バスや電車の公共交通機関を利用する際、スイスでよくある「迷惑行為」とは何か?
マナー講師の解説を、私の体験談を交えてまとめてご報告します。
スイスのワイルドな一面を知ることができます(笑)。
【公共交通機関でのマナー】スイスであるある迷惑行為の代表例
「他人に迷惑をかけない」という意識は、日本文化を象徴する一点であると、スイスにおける日常生活でたびたび感じることが多い私。
子育てにおいても、「迷惑になることはしない」というマナー基準がスイスでは重視されていないためか、公共交通機関を利用した際、思いもよらない迷惑行為を身近に体験して口あんぐり、となることも日常茶飯事。
スイスの日刊紙・20ミヌーテンが、読者の意見に基づく「公共交通機関での迷惑行為」を、6つの典型的なタイプに分けて報道しています。
- 携帯電話での大声通話タイプ
- 同乗者相手に延々と喋り続けるタイプ
- イヤホンなしで動画を見るタイプ
- 絶え間なく食事をするタイプ
- 休みなく鼻をかむ・咳をする・鼻をすするタイプ
- 別の座席も占領するタイプ
スイス在住の私にとっては、「あるある」だらけで、思わず苦笑してしまう迷惑行為の数々です。スイス旅行中に受けるイメージよりも、ワイルドではありませんか?
参照サイト:20Min.<Knigge-Regeln im ÖV sorgen für Zoff bei Pendlern>(更新日2022/06/21)(閲覧日2022/06/21)
「公共の場」で鼻をかむことは、通常スイスでは容認されていますが、車内で嫌がられるのは、コロナを連想させるためかもしれません。絶対ダメなのは、鼻をすする行為。興味のある方はコチラ↓の記事へどうぞ。
ちなみに、旅行サイト「エアトリ」の調査によれば、日本で集計されたバス・電車での迷惑行為のトップ3は、
- 座席での座り方(72.8%)
- 大声での会話(58.5%)
- 携帯電話での通話(56.3%)
だと報告されています。
参照サイト:【旅行サイト「エアトリ」調べ】<「公共交通機関のマナー」に関する調査>(更新日2019/08/22)(閲覧日2022/06/22)
【公共交通機関でのマナー】食事による迷惑行為はスイスの代表例
新幹線に乗る際、美味しいお弁当を選んで、車窓に流れる景色を見ながら車内でお食事することは、私も旅行でいつも楽しみにしています。
けれどもスイスでは、ニオイがきつい食べ物を、車内に持ち込んで大っぴらに食事をする人が少なからずいるのが、困りものなのです。
しかも彼らは長距離の移動ではなく、通勤時のバス・電車を自分のダイニングであるかのように使える、心臓に毛の生えた乗客たち。
スイスのマナー講師によれば、公共機関の車内での食事はOK。ただし、食事はできるだけ短時間で終わらせるように心がけ、サンドイッチやスナック菓子など、車内にニオイが充満しないもので空腹を満たすように注意を払うべきとのことです。
「車内だけではなく、映画館でも同様の心がけをすることが大切」とマナー講師が注意を促していることからも、公共の場における食事の迷惑行為は、スイスでは例外ではないことが予想されます。
ところで、上記の日刊紙に登場しているマナー講師は、私の知人。どこぞのマナー講師のように、怒り狂うことなく、いつも素敵で優しく、落ち着いた方です(笑)。
【公共交通機関でのマナー】朝食はマックメニューおじさん〜私の体験
注:下記の記述において、マクドナルドを批判する意図はございません。私が迷惑だと感じたのは、ラッシュ時間にハンバーガーとフライドポテトを食して、毎日通勤電車内にニオイを充満させていた、ある乗客の行為です。
毎朝迷惑行為を繰り返す乗客とは違う車両に乗車できるかが真剣なカケ
あれは私が、居住地のベルンからバーゼルまで通勤していたときのこと。
娘を小学校に送り届け、ベルンから8時3分発のインターシティに乗り込んでいた私は、毎朝緊張の連続でした。
私がナーバスになっていた理由は列車の遅延ではなく(←これもスイスでよくある出来事)、「今日はあのマックメニューおじさんが乗車しない車両を選べるか」というもの。
私が「マックメニューおじさん」と勝手に名付けたその男性は、駆け込み乗車の常連で、本当に来る日も来る日もマックの紙袋を手に、毎朝列車に乗り込んできました。
通勤ラッシュの時刻とはいえ、ベルンーバーゼルのインターシティの車内は、乗客全員がテーブル付きの座席をゲットできる、天国のような好条件。ほとんどの通勤客は、車内で過ごす1時間の走行時間を、ノートブックでの作業に当てているので、大変静かで心地良いのです。
その平和な通勤環境を乱すのが、くだんの「マックメニューおじさん」の存在でした。
マックメニューおじさんが朝食に食べているものの中身を、私は実際に目にしたことはありません。でもそのニオイから、ハンバーガーとフライドポテトであることは確実。
朝の8時に、車内に充満していた脂っこいニオイを思い出すと、今でも胸やけがしてきます。
通勤車内で食べ物のニオイを充満させる乗客へのスイスでの対応
「欧米の人は、はっきりモノを言う」というイメージがあるかもしれませんが、目立つことを避けるスイス人は、公共の場で不満を感じても、面と向かって文句を言わない傾向があります。
マックメニューおじさんは、着席するや否や、座席で食事を始めるというルーティンが、同じ列車を利用する乗客にはお馴染みの迷惑行為。脂っこいニオイが車内に広がりだすと、あちこちから「あぁ〜」という絶望的な声が聞こえてきました。
けれども、マックメニューおじさんに直接注意を喚起していた乗客や車掌さんは、ひとりもいなかったのです。
着席する前に、「この座席は空いていますか?」とたずねるスイスのマナーは、なぜか守っていたマックメニューおじさん。
声をかけられた乗客は、無言のまま怒りをあらわにノートブックの画面を見つめるのが関の山。なかには自分の座席を立ち、荷物片手に別の空席を探す乗客もいましたが、「あなたの食べ物のニオイが迷惑です」と発言する勇者は、いませんでした。
通勤車内の朝食で毎朝異臭を放つ乗客に、他の乗客が間接的辛辣コメント
あるとき、マックメニューおじさんと同じ車両に乗り合わせてしまった私。ところがその列車が、故障のため途中で走行停止という事態に陥りました。
車内アナウンスでは、「いつ再走行が可能になるか未定の状態」と告げられたため、乗客たちは一斉に携帯電話で連絡を取り始めたのです。
しばらくして電話連絡による喧騒が落ち着き、緊張した雰囲気ながらも再び静けさが戻った車内に、長電話をしているマックメニューおじさんの声だけが、響き渡っていました(あまりにも大声で長電話だったので、数人の乗客が声の持ち主を探し、「マクドナルドのおっさんだ」と囁き合っていたことから、会話の主が判明)。
耳をそば立てたわけではないのですが(自然に聞こえてしまうので)、通話の内容からどうやらマックメニューおじさんは、製薬会社にお勤めの研究員と私は推察。
「毎日、あれだけ不健康な朝食メニューを日課にしているあの人が薬の開発に関わっているなんて…」と、意外に感じた私が顔を上げると、目の前にいた女性客も、「製薬会社の研究員?まさか?」と驚き、私たちはふたりで苦笑い。
すると突然、乗客の誰かが、「脂質の摂りすぎは、心疾患や脳出血疾患を引き起こす原因だと、さまざまな研究結果で明らかになっています。健康で長生きしたいのならば、食生活の改善が不可欠であり、毎日の朝食にハンバーガーとフライドポテトというメニューは、オススメできません」と、はっきりした声でコメントを放ったのです。
驚いた女性客と私が視線を合わせていると、マックメニューおじさんの声が急に弱々しくなり、「あとは会社についてから連絡します」と、通話を終える気配が伝わってきました。
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その後1週間、朝食メニューを改善したと思われたマックメニューおじさんは、2週間後には再びいつもの紙袋とニオイを漂わせながら、通勤を再開。
故障時に同じ車両に乗り合わせていた乗客たちは、「1週間でギブアップとは、彼にとって惜しい展開ですね」などと言葉を交わし、マックメニューおじさんの健康を危ぶむ結果となりました。
公共交通機関を気持ちよく利用するためにお互い守りたいマナー
東京都交通局による「楽しく乗ろう!交通マナーブック」は、小学生を対象に作成されたものですが、電車やバスに乗るときのマナーが、わかりやすくまとめてあります。
あらためてマナーを確認してみますと、むしろ車内でマナー違反をする大人の行為が気になってしまう私。
他人のアラ探しに熱中するのではなく、己の行いを振り返って自分の老害化を防がねば、などと昭和化石の私は身の引き締まる思いです。