【赤ちゃんポスト】宮津航一さんの成長記は慈愛が育む強さの証

エッセイ

熊本市の慈恵病院に設置されている「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」には、2020年までに159人の赤ちゃんが預けられたそうです。

その中のおひとりである宮津航一さんは、18歳になったことをきっかけに、ご自分が「ゆりかご」に預けられた命であることを公表しています。

宮津航一さんの成長記は、「人の深い愛情が育むものの素晴らしさ」を世に放つ、素晴らしいメッセージです。涙腺崩壊。

【赤ちゃんポスト】家族写真が物語る宮津航一さんと里親の愛の絆

【赤ちゃんポスト】ご家族の絆と愛の深さを家族写真が物語る。熊本慈恵病院

子どもを虐待する事件、そして戦争で命を落とす市民と子どもたちの惨状が毎日飛び交うこの世知辛い世の中で、里親ファミリーの愛に慈しまれて、真っ直ぐ育った宮津航一さんのインタビュー記事を読み、私は感動で胸が一杯になりました。

自分の子どもでさえ、愛情をかけて育てることは、たやすくないというのに、里親である宮津ご夫妻の人間愛の深さ。

そして、おそらく多くの葛藤を抱えながらもしっかりと歩み、未来を見据えている宮津航一さんの素敵なお人柄。

新聞記事に掲載されている、菜の花畑の横に佇むご家族のお写真からは、血のつながりがないにもかかわらず、なぜかお顔立ちが似ていらっしゃる御三方の表情が微笑ましくて、真の愛情が人をつなぐ素晴らしさを、ありありと感じることができました。

【宮津航一さんが預けられたゆりかご】熊本慈恵病院の命を救う取り組み

”小さないのちを救いたい”という思いから産まれた「こうのとりのゆりかご」は妊娠・出産・育児などについてさまざまな悩みを抱えるお母さんや、その周辺の方々の悩みごとを聞き、一緒に考え、解決することを目的としています。

引用元:医療法人聖粒会 慈恵病院

SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談では、24時間体制で慈恵病院の相談員の方につながる電話サービスと、メールでの問い合わせ窓口が設置されています。

また、慈恵病院では、

  • 世界のBaby Box 事情:アメリカ・ドイツ・インド・韓国・ラトビア・ポーランド・ロシア・南アフリカ・スイスにおける赤ちゃんポストの情報提供

も行っているそうです。

【全国の妊娠相談窓口の連絡先】まずは誰かに相談することが大切!

初めての出産・子育ては、何かにつけて疑問だらけ。異国の地・スイスで第1子を出産後、毎日の小さなわからないことで溺れそうになったときには、私自身も娘が誕生した病院の助産師の方々が提供していたサポート電話や、地元の母子相談所を利用した経験があります。

ひとりで悩んでいると、まるで解決策がゼロに思えることでも、誰かに相談できるだけで気が楽になりますし、自分には見えていなかった問題解決の糸口が見つかるきっかけになります。

ちょっぴり勇気が必要かもしれませんが、助けてもらうことも、妊娠・出産・子育てでは大切なことです。無理は禁物。

「赤ちゃんポスト」を提供しているのは、全国でも熊本慈恵病院だけとのこと。けれども、思いがけない妊娠で悩み、誰かに相談したい場合、お住まいの都道府県にも相談窓口はあります。コチラ↓がそのリンク。

外部リンク:公益社団法人 日本助産師会 全国の相談窓口

困っている妊婦さんにとっては初めてのことだらけでも、相談員の方にとっては初めての悩みではないはず。大丈夫。

【赤ちゃんポスト】宮津航一さんはその後の親子関係でしっかり育つ実例

「僕にできるのは、預けられた実例として自分のことを語ること。親子の関係がしっかりしていれば、『ゆりかご後』はこんなふうに成長するよって、知ってもらいたい」。

引用元:読売新聞 赤ちゃんポストに座っていた男の子…18歳になり「宮津航一として、その後を伝えたい」(更新日2022/03/27) (閲覧日2022/03/27)

コチラ↓の熊本朝日放送作成によるドキュメンタリー動画では、宮津航一さんがご自分の成長過程を振り返り、養子縁組をして本物のご両親になった里親の宮津ご夫妻と初めて慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」を訪れる様子や、地域活動として子どもたちにふれあいの場を提供するために奮闘する宮津航一さんの充実した日常が伺えます。

関連リンク

しっかりした親子間の愛の絆は、子どもの人生を左右する要。

私が携わっていた臨床心理学の研究分野では、残念なことに「親に潰された人生を歩むことになった子どもたち」の実情を目にすることばかりでしたので、今回の熊本日日新聞と読売新聞、そして熊本朝日放送の報道で、実際に守られた命が幸せな人生を手に入れたことを知る機会に恵まれて、思わず涙してしまいました。

高校を卒業し、4月から大学生(おめでとうございます!)という区切りの段階で、実名でご自分の「赤ちゃんポストとその後の人生」について発信する決意をした宮津航一さん。

あなたの勇気に、ありがとうと伝えたい。

宮津航一さんとご家族のお幸せを、心からお祈り申し上げます。

【赤ちゃんポスト】慈恵病院が設置以来15年経過、国はいつ動くのか

コチラ↑のABEMAニュースの動画にも他国の例として出てきますが、私の居住地・スイスでは、望まない妊娠に関する相談窓口・内密出産・養子縁組などの連絡先は、スイス連邦各州の行政機関が管轄しています。

今回の記事でご紹介した熊本慈恵病院は、個人病院であるにもかかわらず、現在の日本の行政システムでは完全にサポートされているとは言えない「ひとりで悩む妊婦さん」への援助制度を行なっています。

「こうのとりのゆりかご」が慈恵病院に開設されてから、2022年5月10日で15年とのこと。

開設以来15年、慈恵病院が159人の命を受け入れ、年間6000件以上の相談に乗っている間、国の行政が具体的に動いていない様子が、ABEMAニュースの動画で語る慈恵病院・蓮田健院長と熊本・大西一史市長のお話ぶりからも明らかです。

慈恵病院と熊本市が連携し、子どもの命と未来を何より優先する形で行なってきたサポートは、全国レベルで浸透すべき援助形態。問題を抱える妊婦さんは、全国どこにでもいる可能性があるのですから、国政レベルでの対応が、一日も早く実現されることを願います。

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