【海外在住】居住国での<常識>を知る方法

スイスライフ

どの社会でも「常識」は、人の行動を判断するものさしとして使われます。

けれども、いざ「常識」の正体を知ろうとすると、つかみどころがなくて、難しいですよね。

確実なのは、世界のどこであっても、その居住地の「常識」がない振る舞いは、もめごとを引き寄せる原因になるということ。

実例として、このブログ・dryukiネットでも、スイスの常識である入居時の挨拶と静粛時間を無視しているお隣さんが、本来は親切なご近所さんたちともめている話をお伝えしました。

逆に言えば、海外で生活するようになったら、その国の常識をできる限り詳しく把握すれば、それだけ日常生活が楽になるわけです。

そこで今回の記事では、私自身の体験を振り返りながら、

海外の居住地で、その国の「常識」を知る方法

というテーマを考えてみたいと思います。

常識とは何か?

「常識とは、人間が18歳までに身につける、偏見のコレクションのことである」というのはアルベルト・アインシュタインの名言

常識とは、人間が18歳までに身につける、偏見のコレクションのことである。

というのはアルベルト・アインシュタインの名言ですが、日本で育ち、成人してからスイスに移住した私にしてみると、これはまさに絶妙な表現。

「これは常識/あたりまえ」とか「あの人は常識がない人だ」と、私たちの日常会話で頻繁に登場する「常識」ですが、海外で生活するようになると、自分が身につけた常識が移住先では通用しなくて、自分の常識コレクションは万国共通でないことを自覚する場面に、たびたび遭遇します。

精神科医で作家のなだいなださんは、「常識」の中身をわかりやすく定義しています。

『《常識》 社会がその調和のある活動を維持していくために、社会の各人が持つべきだと考えられ、そして大部分の人が成人になる頃には、経験を通して実際に身につけている知識に基づく判断力。絶対的でも普遍的でもなく、それぞれの社会にはそれぞれの常識があり(社会が違えば常識も違う)、その常識はまた、時代とともに変わっていく。』

日本教育会館:<常識>と相談 精神科医・作家なだいなだ (閲覧日2021年11月17日)

海外在住者にとって、いちばんハードルが高いのは、常識が経験を通して身につける知識だということ。

経験を集めるためには、時間が必要です。でも、居住国の常識を知らないままで社会を泳ぎ始めると、摩擦が起きる。

ですから、できるだけ積極的に自分から動いて、現地の常識を集めることが、不可欠となります。

【必須条件】移住国社会の懐に飛び込んで「常識」を集めるべし

【必須条件】移住国社会の懐に飛び込む

移住国の常識を集めるためには、自分のパートナーの家族と現地の日本人社会だけではなく、その国の人たちとあなたが触れ合うきっかけを探し、自分で体験を集めることが不可欠です。

「だけど、私はまだ現地の言葉ができないし…」と物おじする気持ち、私にもおぼえがあります。

けれども、私は自分の体験から、断言できます。

生活拠点である国の情報を集めようとしている外国人に、現地の人はとても優しい。

だから、あなたが勇気を出して、自分から現地の社会に一歩踏みだす価値は、あるはずです。

海外移住国での「常識」を集める方法【私のオススメ体験】

海外移住国での「常識」を集める方法【私のオススメ体験】

では現実問題として、どうすれば現地の人から「常識」に関する生きた情報を集めることができるのでしょうか。

「常識」は、私たちの中にドスンと存在しているのに、ちがう常識に出会った時にしか、その存在が意識されません。

つまり、現地の方々の常識は無意識レベルにセーブされているので、外国人から常識に関する質問を受けてもとまどってしまい、「あら、そんなこと考えたことなかったわ」が定番の答え。

でも、現地の人に質問を繰り返しているうちに、私は「成功する常識収集方法」に気がつきました。

職業的に「説明することに慣れている人」に質問【海外常識収集法】

会話の吹き出しが3つ。オレンジ・ピンク・グリーンの笑顔

語学学校の先生

現地で生活するようになったら、その国の言葉をマスター/ブラッシュアップするために、語学学校に通学すると思います。

語学学校の先生は、言葉がまだできない外国人の立場をよくご存知ですし、ご自分も留学経験者、もしくは外国人であるケースも多々あるので、常識に関する質問も、わかりやすく回答してくれます。

非英語圏で生活する場合でも、語学の先生は基本的に英語が話せるので、質問内容が複雑なときには、現地語ではなく英語での説明も、お願いしやすいです。

幼稚園・保育園・学校の先生

すでにお子さんがいらっしゃる場合、現地の教育機関でお仕事をしている保育士や先生も、常識の情報源として頼りになる存在です。

教育機関では、現地の風習も授業に取り入れられますし、特別なイベントも計画されるので、その国の習慣を知る絶好のチャンス。お子さんの体験を通じて現地の風習を知り、親子でも一緒に楽しめます。

図書館の司書

スイスの常識収集にあたり、図書館の司書の方々は、私の師匠のような存在。

スイスのマナーや習慣に関する本をオススメしてもらえるだけではなく、時の流れがゆったりしている図書館では、外国人の私が直面したスイスの常識の謎についても、丁寧に説明していただける機会が多く、本当にありがたい学びの場でした。

市役所の住人窓口

外国人が現地の生活に慣れるための生活習慣のパンフレットや、外国人を対象に現地の習慣を教えてくれる機関の情報も、お住まいの居住地のお役所で手に入る可能性が高いです。

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私は必ず、「外国人なので、この国の習慣についてわからないことがあるのですが、おたずねしてもよろしいですか?」と声をかけて質問していました。

他のことが本職の方たちに個人的なお願いをするので、まずお相手の都合をたずね、初めのうちは私が質問したいことも1〜2問だけ。

「それは興味深いテーマですね。これからも、どんどんたずねてください!」と、とても好意的な反応を示してくださる方には、いくつかの疑問をまとめて定期的にサポートをしていただき、お礼にチョコレートなどを差し上げていました。

かぶ提灯の伝統が生んだ、現地の人との心温まる体験
かぶ提灯 スイス・秋の伝統行事

娘が幼稚園に通っていたときのことです。幼稚園からのお知らせで、11月の第2土曜日に特別イベントを行うので、子どもにくり抜いたかぶを持たせ、ヒモをつけるようにとの連絡がありました。

ところが、スイスの秋の伝統行事「かぶ提灯祭り」の存在を知らなかった私には、何のことなのかハテナだらけ。

幼稚園の先生から詳細を教えてもらい、かぶの直売をしている農家の人に作り方の説明も聞いたのに、かぶのくり抜き初挑戦の私は、手にまめができただけで失敗の連続。とてもじゃないけど、上の写真のようにはできませんでした。

農家で3度目(!)に買い求めたかぶと格闘してもうまくいかず、泣きそうになっていた私の元に、なんと近所のおじいさまが救世主として降臨!

「いやぁ、日本人のあなたが提灯祭りのかぶのくりぬきに苦戦していると、農家の人から聞いたので」と、きれいにくり抜いたかぶをプレゼントしてくださったおじいさま。もうホントにありがたかったし、うれしかった〜。

「スイスの伝統を大事にしてくれて、ありがとう」とお礼まで言われ、それからしばらくの間は道ですれちがう見知らぬシニアの方々に「あなた、かぶ提灯の日本人の人でしょ?」と好意的に挨拶される日が続き、楽しいおしゃべりのきっかけがたくさんできました。

伝統と常識は同一のものではありませんが、外国人として暮らしている国の風習を尊重しようとする姿勢が、現地の人に受け入れられることの一例かと思います。

移住国での「常識」の集め方:オススメできない方法

移住国での「常識」の集め方:オススメできない方法。手でバツをする女性
  • 現地出身の自分のパートナーと家族からの情報だけに頼る
  • ご近所さんに相談

このふたつの方法が現地での常識集めに適していない理由は、

  • 常識は数を集めないとわからない
  • あなたの境界線を守るため

例えば、お正月のお雑煮は丸餅か角餅かが出身地方でちがうように、現地出身のあなたのパートナーやご家族の「常識」が、移住先のあたりまえとはかぎりません。

移住した国の常識をまずたくさん、現地のいろいろな人に質問することで、その国の常識のものさしー例えば、社会で許容される常識の幅ーを正しく知ることができます。

また、縁戚関係にある現地の人や、住まいの近さで必然的に距離が縮まるご近所さんに常識についてたずねると、時間の経過とともに、どうしても相手がコチラのプライベートなことに干渉しやすい環境が生まれてしまいます。

たとえどんなに自分のパートナーや家族・ご近所さんとの関係が順調であっても、自分自身の精神面でのプライベートエリアをしっかり確立することは、海外生活でとても大切なこと。

プライベートエリアに入りこんだ他人を追い出すことは、困難ですから。

住んでいる国の常識だから、○○という行動を取るべきなのか?
それとも、あなたにこの国の常識を振りかざすお相手は、常識ではなく、実は自分があなたにさせたい○○ということを、常識だと言って押しつけているだけなのか?

相手との距離が近いほど、このような疑問が生じてくる可能性があるのです。

ですから、自然と距離が近い位置にいる人たちではなく、プロフェッショナルな関係に位置する人たちに、その国での常識をおたずねし、情報を集めることをオススメします。

【まとめ】積極的に常識を集めて海外居住地の社会で練習

さまざまな人種の6人が肩を組んでいる

海外への移住者は、その国の社会を動かす常識と、現地の言葉もままならない、「成人している赤ちゃん」のような存在で生活を始めることが多いと思います。

居住国の常識を身につけるためには、その国の人たちが大切にしている社会の約束を情報として集め、現地の生活で経験を通じてひとつずつ学んでいくしか方法がありません。

これまでの自分の常識・家族・友人・生活環境と離れて暮らすことから、心がくじけやすくなる海外生活。

けれども、勇気を持って自分から一歩、現地の社会に足を踏み入れることで得られる経験は、予想外にポジティブなことが多いはずです。

住んでいる国の常識がある程度わかるようになると、まわりに振り回されるのではなく、常識にそった自分らしい行動を選ぶことができるので、毎日の生活がとても楽になりますよ。

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