「007/No Time to Die」は、私が初めて泣いたボンド映画。
ジェームス・ボンドを冷たいスパイから、人間味のあるキャラクターに変化させたダニエル・クレイグの集大成にふさわしい、壮絶で勇敢な最終作は見逃してはダメ!
エンドクレジットのすべてが終わるまで、私が席を立たずに映画を鑑賞したことが過去にあったかどうか、覚えていないのだけど、今回のボンド映画では本当に最後の文字、「No Time to Die」が画面に現れるまで、私は座席に埋もれていた。
ダニエル・クレイグの007、かっこよすぎ。
そして単なるアクション映画ではすまされない、素晴らしいカメラワーク。
2時間43分と長めの上映時間なのに、1秒たりとも退屈しなかった。
<注意:本文中、ネタバレになる部分があります。>
007映画、ダニエル・クレイグのおかげで時代に沿った内容に脱皮
私にとって長年、ジェームス・ボンド映画といえば、クリスマスやお正月休みの時期に、たまたまテレビで放映されているから見るカテゴリーの映画。
そうしてテレビで偶然目にした「Sky Fall」(ダニエル・クレイグ007の3作目)で、私の中にあったボンド映画への固定観念が良い意味で裏切られたことをきっかけに、「カジノ・ロワイヤル」(1作目)と「慰めの報酬」(2作目)を遅ればせながら鑑賞。
4作目の「Spectre」は映画館へ足を運び、すっかりダニエル・クレイグの007ファンになっていた私。
今回の「No Time to Die」が彼のボンド最終作だとわかっていたのに、もしかしたら想像を超えるスパイのテクニックで生き延びたボンドが、ひょっこり顔を出してくるおまけがあるのではないかと期待してしまった。
そんなシーンが、エンドクレジットに出てくるわけはないのに。
スパイ007を人間味あふれる愛の勇者に変えたダニエル・クレイグ
2005年にダニエル・クレイグが007役に抜擢されたとき、「金髪碧眼のボンドなんてありえない」と、ヨーロッパでは批判の嵐だった。
外見への批判をさらりと受け流し(たように、周りには見える。本音はご本人にしかわからないケド)、黙って俳優としての実力を発揮することで、ボンドとしての地位をコツコツと築いてきたと思ったら、2018年にはプライベートでお子さんをベビーキャリアで抱えて散歩するパパ・クレイグの姿が炎上と、なにかにつけて「ダニエル・クレイグの007らしさ」が話題になっていた。
参考サイト:exciteニュース 抱っこ紐姿のダニエル・クレイグを「去勢されたボンド」とディスった司会者、顔にパイを投げつけられる (更新日2018年10月19日)
だけど、「No Time to Die」を見終わってから1日経つのに、まだ映画の世界に浸っている私は、ダニエル・クレイグは過去に007を演じた俳優たちとは、まったく異なるステータスを作り上げたのだと確信している。
ダニエル・クレイグは映画の共同プロデューサー
エンドクレジットで、ダニエル・クレイグの名前が共同プロデューサーとしても出てきたので調べてみたら、彼は4作目の「Spectre」にも共同プロデューサーとして参加していたそう。
私がダニエル・クレイグ以前の007映画を好きでなかった理由は、任務遂行のため(らしいけど)ボンドがチャラチャラと女性を扱うこと。
それに、プロのスパイかもしれないけれど、人間としての深みはゼロ的な印象を私は007に持つことが多かったので、何となく馴染めなかったのだ。
以前のチャラけた007を、愛の絆を重んじるボンドに変身させたのは、ダニエル・クレイグの功績に違いないと、私は思う。
007が、ダニエル・クレイグ以前のボンドのタイプから抜け出せずにいたら、役柄が時代錯誤で映画の観客数が減ったのではないかしら。
そう考えると、製作側がクレイグ007に尊敬を払って共同プロデューサーになることを認めたのかな、なんて考えてしまった。
魅惑的で強い女性が新作007の売り! 特にアナ・デ・アルマス最高
「No Time to Die」の中の女性陣は、魅惑的で強いことも時代の流れを反映している。
ボンドの恋人・マドレーヌがビビりながらも銃を構えて敵に立ち向かう姿はゾクっとする凄みがある(さすがにスペクター・メンバーだった父の娘)し、MI6で007のコードネームを受け継いだノーミも、ミス・マネーペニーも個性がキラリ。
だけど、一番光るのはパロマ役のアナ・デ・アルマス!
黒のパーティドレスの裾をひるがえしながら、ピンヒールをものともせずに格闘する彼女は素敵すぎ。
アナ・デ・アルマスがルパンの峰不二子と重なって、声にならない絶叫よ!
花火の500連発みたいに華やかなシーンで観客を魅了した後、業務を遂行したからと、007にサラッとお別れを告げて画面から消えて行く彼女を見て、「まだ行かないでー!!」と心の中で叫んだのは、私だけではないはず。
私の勝手な希望的観測:ボンドの娘・マチルダの将来
愛する家族を守るため、自らの死を選んだボンド。
だけど私が気になるのは、ボンドの忘れ形見が、マチルダちゃんという名前なこと。
亡くなったM (MI6の局長)は、マンスフィールド(ジュディ・デンチ)、後継者はマロリー(レイフ・ファインズ)と、007の原作イアン・フレミングの小説にあるように、局長になる人と「イニシャルM」は切っても切れない関係にあるというのが007映画でもお決まりのパターンのよう。
それならば、数年後の007映画で、成長したボンドの娘・マチルダにMの名字をこじつけて(母親は苗字が『スワン』だから、ボンドの家族である事実を隠して生き延びるために、新しいアイデンティティをあげるとかなんとか、ね)、いっそのことボンドの娘がMI6の局長・Mになる、というのはどうかしら??
今後の話の展開に期待しちゃうわ。
ベルンでは、2つの007映画が人々の「お気に入り」
ちなみに私の漂流地、スイス・ベルン出身のUrsula Andressが初代ボンド・ガールとして出演した「007 Dr. No」(1962年)と、ベルナーアルプスのSchilthornで撮影が行われた「女王陛下の007」(1969年)は、ベルン州では「VIP007映画」のステータスがあるので、旅行中に耳タコ状態で話しかけられることが多いかも(笑)。
ドキドキファクターが少ないベルンでは、時を経た今でも熱いテーマなので、カンベンしてくださいね。
クレイグ最終作は過去の4作をおさらいしてから映画館へGO
・・・ということで、「No Time to Die」は超・オススメの映画ですが、クレイグ007の最終作ということで、彼がボンドを演じた過去4作に出てきた内容が、さまざまなところにチラリチラリと登場します。
これまでの作品を見たことがない人でも、十分に楽しめることは確実。
だけど、ダニエル・クレイグ007の有終の美をじんわりと理解するためには、映画館に足を運ぶ前にボンド作品の過去4作を見て、話の流れと人間関係図を理解してからのほうが、「No Time to Die」の醍醐味が10倍増します。
ダニエル・クレイグが出演した007映画のシリーズ
- カジノロワイヤル
- 慰めの報酬
- Sky Fall
- Spectre
- No Time to Die
ダニエル・クレイグの碧い瞳は彼が造り上げた007に最適
ところで、ボンドらしくないと批判の対象だったダニエル・クレイグの碧い瞳ですが、私にはあの冷たく透き通った碧い瞳は、ボンドのスパイ人生を象徴するシンボルに見えます。
ボンド役に抜擢されてから16年の時を隔てたダニエル・クレイグが素敵に歳を重ねていて、氷のような瞳は相変わらず感情の動きを感じさせないけれど、瞳を囲む目元にできたシワが、若い頃にはなかった優しさを添えていて、今の方が魅力的。
スイスに住んでいても、あんなに碧い瞳を見かけたことって一度もないので調べてみたら、青い瞳の持ち主は、世界人口のわずか10%だそう。
ダニエル・クレイグの碧い瞳(私にとっては普通の「青」ではないから、「碧」)に、007を卒業した次回の映画で会えるのが、今から楽しみ!
だけど言わせて! クレイグよ、なぜ絨毯素材に見えるタキシード?
ロンドンでの「No Time to Die」公開プレミアのニュースを見た私は、ショックで絶句!
あの絨毯素材に見えるタキシードを、ダニエル・クレイグがイギリスでのプレミアで着ることを、なぜ誰も止めなかったの?
そもそも、あのタキシードをクレイグに勧めてしまったのは、一体全体、どこの誰?
ハロウィンならOKよ。だけど、奥様のレイチェル・ワイズに「あなた、それはちょっと…」とひとこと言って欲しかったわ。
キャサリン妃の美しい、きらめくドレス姿でとまどいを消したけれど、あのタキシードだけは、ホントに残念。