地球温暖化への対策の必要性もひしひしと感じておりますが、「美しいものを愛でる」感動を呼び起こす花火大会や花火の使用は、できれば伝統として続いてほしいと、私は願っています。

日本で「花火禁止」の旋風が、巻き起こらなければいいのですが。

<参照記事

SonntagsZeitung <<Jetzt ist dann mal gut mit Verboten!>> (日曜新聞紙版2022/07/31)(閲覧日2022/07/31)

SWI <小国スイスはCO2排出大国> (更新日2022/07/18)(閲覧日2022/07/31)

SRF <So schädlich ist Feuerwerk fürs Klima wirklich> (更新日2022/07/31)(閲覧日2022/07/31)

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